「それじゃあ早速、実技訓練を始めようと思う。まずは……そこの二人組からだな」
「「は、はいっ!」」
講師に指名された二人組が前に出ていく。
二人は緊張の面持ちで杖を構え、詠唱を始めた。
「炎よ、我が敵を撃て。【ファイアーボール】」
「風よ、刃となりて切り刻め。【ウィンドカッター】」
二人の攻撃魔法が次々と放たれ、ゴーレムに向かって飛んでいく。
魔法は見事に命中し、ゴーレムの表面を削る。
しかし、それだけだ。
ゴーレムは起動停止せず、二人に向けてゆっくりと進んでいく。
「さぁ、適切な距離を保ちながら攻撃を続けなさい。ゴーレムの動きをよく見てね」
「「はい!」」
それからしばらくの間、ゴーレムへの攻撃が続いた。
そしてついに――
「よし、そこまで。ゴーレムの停止を確認した」
ゴーレムは動きを止め、その場で止まった。
「ふぅ……。ようやくか」
「時間が掛かってしまったわね」
二人組がそう言う。
「所要時間百八十秒、打ち込み魔法数二十一か。悪くはない。ただ、安全を重視し過ぎた側面はあるな。もう少し近くの距離を保って攻撃を繰り返していれば、より早く停止させられただろう。ま、初めてにしては上出来だ。この調子で頑張りたまえ」
「ありがとうございます」
「貴重なアドバイス、感謝します」
生徒達の視線が二人組に向けられる。
この戦いは、訓練であると同時に、テストでもある。
もちろん最初に挑んだ者の方が情報不足のためやや不利であるし、講師もその辺りは考慮して評価を下すのだが、あくまでそれは最初の話である。
二回目以降は評価にそれほど差はないのだ。
この講義においてゴーレム戦に初めて挑んだ者の結果が一つの基準となり、それよりも下の成績を取ることは避けたいと考える者は多い。
「それでは、次だ。そちらの二人でいいかね?」
「はい」
「よろしくお願いします」
次の二人が前に出る。
先ほどの二人組よりも落ち着いていて、自信があるように見える。
「では、始めてくれたまえ」
講師の言葉を受けて、二人組が同時に魔法を放つ。
「氷よ、我が敵を貫け。【アイスアロー】」
「風よ、我が敵に切り裂く刃となれ。【エアブレード】」
二人の魔法が、それぞれゴーレムに命中する。
だが、やはり初撃だけでは停止しない。
「そのまま攻撃を続けて」
講師の指示に従い、二人はゴーレムを攻撃する。
なかなかゴーレムの歩みを止めることはできない。
それでも、どうにか停止にまで追い込んだ。
「よし、終了だ。ゴーレムの停止を確認」
講師がそう告げる。
「所要時間百六十秒、打ち込み魔法数十九。うん、一組目の戦いを上手く参考にしたようだな。申し分ない結果だ」
魔法の適性には個人差が大きい。
攻撃魔法を使えない者、使えるが防御魔法の方が得意な者なども存在する。
だが、わざわざ実技訓練の講義を選択するような生徒の平均レベルは、それなりに高い。
今の二人組ぐらいが一つの標準となるだろう。
「はい!」
「ありがとうございました!」
二人組が元気よく返事をする。
他の生徒達も感心した様子で拍手を送ったのだった。
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