(愛の力……)
その言葉を聞いた途端、イザベラの脳裏にある記憶が蘇ってきた。
幼少期の記憶などではない。
それは、彼女の前世にて『恋の学園ファンタジー ~ドキドキ・ラブリー・ラブ~』という乙女ゲームの記憶だ。
様々なルートで発生する選択肢によって、攻略対象達の好感度が変化する。
それによってイベントの内容も変化していき、特定の攻略対象者とのハッピーエンドを迎えることができるようになる。
その中でもトゥルーエンドと呼ばれるものがあった。
困難な局面に陥ったヒロインのアリシアを救うべく、攻略対象者が覚醒するというものだ。
だが、あくまでもそれは攻略中の一人のみ。
四人全員の同時覚醒、それもヒロインではなく悪役令嬢イザベラのために発動するなどあり得ないはずだった。
だが、現に目の前では現実として起きている。
「私なんかに……愛を……? 皆を危険な目に遭わせてしまったのに……」
「気にするな、イザベラ」
「僕達は自分の意志で動いたんです」
「イザベラ嬢は凄い奴だけど、同時に危なっかしくもあるからな」
「えぇ、イザベラ殿のために何かをしたいと思ったのです」
エドワード王子、フレッド、カイン、オスカーの順番で言葉を紡ぐ。
「皆さん……。あ、ありがとうございます……」
イザベラの目尻に涙が浮かぶ。
「イザベラ、泣いている場合ではないぞ」
「その通りです。アリシアさんの魔法は強力……僕達四人がかりでも何とか拮抗させるのが限界のようです」
「それによ……。アイツもきっと、俺達と同じだと思うんだ。闇の瘴気に侵され暴走してしまっただけで……」
「アリシア殿は救いを求めているはずです。闇を祓う救いの光を。そしてそれを与えられるのは、イザベラ殿しかいない」
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