私の名前はオスカー・シルフォード。
氷魔法で名を馳せたシルフォード伯爵家の跡取り息子です。
血筋のおかげで、私にも氷魔法の才能があります。
魔法で敵を倒すのが私の役目であり、誇りでもありました。
ただ、氷魔法の有用性は不変のものではありません。
隣国との戦争が落ち着き、国内にはびこる魔物の脅威も小さくなったことで、氷魔法の需要は減ってきています。
そのため、貴族界における発言権が低下し、領地の運営も上手くいかなくなり、父上は頭を悩ませていました。
そんなとき、私は一人の少女に目をつけました。
彼女を夜会に呼び出し――
「おや? これは美しいお嬢さんですね。妖精が迷い込んだのでしょうか?」
そう話し掛けます。
自分で言うのも何ですが、私は顔の造形に自信があります。
こうして話しかければ、大抵の令嬢は顔を真っ赤に染め上げるのです。
「貴殿はイザベラ・アディントン殿とお見受け致します。よろしければ、私と一緒にダンスでもいかがでしょう」
「…………」
しかし、少女は無表情のままでした。
何とかダンスの了承を得ることをできた私は、彼女と踊って親睦を深めます。
さらには――
「丁寧に手入れされた庭ですね。とても美しいです」
夜会を少しばかり抜け出し、シルフォード伯爵邸の庭園を二人で散歩しました。
氷魔法で造られた幻想的な光景を見せれば、令嬢達は皆、感嘆の声を上げてくれるものですが……やはり、この少女も例外ではなかったようです。
彼女は目を輝かせながら、庭園を眺めています。
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