さらに日々は過ぎていく――。
エドワード王子とカインは、剣術でしのぎを削っている。
「はあっ!!」
「甘いぜ、エド!」
キンッと甲高い音が響く。
「くっ……」
エドワードは悔しげに顔を歪めた。
今まさに、彼は敗北寸前であった。
彼は、総合力で第三学年の主席を維持している。
だが、剣術においてはカインに主席の座を譲っているのだ。
「まだまだぁっ!」
エドワードが気力を振り絞る。
それもこれも、全てはイザベラのため。
エドワードは、彼女に格好悪い姿を見せたくなかった。
だから、必死になって剣技を磨いている。
だが、いくら頑張っても届かない壁がある。
それが、このカイン・レッドバースという男だ。
「おいおい、どうした? もう終わりか? つまんねぇぞ、エド。もっと俺を楽しませてみろよ!」
「くそっ……。なんなんだ、お前の強さは!」
「へぇ? 俺が強い? はっ、違うね。お前が弱いんだよ。そんなことで、イザベラ嬢を守れると思うなよ?」
「くっ! 言わせておけば……!」
彼らの戦いは激しさを増していく。
それぞれ、イザベラに強い想いを寄せる者同士だ。
互いに一歩も引くつもりはない。
だが、戦いはいつか終わる。
今回の勝者は――
「へへっ。また俺の勝ちだな、エド」
「ちっ! 通算で八十七勝、九十七敗か……」
彼らの戦いは、既に三年目の後半に突入しえちる。
一週間に一度以上のペースで行われていたこの戦いは、もはや恒例行事となりつつあった。
そして当然、高貴な身分かつイケメンな彼らが女生徒達に放っておかれるわけもない。
「「「きゃーっ!!!」」」
周囲から黄色い歓声が上がる。
場所も日時も不定な彼らの戦いだが、女生徒達はどこからともなく嗅ぎつけて観戦するのだ。
「すてきぃ~!」
「素敵ですわ、エドワード殿下!!」
「エドワード様、こちらを見てくださいまし!!」
「カイン様、こっちにも視線を向けてくださいませ!!」
「滴る汗が最高ですわ、カイン様ぁ~!」
二人は、ファンサービスと言わんばかりに笑顔を返す。
こうして、彼らの人気はさらに高まっていく。
そして、彼らが女生徒達の前から離れ、物陰に移動する。
いつまでも見世物のように扱われるのは好きじゃない。
試合後にこうして数分ほど体を休めるまでが恒例となっていた。
女生徒達も、ここまでは追いかけてこない。
エドワード王子やカインのプライベートを尊重しているというのもあるが、もちろんそんな綺麗事だけが理由ではない。
彼らをしつこく追いかけ回していた女生徒が、手酷く貶されたという噂があるのだ。
高貴でイケメンな彼らがそんなことをしたとは信じがたいという声もあったが、そういった噂が広まると同時に、彼女らは追いかけをしないようになった。
遠巻きに観戦するのみである。
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