「ふう。これぐらいで十分かしらね」
私達は、大量の薬草を確保することに成功した。
「はい、イザベラ殿。この量があれば、十分な評価を得ることができるでしょう」
「イザベラ様なら、当然の結果です。わたしも微力を尽くした甲斐がありました」
オスカーとアリシアさんは満足げだ。
アリシアさんは謙遜しているが、私よりも彼女の方が多くの素材を確保している。
彼女の才能を実感させられた。
「さあ、そろそろ帰りましょうか?」
私はそう提案する。
「いえ、時間までは少々早いでしょう。もちろん早めに帰ってもよろしいのですが、実地訓練の評価に時間は関係がなかったはずです」
「そうですが、二人共少し疲れているでしょう? 無理はよくないですわ」
「わたしは平気です。まだまだ動けますよ!」
アリシアさんが元気よく答える。
確かに、彼女はまだ余裕がありそうだ。
やっぱり『ドララ』の主人公だけあって、各種の能力に優れているんだなあ。
もちろん私も『覇気』の応用で特に疲れてはいない。
でも、この調子だと卒業までには追い抜かれているかもしれないね。
「ふふふ。こんなこともあろうかと、お嬢様方には疲労回復効果のあるハーブティーを用意させていただきました」
オスカーは、カバンの中からお茶の入った水筒を取り出した。
「まあっ! さすがはオスカー様ですね!」
「恐れ入ります。さあさ、こちらへどうぞ。日陰になっているところがありますゆえ、そちらで一息つきましょう」
「気が利きますね。行きましょう、イザベラ様!」
アリシアさんに手を引かれて、私は木陰へと移動する。
そして、オスカーが用意したお茶を堪能した。
「はあ。美味しかったわ。ありがとうございます、オスカー様」
「……ありがとうございます。とても癒されました」
私に続いて、アリシアさんもオスカーへお礼を言う。
少しだけ馴染んできたかな?
なぜか男性陣に対してぶっきらぼうな彼女だけれど、悪い娘じゃないんだ。
この調子で打ち解けてくれると私も嬉しい。
……バッドエンド回避には、もしかしたら今のままの方がいいのかもしれないけれど。
そこまでは、計算し切れない。
なるようになるさ。
「恐縮です。それでは、もうしばらくの間、ゆっくりしましょう」
「ええ」
「はい」
私とアリシアさんは返事をする。
やるべきことを終えた状態で、緑豊かな森でティータイム。
優雅な時間だなぁ。
……この時の私は、そう呑気に構えていた。
まさか、あんなことになるなんて、夢にも思っていなかったのである。
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