「ど、どうしよう……。とりあえず、着替えなくちゃ……」
私はパニックになりながらも考える。
この格好のままでは外に出て助けを求めることはできない。
(気絶しているとはいえ、殿方の前で着替えるなんて緊張するわね……)
とは思うものの、緊急事態である。
私は意を決して、元の服装に着替えた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
私は息を整える。
着替えている間は恥ずかしくて死にそうだったし、エドワード殿下がいつ目が覚めるかも分からず気が気じゃなかった。
「む……? ここは……?」
彼はすぐに目を覚ました。
助けを呼んでくる必要はなかったみたい。
「大丈夫ですか? エドワード殿下」
「イザベラ……。俺は一体……?」
「覚えていませんか?」
「確か、イザベラに用があって部屋を訪ねて……。…………駄目だ、思い出せん。何かとんでもないものを見た気がするのだが……」
エドワード殿下は頭を悩ませる。
ボタンがぶつかったショックで記憶が飛んだのだろうか。
「いえ……別に大したことではありませんよ」
私は笑顔で答える。
忘れているなら、忘れてもらっていた方がいい。
「それよりも、本題は何だったのですか?」
「む……? ああ、そうだった。すっかり忘れるところだった」
「もう……。早く言ってください」
「実は、来週に迫った新入生の入学式のことで相談したいことがあるのだ」
「入学式ですか?」
それがあることは、もちろん私も認識している。
だけど、主役はもちろん新入生だ。
第三学年に進級するだけの私にはあまり関係がないと思っていた。
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