「殿下のお考えはよくわかりました。ですが、私は無実です。何かしらの証拠がない以上、婚約破棄を受け入れることはできません」
「いい加減にしないか! これ以上俺に逆らうつもりか!?」
エドワード王子が叫ぶ。
王子である彼と、侯爵家令嬢に過ぎないイザベラ。
そして曲がりなりにも存在する証人。
このまま押し問答が続けば、いずれはエドワード王子の意見が通る可能性は高い。
その上、この場には彼を後押しする者達がいた。
「姉上、見苦しいですよ。殿下の決定を受け入れてください。アディントン侯爵家にこれ以上恥をかかせないでいただきたい」
「本当にみっともねえぜ! こんな奴が殿下の婚約者だったとはな!!」
「その通りですね。過ちは誰にでもあるものですが……。反省をしない人間には何を言っても無駄でしょう」
イザベラの義弟フレッド、レッドバース子爵家の養子カイン、シルフォード伯爵家の跡取り息子オスカーが口々に言う。
彼らはそれぞれ、エドワード王子の親友である。
また、かつてはイザベラとも親しい間柄にあった。
だが、イザベラが闇の瘴気の影響を受けてからというもの、その関係性は徐々に変化していった。
エドワード王子との婚約が成立した彼女が、彼らと距離を置くようにしたという要因が大きいだろう。
そしてその後釜の位置に収まったのが、アリシアであった。
「イザベラ、お前はもうこの国に必要ない。お前から貴族の身分を剥奪し、国外追放にしてやる!」
「そうだな! あんたみたいな性悪女の居場所なんてこの国にはない!」
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