ついに、フレッドから愛の告白を受けてしまった。
今までにも何度か『好き』と言われてはいたのだが、『姉弟としての好きでしょ?』と、はぐらかしてきた。
しかし、今回は違う。
彼ははっきりと、一人の異性としての好意を伝えてくれたのだ。
(ど、どうしよう……。嬉しいけど、困るわ。だって、フレッドは義弟なんだもの)
私は戸惑っていた。
フレッドは義弟だからだ。
血が繋がっていないとはいえ、私は彼の姉だ。
この世界の倫理観的に考えて問題があると思う。
「姉上は僕のことを弟としか思っていないかもしれませんが、それでも構いません。僕の愛は本物です。あらゆる障害を乗り越えていく覚悟があります」
フレッドは決意を込めた声で宣言した。
「……」
私は言葉に詰まってしまう。
だが、いつまでも黙り込んでいては駄目だと思い直す。
きちんと返事をしないといけない。
「ごめんなさい。あなたの気持ちはとても嬉しいけれど、私はそういう目では見れないわ」
私は正直に自分の想いを伝えた。
「そうですか……。残念です。姉上に嫌われたくなくて、ずっと我慢してきました。でも、やっぱり無理だったようですね……」
フレッドは悲しげに呟く。
「本当にごめんなさい」
「いえ、いいんですよ。元々、望み薄なのはわかっていましたから。ただ、一度だけでも伝えたかったんです。それだけです」
「……」
フレッドは吹っ切れた様子で笑った。
「僕が言いたいことは以上です。ですが最後に、思い出を一つだけ貰ってもよろしいでしょうか?」
「え? えっと、それはどういう意味かしら?」
私は戸惑いながら聞き返す。
「そのままの意味です。今夜、僕とダンスを踊っていただけないでしょうか?」
フレッドは躊躇なく要求を口にする。
「ダンス? ああ、秋祭りの終わりに踊るあれのことね」
私は少し考え込む。
異性とのダンスは、それなりに特別な意味を持つ。
……が、だからと言って即結婚に結びついたりはしない。
各貴族が主催する夜会では、社交上の付き合いとして適当な異性と踊ることはよくある。
それに、昨年の秋祭りでは私とオスカーが踊ったが、あれで劇的に関係が進んだなんてこともない。
「……わかった。あなたにエスコートを任せるわ」
私は承諾することにした。
「ありがとうございます!」
フレッドは嬉しそうな顔で礼を言う。
(……あれ? だれかの存在を忘れているような……)
よく思い出せない。
お酒を飲んで酔っ払ってしまっていたから?
ううん、それもあるのだろうけど、なんだか頭に黒いモヤがかかったような感じがする。
「姉上! そうと決まれば、さっそく会場に向かいましょう!!」
「え? ああ、うん……」
私はフレッドに急かされて、秋祭りの休憩場からダンス会場へ向けて歩き始めたのだった。
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