朝から熱いシーンを学園生徒に見せつけたイザベラとエドワード王子。
二人は連れ立って、学園内を進んでいく。
「――むっ! そうか、一限目は学年別の講義か。イザベラの第二学年は実技魔法だったな」
「その通りですわ。エドワード殿下と離れるのは寂しいですけれど……」
「しばしの別れだな。我慢するしかあるまい。では、また後で会おう!」
「はい、エドワード殿下」
途中でエドワード王子と別れたイザベラは、自分の教室へと入っていく。
すると、クラス中から視線が集まった。
好奇の目。
あるいは、嫉妬や敵意の混ざった目。
それらの視線を気にせず、イザベラは空いている席に腰を下ろした。
「おはようございます、イザベラ殿」
「ええ、おはようございます。オスカー様」
イザベラに話しかけてきたのは、シルフォード伯爵家の跡取りであるオスカーだった。
彼もまた、他の生徒たちと同じようにイザベラを見ていた。
ただ、その表情には友好的な笑みが浮かんでいる。
「相変わらず、エドワード殿下とは仲が良いですね」
「まあ、婚約者ですし……。それに、私たちの間には信頼関係がありまして……」
長い間、王家からの婚約話を躱し続けていたイザベラ。
だが、つい先日、ついにエドワード王子との婚約を受け入れた。
「そうですか。しかし、本当におめでとうございます。エドワード殿下とイザベラ殿がご結婚されれば、この国の将来は安泰でしょう」
「ありがとうございます」
オスカーの祝福に礼を言うイザベラ。
エドワード王子の高スペックぶりは今さら言うまでもないが、イザベラも様々な面で優秀だ。
『魔乏病』の特効薬の開発、カインやその仲間の孤児たちへの魔法指導、シルフォード伯爵家の領地経営への助言、密かに習得した王家の秘技『覇気』など……。
それらは必ずしも王立学園内で評価されるものではないのだが、それでも彼女が優秀なことは間違いなかった。
二人がそんなやり取りをしている内に、講師がやって来た。
そして、授業が始まる。
「それでは、今日の魔法演習を始めましょう。皆さん、準備はいいでしょうか?」
「「はい!」」
クラスの皆は元気よく答えた。
ちなみに、魔法演習とはその名の通り、魔法を使った戦闘訓練のことである。
実戦さながらの戦闘が行われるため、危険性もある。
だが、同時に魔法の実力を磨くことのできる貴重な機会でもある。
そのため、ほとんどの生徒は楽しみにしているようだ。
「今日は、二人組になってもらいます」
「「……」」
講師の言葉に、一瞬沈黙が流れた。
生徒であると同時に貴族でもある彼らには、多少なりとも派閥というものがある。
そして当然、より強い者と組んだ方が訓練での勝率が増し、好成績に繋がる。
誰と組むべきか、それぞれ考え始める。
(ここは、実技魔法主席のイザベラ様と……)
(オスカーさんの氷魔法は強力だからな。何とかして組めないか……)
その視線はイザベラとオスカーに向かっている。
このどちらかと組むことができれば、訓練での勝率は大幅に増す。
それに、洗練された魔法を間近で感じることにより勉強にもなるだろう。
彼らは、何とかしてイザベラやオスカーと組めないか、誘い文句を考えるのだった。
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