「おや? これはこれは、イザベラ殿ではありませんか」
そんな声と共に、一人の男がこちらへ向かってきた。
「あら……あなたは……」
「少しばかりお久しぶりですね、イザベラ殿。それに、麗しきレディ方々も」
彼は爽やかな笑顔を見せる。
彼の名前はオスカー・シルフォード。
伯爵家の跡取り息子であり、『ドララ』における攻略対象の一人である。
「ごきげんよう、オスカー様」
私は優雅に挨拶をする。
闇の瘴気に侵されている間の彼は、少しばかり腹黒になっていた。
しかし、今は元の優しい紳士に戻っている。
「イザベラ殿は相変わらずお美しい。見惚れてしまいます」
「お上手ですこと」
「いやいや、私は本気で言っているんですよ?」
「ふふふ……。ありがとうございます」
私は微笑んで返す。
彼はイケメンで優秀だし、褒められて悪い気はしない。
だが、他の令嬢達もいる前でラブコメ展開を繰り広げるわけにもいかないだろう。
「ところで、イザベラ殿」
「はい?」
「この暑さにお困りの様子。私が何とかして差し上げましょうか?」
「まぁ! よろしいんですの!?」
私は驚きの声を上げる。
この暑さをどうにかできるのなら、是非お願いしたいところだ。
ただ――
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