乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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136話 二人組

公開日時: 2022年10月24日(月) 21:52
文字数:1,101

 魔法演習の講義で、二人組を作ることになった生徒達。


「イザベラ殿」


「オスカー様」


 オスカーとイザベラが声を掛け合う。

 どうやら、二人の意思は固まったらしい。


「私とイザベラ殿で組みます。構いませんね、イザベラ殿?」


「ええ、もちろんですわ」


 オスカーの提案に、イザベラは何の迷いもなく了承する。

 オスカーはシルフォード伯爵家の跡取り息子であり、家格は申し分ない。

 座学でも実技魔法でもイザベラに次ぐ成績を修めており、将来有望だ。

 一時期はシルフォード伯爵家の領地経営が危ぶまれていたが、それも解決している。

 その上、彼は眼鏡が似合う知的な美男子だ。

 彼に言い寄る令嬢は多いと聞く。

 エドワード王子やカインに比べるとやや痩せ型ではあるものの、平均的な学園生徒に比べれば身体能力も高く、体は引き締まっている。

 一方のイザベラも、とても優秀な女性であることは改めて言うまでもない。

 かつてはシルフォード伯爵家の領地経営に有益な口出しをしたこともあり、オスカーはそのことに恩義を感じている。

 つまり、彼がイザベラと組もうとするのは、何も不思議なことではないのだ。

 むしろ、自然なことだと言える。


((なっ……!))


 生徒達の間に動揺が広がる。


「あ、あの、わたくしはオスカー様と組みたいのですが……」


 一人の女子生徒が恐る恐るオスカーに申し出る。

 彼女は子爵家の令嬢だ。

 しかし――


「申し訳ありません。イザベラ殿が先約ですので」


 オスカーに一蹴されてしまう。


「で、でも……。主席と次席が組まれては、バランスが……」


「そんなことは知ったことではありません。より優秀で魅力的な女性と組みたいと考えるのは、男として当然のことですから」


「……ッ!」


 オスカーの発言に、女子生徒の顔が真っ赤に染まった。

 そして、悔しそうに唇を噛み締めると、黙って俯いてしまう。


「そういうことです。では、行きましょうか。イザベラ殿」


「はい」


 二人が実技訓練場に向けて歩き出す。

 その足取りに一切の迷いはない。

 オスカーは以前からイザベラに想いを寄せてはいた。

 だが、学園内においてあまりにも露骨なアプローチは控えていた。

 また、こうした形式の授業では先ほど女子生徒が指摘した通り、生徒間のバランスも考慮していた。

 それがどうしたことか、今のオスカーにはそうした配慮は一切見られない。

 まるで自分のものだと言わんばかりに、堂々とイザベラの隣を歩いているではないか。

 エドワード殿下との婚約を発表したばかりのイザベラの隣を……。

 イザベラもイザベラで、何も恥じることはないと言わんばかりにオスカーに身を寄せて歩いている。

 生徒達は驚きつつも、残った者同士で二人組を作り、イザベラやオスカーの後を追ったのであった。

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