エドワード殿下、カイン、オスカー、フレッド。
みんなで大騒ぎしているところに駆けつけてくれたアリシアさん。
彼女がこの場を収める救いの女神になってくれるのかと思ったのだけれど――。
「むぐぅ……ん~、ん……ぷはぁ!」
アリシアさんは、しばらくキスを続けた後にようやく離れてくれる。
「えっと……アリシアさん? これは一体……」
私は呆然としながら尋ねる。
いきなりキスをされて思考停止状態なのだ。
「ごめんなさい、イザベラ様。でも、こうしないといけなかったんです」
アリシアさんは申し訳なさそうな顔をして謝った。
「どういうことなの?」
アリシアさんのことだ。
何か深い理由があるに違いない。
彼女は希少な光魔法の使い手だし、入学後の頑張りで座学とかでも好成績を収めているからね。
『ドララ』のゲーム知識があるのに四苦八苦している私なんかとは違うのだ。
「だって、イザベラ様に汚らしい男の唾なんて付いてほしくありませんもの。だから、私が消毒したのです」
「えっ?」
アリシアさんの言葉に戸惑う私。
汚らしい男?
ひょっとしてカインのこと?
「カインさんとフレッドさんのことです。私が着替えている間に、よりにもよってイザベラ様の唇を奪うだなんて許せません! 私のイザベラ様なのに……」
アリシアさんは怒った顔で言った。
カインとフレッドは、特に不潔なわけではない。
むしろ、かなりの清潔感がある。
なにせ、『ドララ』の攻略対象のイケメンだからね。
「でも、アリシアさんが気にするようなことじゃないと思うのだけれど……」
貴族家の淑女が、婚約者でもない男とキスをする。
しかも、一人だけではなく二人も。
どう考えてもアウトである。
とはいえ、それは私の両親などアディントン侯爵家の関係者や、あるいはその上位者――王族などから言われることである。
私とアリシアさんは親友だけれど、誰とキスをするかどうかを深く突っ込まれるのには違和感を覚える。
「イザベラ様はわたしのものです。ほら、見てください。既にわたしとイザベラ様は半ば一体となったようなものですよ」
アリシアさんがうっとりとした表情で告げる。
彼女は自分の身を抱きしめるかのように手を回している。
何だろう。
嫌な予感しかしない。
「私とアリシアさんが一体? どういう意味――って、ああっ!!」
そこで私はようやく気付いた。
彼女が着ているドレスは、私のお古なのだ。
「そ、それは私のドレスよね? どこでそれを……?」
私は動揺しつつも、アリシアさんにそう問いかけたのだった。
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