集合場所に、他の生徒達が集まってきた。
「順調に終わって良かったなー」
「ああ、それにしても疲れたぜ……」
「あれ? 先客がいるみたいよ?」
「本当だね。私達は早めに終えられたと思ったのに」
四人グループの男女がこちらに向かってくる。
その後ろにも、チラホラと他の生徒の姿が見える。
「イザベラさんとオスカーさんのグループか。……え?」
「……は?」
私達の隣に横たわっている魔獣の死体を見て、彼らが固まる。
「「「「な、何じゃこりゃあぁ!!」」」
そして、彼らの絶叫が森に響き渡った。
後続の生徒達も、何事かと足を早めて集まってくる。
「こ、これはいったいどういうことなんだ?」
「最初から死んでいたのか? 魔獣同士の縄張り争いか何かで……」
「いや、人為的な魔法の痕跡があるぞ」
男子生徒達が魔獣の分析を始める。
女子生徒は、遠巻きにそれを眺めている。
露骨に顔を背けて魔獣を見ないようにしている子もいる。
やっぱり、淑女の反応はこうだよねぇ。
「人為的? いったい誰が……」
「決まってるだろ、そんなこと。魔物の死体が氷漬けになっているんだぞ」
「こんなことができる人なんて一人しかいない」
生徒達がオスカーに視線を向ける。
うんうん。
シルフォード伯爵家は氷魔法の名門だし、普通はそう考えるよね。
皆からの視線を受けたオスカーは、眼鏡をクイっと上げると落ち着いた口調で言った。
「はい。確かに、この氷魔法は私のものですね」
「おおおぉっ! やはりそうか!!」
「流石だなぁ……」
「凄いですわ! オスカー様!!」
「素敵ですー!!」
生徒達から歓声が上がる。
男女問わずかなりの人気だ。
それもそのはず。
オスカーは昨年度の次席合格者。
それから今の二年生に至るまで、ずっと好成績をキープしている。
特に魔法と座学の成績はかなりのものだ。
そして、知的でクールな容姿で、人当たりもいい。
彼のファンは多いのだ。
「皆さん、落ち着いてください。氷魔法は私のものですが、魔獣へ致命傷を与えたのは私ではありませんよ」
オスカーがそんなことを言い出す。
確かに、トドメはオスカーではなく私が刺した。
でも、そんなこと言わなくてもいいじゃないか。
淑女が魔獣退治をしたなんて広まったら、評判が悪くなる可能性がある。
(オスカー様! はぐらかしてください!!)
私はアイコンタクトを送る。
すると、オスカーはこちらにウインクを返してきた。
どうやら意図を汲み取ってくれたようだ。
「ふむ。では誰だというのです?」
一人の男子生徒が質問する。
「それはもちろん……」
オスカーは勿体ぶって間を置くと、堂々と宣言する。
「イザベラ殿です!!!」
「「ええっ!?」」
「「おおおおぉっ!!」」
森の中に、困惑と驚きの声と感嘆の声が湧き上がる。
……オスカーめ、意図を汲み取ってくれてないじゃないか!
さっきの自信満々のウインクは何だったんだ!
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