「…拙者に、何か用でござるか…?」
…拙者??
…やばい
話しかけちゃいけなかったかも…
やばい匂いがプンプンする。
なんか今、…へんな語尾じゃなかった??
袴は汚れてて、男とは思えないほどに髪が長い。
コスプレでもしてるのかって感じだった。
それに、男が持っていたのは竹刀じゃなかった。
“刀”。
時代劇とかで見たことがあるアレ。
あのまんまだった。
黒い鞘に、独特な模様がついた柄が、非日常的なフォルムの中に際立っていた。
近くで見ると、思ったよりも太くて、思ったよりも長かった。
「不審者」だっていうことは、一目瞭然だった。
これは警察案件かな…
おとなしく通報した方が良さそう…
スマホを取り出そうとすると、男は白目を向いて、パタンッと倒れた。
私の声に反応した直後だった。
だらんと力の抜けた腕が、コンクリートの上に伸びる。
「………………嘘でしょ?」
………え?
…………………死んだ?
……………いや…………でも……………えっと…
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