私はアリシアさんと秋祭りを回っている。
屋台では食べ物を売っている店が多いようだ。
「イザベラ様、何か食べますか?」
「そうね……。せっかくお祭りに来たのだし、少しだけ買っていきましょう」
私たちは食べ物を買っていくことにした。
「あの、これください」
アリシアさんが焼き鳥のようなものを買う。
串に刺さった肉を炭火で焼いてタレをかけたものだ。
「はいよ。お嬢ちゃんたち可愛いねえ。サービスしておくよ」
おじさんは私達に二本おまけしてくれた。
「わあっ、ありがとうございます!」
アリシアさんは嬉しそうだ。
彼女は入学式の時点で、純朴系の可愛さを持っていた。
だが、貴族ばかりが通う王立学園においては、華やかさにやや欠けていた。
そこで私は彼女に化粧やオシャレを教えてあげた。
今の彼女は、立派なレディだ。
可愛らしさに加えて美しさも兼ね揃えている。
噂では、彼女に陰ながら懸想している男子生徒も多いとか。
「イザベラ様もどうぞ!」
「あら、悪いわね。それじゃあ、一ついただくわ」
私は焼き鳥のような串を受け取る。
うん、なかなか美味しい。
「んふふ~」
アリシアさんは幸せそうにモグモグしている。
可愛いな。
「あれ? 私とアリシアさんのお肉、少し種類が違うみたいね?」
「はい! イザベラ様の方が高いものですね! それに、量も多いです」
アリシアさんが無邪気に言う。
「…………」
いや、別にいいんだけど。
なんかこう、釈然としないものがあるというか。
「どうかされましたか? イザベラ様」
「いえ、昨年のことを思い出してね……」
「昨年ですか?」
アリシアさんの顔が少し曇った気がした。
「昨年も、エドワード殿下、カイン、オスカー様から大食い扱いされたのよ。まったく、私のような淑女に向かって失礼だと思わないかしら」
「あはは、確かにそれは酷いですね」
「笑い事じゃないわよ、もう。そう言うアリシアさんだって、たくさん食べる方でしょ?」
「うぅ、それは否定できません……」
アリシアさんは困り顔だ。
私と彼女はたまに昼食を共にする。
彼女はとてもよく食べるのだ。
「でも、アリシアさんの食べっぷりは見てて気持ちが良いわよ」
「えぇっ、そんなことないですよー」
アリシアさんは顔を赤くしながら、恥ずかしげに笑う。
「そんなことあるわよ。……ほら、言っている間にもう全部食べちゃっているじゃない」
「そ、それは……」
「いいじゃない。たくさん食べる子の方が、私は好きよ」
「えっ。そ、それって……」
アリシアさんは顔を赤らめて俯く。
私は首を傾げる。
なんだろう、この反応は。
まさか、変なこと言っちゃったかな?
「ほら、また次の屋台があるわよ。今度はフルーツね」
「わぁ、本当です! 行ってみましょう!」
私達は再び歩き始めたのだった。
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