乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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139話 下等な末端貴族

公開日時: 2022年11月3日(木) 10:09
文字数:801

 魔法の実技訓練で、首席と次席でペアを組んだイザベラとオスカー。

 それに対し、四席と五席が対抗心を燃やしている。

 二人は自信満々に宣言した通り、これまでで一番良いタイムを出して、ゴーレムを停止させた。


「さすがは学年四位と五位のペアだな……」


「うん。あのレベルになると、もう才能の差を感じてしまうよね……」


「ああ。あいつらは別格だよな」


 周囲の生徒が囁き合う。

 しかし、イザベラとオスカーの表情は変わらない。

 その様子を見て、二人が言う。


「ふふん。わたくし達の魔法を見て、少しは身の程を知ったかしら?」


「どうやら呆然自失としているようだな。これなら、次のテストでは追い抜けそうだ」


 二人は、イザベラとオスカーが動揺していると決めつけた。

 自分達の素晴らしい魔法を目の当たりにして、冷静でいられるはずがないのだ。

 事実、前回までのイザベラやオスカーの魔法と比べれば、今回の彼らの魔法は同等か少し上のように思えた。


「ふん……。下等な末端貴族共が、何か勘違いしているようですね」


「ええ。まったく、この程度の魔法で何を騒いでおられるのか……。身の程を弁えていただきたいものですわね」


 オスカーとイザベラがそう言い放つ。

 オスカーは伯爵家の跡取り息子、イザベラは侯爵家の令嬢だ。

 貴族ばかりが通う王立学園の中でも、彼らの身分は高い方だった。

 なお、四席と五席の実家の爵位は、それぞれ男爵家と準男爵家である。


「なっ!? なんですって!?」


「もう一度言ってみろ!」


 四席と五席が激昂する。

 自分たちを侮辱されたと感じたらしい。

 それに、この王立学園には各人の実家の爵位には触れないというルールがある。

 こうしてあからさまに爵位を持ち出して侮蔑するのは、本来はあるべきことではない。


「いいでしょう。ならば、もっと分かりやすく教えて差し上げます。……先生、早く始めてください」


「そうですわね。時間の無駄ですもの」


 オスカーとイザベラは講師にそう促したのだった。

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