女生徒達の誘いを、フレッドはキッパリと断った。
「残念ですわ……」
「で、では、またの機会にいたしましょうね?」
「はい。それじゃあ失礼します」
フレッドは丁寧に頭を下げてから、その場を去った。
そして、周囲に誰もいなくなったタイミングで――
「ちっ。みすぼらしい雌猿共め」
フレッドは舌打ちをしながら吐き捨てるように言った。
彼の顔からは先ほどのさわやかさは消え去り、醜悪なものへと変わっていた。
「僕とお前らが釣り合うとでも思っているのか。ブス共が」
フレッドは苛立った声で呟く。
「僕には姉上さえいればそれでいいんだよ。邪魔をするんじゃねえ」
フレッドにとってイザベラが全てであった。
イザベラ以外の存在は、彼にとってどうでもいい存在だった。
「だが、姉上め……。あんなクソカス野郎と……!」
フレッドは歯ぎしりする。
クソカス野郎――つまりはエドワード王子のことだ。
最愛の人を奪っていったエドワード王子に対して、フレッドは憎悪の念を抱いていた。
イザベラに近づこうとする者は、例え王子であっても許さない。
それが、今のフレッドの心境だ。
「姉上にまとわりつくゴミ虫がぁ……! 今すぐ殺してやりたい……!!」
フレッドは憎しみに満ちた表情を浮かべる。
だが、それはできないのだ。
エドワード王子は言うまでもなく王族。
それも、次期国王の身である。
暗殺などすれば、即刻処刑されるだろう。
それだけではない。
連座制が適用されて一族郎党全員死刑となる可能性すらある。
いくらフレッドが優秀な人材とはいえ、単独で王家全体をどうにかできるはずがなかった。
だから、フレッドは我慢するしかない。
「くそぉ……。どうすればいいんだ……」
フレッドは悲痛な面持ちでそう呟くのだった。
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