酔い潰れてしまった私は、男性によって介抱されている。
彼に膝枕されている状態だが、魔道具の照明が逆光になっており、彼の顔はよく見えない。
声は聞き覚えのあるものだ。
どこかで聞いたことがあるのだが、はっきりと思い出せない。
まだ少し酔っ払っていて、頭がうまく働かないのもあるだろう。
「酔いが覚めるまで、このままでいてくださいね」
男性が私の髪をなでる。
「ふぇへへ……」
なんだか心地良い。
まるで、私がどうなでられるのが好きか、知っているかのような手つきだ。
「僕はあなたのことが好きなのです」
突然、告白された。
私はドキッとする。
「ふふっ。突然ですね」
私は微笑みながら答える。
前世では彼氏いない歴=年齢だった私にとって、異性から好意を寄せられることは嬉しいことだ。
「いえ、ずっと前から好きでしたよ。あなたは僕にとっての太陽のような存在ですから」
ずっと前から?
彼のような知り合いが、私にいたかしら?
同年代なら、エドワード殿下、カイン、オスカーあたりだけれど……。
彼の話し方や声質は、そのいずれのそれとも合致しない。
うん?
誰か一人の存在を忘れているような……。
「まぁ、大げさね。私はただの学生よ」
「確かにあなたはまだ学生かもしれません。でも、僕にとってはかけがえのない大切な人です」
「……」
彼は真剣な口調で話す。
彼の言葉には熱がこもっているように感じる。
嘘や冗談ではないようだ。
私は嬉しくて、つい笑ってしまう。
「ふふっ。ありがとうございます。私もあなたのことが好きかもしれません」
「本当ですか!」
彼が喜びの声を上げる。
「はい。あなたの優しいところが好きです」
「うぅ……嬉しいです。幸せです。これからもよろしくお願いします」
そう言って、私の頭を撫でてくれる。
とても気持ちが良い。
「はい、こちらこそ……」
そこまで話したところで、彼の顔が近づいてきていることに気付いた。
同時に、彼の背後方向にあった照明の魔道具が隠れ、お互いの顔がよく見えるようになる。
そこで初めて、私は彼の顔をしっかりと見ることができた。
「ふぇへへ……」
あらやだイケメン。
凄く顔が整っている。
でも、年齢は思ったよりも下だね。
スマートに介抱してくれていたから、私より年上かと思ったけれど。
いや、改めて振り返ると、声は結構高めだったか。
「あなたは素敵な女性です……」
彼はそんな甘い言葉を呟きつつ、私に顔を近づけてくる。
「……ん?」
あれれ~?
おかしいぞぉ?
この声と顔は知っている。
というより、さっきまで一緒にいたじゃない。
「フレッド?」
なんということだ。
彼は私の義弟ではないか!
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