乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

99話 ずっと前から好きでした

公開日時: 2022年8月23日(火) 09:28
文字数:1,057

 酔い潰れてしまった私は、男性によって介抱されている。

 彼に膝枕されている状態だが、魔道具の照明が逆光になっており、彼の顔はよく見えない。

 声は聞き覚えのあるものだ。

 どこかで聞いたことがあるのだが、はっきりと思い出せない。

 まだ少し酔っ払っていて、頭がうまく働かないのもあるだろう。


「酔いが覚めるまで、このままでいてくださいね」


 男性が私の髪をなでる。


「ふぇへへ……」


 なんだか心地良い。

 まるで、私がどうなでられるのが好きか、知っているかのような手つきだ。


「僕はあなたのことが好きなのです」


 突然、告白された。

 私はドキッとする。


「ふふっ。突然ですね」


 私は微笑みながら答える。

 前世では彼氏いない歴=年齢だった私にとって、異性から好意を寄せられることは嬉しいことだ。


「いえ、ずっと前から好きでしたよ。あなたは僕にとっての太陽のような存在ですから」


 ずっと前から?

 彼のような知り合いが、私にいたかしら?

 同年代なら、エドワード殿下、カイン、オスカーあたりだけれど……。

 彼の話し方や声質は、そのいずれのそれとも合致しない。

 うん?

 誰か一人の存在を忘れているような……。


「まぁ、大げさね。私はただの学生よ」


「確かにあなたはまだ学生かもしれません。でも、僕にとってはかけがえのない大切な人です」


「……」


 彼は真剣な口調で話す。

 彼の言葉には熱がこもっているように感じる。

 嘘や冗談ではないようだ。

 私は嬉しくて、つい笑ってしまう。


「ふふっ。ありがとうございます。私もあなたのことが好きかもしれません」


「本当ですか!」


 彼が喜びの声を上げる。


「はい。あなたの優しいところが好きです」


「うぅ……嬉しいです。幸せです。これからもよろしくお願いします」


 そう言って、私の頭を撫でてくれる。

 とても気持ちが良い。


「はい、こちらこそ……」


 そこまで話したところで、彼の顔が近づいてきていることに気付いた。

 同時に、彼の背後方向にあった照明の魔道具が隠れ、お互いの顔がよく見えるようになる。

 そこで初めて、私は彼の顔をしっかりと見ることができた。


「ふぇへへ……」


 あらやだイケメン。

 凄く顔が整っている。

 でも、年齢は思ったよりも下だね。

 スマートに介抱してくれていたから、私より年上かと思ったけれど。

 いや、改めて振り返ると、声は結構高めだったか。


「あなたは素敵な女性です……」


 彼はそんな甘い言葉を呟きつつ、私に顔を近づけてくる。


「……ん?」


 あれれ~?

 おかしいぞぉ?

 この声と顔は知っている。

 というより、さっきまで一緒にいたじゃない。


「フレッド?」


 なんということだ。

 彼は私の義弟ではないか!

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