(まずいですね……!)
アリシアは焦り、考えを巡らせる。
――半年ほど前の秋祭り。
そこで事故が発生し、アリシア、イザベラ、エドワード王子、フレッド、オスカー、カインは闇の瘴気により汚染されてしまった。
その中でも特に濃い瘴気を受けたのがアリシアだ。
元々の人格は大きく歪められてしまったが、それでも変わらなかったものが一つだけある。
彼女からイザベラへの深い愛情だ。
彼女は愛する者を手に入れるため、欲望のままに策を巡らせた。
エドワード王子達を唆し、誘導し、誑かし、イザベラと距離を置かせたのである。
その仕上げとなるのが、この卒業パーティだ。
ここでエドワード王子からイザベラへ婚約破棄を言い渡させれば、彼女は完全に孤立することになる。
そして、自分がイザベラへ手を差し伸べる。
そうなればもう、最愛の女性の心は自分のものだ。
完璧な計画だと思っていたのだが――
(このままではいけません……)
このまま自分が死ねば、計画は台無しになってしまうだろう。
それでは困る。
本当に困ってしまうのだ!
なぜなら自分はまだ死にたくないのだから!
最愛のイザベラと共に、女性同士という禁断の愛に溺れたいのだから!!
「やめてください、カインさん! それ以上近付かないで!!」
アリシアは叫ぶように懇願する。
しかし――
「ガアァァァッ!!」
「ひいぃっ!!」
もはや言葉すら通じていないようだ。
彼は剣を振り上げると、そのまま振り下ろした。
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