乙女ゲームの悪役令嬢になったから、ヒロインと距離を置いて破滅フラグを回避しようと思ったら……なぜか攻略対象が私に夢中なんですけど!?

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
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135話 実技魔法の講義

公開日時: 2022年10月20日(木) 17:57
文字数:1,286

 朝から熱いシーンを学園生徒に見せつけたイザベラとエドワード王子。

 二人は連れ立って、学園内を進んでいく。


「――むっ! そうか、一限目は学年別の講義か。イザベラの第二学年は実技魔法だったな」


「その通りですわ。エドワード殿下と離れるのは寂しいですけれど……」


「しばしの別れだな。我慢するしかあるまい。では、また後で会おう!」


「はい、エドワード殿下」


 途中でエドワード王子と別れたイザベラは、自分の教室へと入っていく。

 すると、クラス中から視線が集まった。

 好奇の目。

 あるいは、嫉妬や敵意の混ざった目。

 それらの視線を気にせず、イザベラは空いている席に腰を下ろした。


「おはようございます、イザベラ殿」


「ええ、おはようございます。オスカー様」


 イザベラに話しかけてきたのは、シルフォード伯爵家の跡取りであるオスカーだった。

 彼もまた、他の生徒たちと同じようにイザベラを見ていた。

 ただ、その表情には友好的な笑みが浮かんでいる。


「相変わらず、エドワード殿下とは仲が良いですね」


「まあ、婚約者ですし……。それに、私たちの間には信頼関係がありまして……」


 長い間、王家からの婚約話を躱し続けていたイザベラ。

 だが、つい先日、ついにエドワード王子との婚約を受け入れた。


「そうですか。しかし、本当におめでとうございます。エドワード殿下とイザベラ殿がご結婚されれば、この国の将来は安泰でしょう」


「ありがとうございます」


 オスカーの祝福に礼を言うイザベラ。

 エドワード王子の高スペックぶりは今さら言うまでもないが、イザベラも様々な面で優秀だ。

 『魔乏病』の特効薬の開発、カインやその仲間の孤児たちへの魔法指導、シルフォード伯爵家の領地経営への助言、密かに習得した王家の秘技『覇気』など……。

 それらは必ずしも王立学園内で評価されるものではないのだが、それでも彼女が優秀なことは間違いなかった。

 二人がそんなやり取りをしている内に、講師がやって来た。

 そして、授業が始まる。


「それでは、今日の魔法演習を始めましょう。皆さん、準備はいいでしょうか?」


「「はい!」」


 クラスの皆は元気よく答えた。

 ちなみに、魔法演習とはその名の通り、魔法を使った戦闘訓練のことである。

 実戦さながらの戦闘が行われるため、危険性もある。

 だが、同時に魔法の実力を磨くことのできる貴重な機会でもある。

 そのため、ほとんどの生徒は楽しみにしているようだ。


「今日は、二人組になってもらいます」


「「……」」


 講師の言葉に、一瞬沈黙が流れた。

 生徒であると同時に貴族でもある彼らには、多少なりとも派閥というものがある。

 そして当然、より強い者と組んだ方が訓練での勝率が増し、好成績に繋がる。

 誰と組むべきか、それぞれ考え始める。


(ここは、実技魔法主席のイザベラ様と……)


(オスカーさんの氷魔法は強力だからな。何とかして組めないか……)


 その視線はイザベラとオスカーに向かっている。

 このどちらかと組むことができれば、訓練での勝率は大幅に増す。

 それに、洗練された魔法を間近で感じることにより勉強にもなるだろう。

 彼らは、何とかしてイザベラやオスカーと組めないか、誘い文句を考えるのだった。

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