実技訓練にて、オスカーがその実力を見せつけた。
平均的な生徒よりもはるかに優秀な四席と五席の男女。
その二人よりも、さらに優れた成績を収めたのだ。
しかし一方で、イザベラの実力はまだ披露されていない。
「次は私の番ですわね」
「ご武運を。イザベラ殿」
オスカーの声援を受け、イザベラが前に出る。
「はっ。高みの見物をしていた令嬢の化けの皮が剥がれるときが来たな」
「せいぜい、わたくし達を失望させない程度には頑張ってくださいまし」
四席と五席が、敵愾心をあらわにする。
ただし、イザベラの『覇気』を受けたため、姿勢は相変わらず地面に這いつくばったままだ。
「ふん……。本当に騒がしい羽虫ですわ。格の違いを見せて差し上げましょう。……講師さん、お願いしますわ」
イザベラが後方に控える講師に声をかける。
「あ、ああ。それでは――始めっ!」
講師がそう宣言した瞬間だった。
イザベラから強烈な威圧感が放たれた。
「「…………ッ!?」」
四席と五席がビクっと震え、そしてガタガタと体を震わせる。
顔色は真っ青になり、冷や汗が大量に流れ出した。
彼らだけではない。
その他の生徒や講師も、程度の差はあれど皆怯えている。
かろうじて正気を保っているのは、オスカーぐらいのものだ。
もっとも、彼でさえ若干足が震えているのだが。
「木々の精霊よ。我が呼びかけに応え、敵を貫け。【ウッド・ジャベリン】」
イザベラが呪文を唱え、魔法を発動させる。
すると、彼女の足元の地面から木が急成長し、槍となってゴーレムへ向かっていった。
それを見た四席と五席は、侮ったような視線を向ける。
「は、はんっ! 何かと思えば、初級の木魔法じゃねぇか!」
「拍子抜けですわね。木の槍では、ゴーレムの固い体に傷一つつけられませんわよ?」
二人の言う通り、イザベラが発動させた魔法は、攻撃魔法の中では最下級に位置する魔法だ。
威力もそれほど高くない。
しかし、それはあくまで通常の場合の話である。
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