私はアリシアさんと一緒に秋祭りを楽しんでいる。
その途中、アリシアさんにダンスに誘われた。
「アリシアさん? ダンスは異性とするものよ? 私とアリシアさんが踊るのは、変じゃないかしら?」
「そ、そうですよね。すみません、忘れてください……」
アリシアさんは肩を落としている。
そこまでションボリされると、何だか悪いことをしている気持ちになってくる。
「……分かったわ。アリシアさんと踊らせてちょうだい」
「本当ですか!?」
「えぇ、もちろん」
「ありがとうございます!」
アリシアさんはとても喜んでいた。
私としても、アリシアさんと踊るのが嫌なわけではない。
同性でダンスを踊るなんて変だけれど、禁止されているわけでもないしね。
「イザベラ様。わたしの気持ちに応えていただけるということでしょうか?」
「ええ」
「そ、そうですか! 嬉しいです!」
アリシアさんのテンションが高くなっている。
一体どうしてそこまで喜んでいるのか分からないけど、幸せそうなのは間違いないだろう。
(ふふふ……。イザベラ様が選んだのは、あのいけ好かない王子や貴族達ではなく、このわたしです! わたしの愛がイザベラ様に届いたのです!)
アリシアさんが何かを呟く。
よく聞こえなかったけど、歓喜に打ち震えている様子だ。
「あらあら、そこまで喜んでもらえるなんて光栄だわ」
「はい! わたしもイザベラ様に相応しい女になれるよう、頑張ります!」
「うーん、そこまで気負わなくてもいいけれど。アリシアさんは十分に魅力的な女性だと思うわ」
「いいえ! わたしはもっと上を目指します! そう、イザベラ様にふさわしいレディになってみせます!」
アリシアさんはやる気満々のようだ。
まぁ、本人が望むのであれば、それで良いだろう。
「それじゃあ、私も頑張ろうかしら。アリシアさんの友達として恥ずかしくないように」
「え? とも……だち……?」
「そうよ? 同性でダンスをするなんて、飛び抜けて仲が良くないとできないもの。アリシアさんとは、ずっと仲のいいお友達でいたいわ」
「…………」
アリシアさんは黙ってしまった。
どうしたのだろうか。
「アリシアさん?」
「…………」
アリシアさんは俯いている。
何か変なことでも言ってしまっただろうか?
それとも、突然の体調不良とか?
私がさらに声を掛けようとした、その時だった。
「姉上! こちらにおられましたか! 僕を放っていくなんて、酷いじゃないですか!」
一人の少年が、私の方へ駆けてきたのだった。
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