(うぅ、なんでこんなことに……。ここはキツく言わないと……)
イザベラは意を決する。
フレッドのことは、幼少期から可愛い弟だと思って接してきた。
本来の血筋としては従兄弟関係にとどまることもあり、時には異性としてドキドキさせられることもあった。
だが、今の彼女はエドワード王子と婚約している身なのだ。
いつまでも言い寄られてはたまったものではない。
現に、今まさに周囲から好機の目で見られている。
顔立ちの整った彼らアディントン侯爵家の姉弟は、非常に目立つのだ。
「フレッド。いいかしら。私はあなたと結婚するつもりはないわ」
「今はそうでしょうね。でも、エドワード王子と実際に結婚するのは卒業後だと聞いています。きっと、それまでには振り向かせて――」
「はっきり言わせてもらうわ。もうウンザリなのよ」
「え?」
「何度も言っているけど、あなたのそういうところは好きじゃないのよ。もっと現実を見て、相応しい相手を探しなさい」
イザベラは強い口調で言った。
すると、フレッドは悲しげに表情を曇らせる。
「あ、あの……。姉上……」
「これ以上あなたと話すことはないわ。今後は、部屋や教室にも来ないでちょうだい」
イザベラはそう言うと、その場を後にした。
以前の彼女であれば、もう少しやんわりと伝えただろう。
闇の瘴気の影響を受け、言葉がきつくなっているのだ。
そして闇の瘴気の影響を受けているのは、イザベラだけではない。
フレッドもその影響を受けていた。
「…………」
彼は黒く沈んだ目で、イザベラの後ろ姿をじっと眺めている。
そんな彼に、数人の女生徒が近づく。
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