「と、とりあえず、やってみるよ」
俺は前に進むことを選んだ。どうせやるしか選択肢はないようだし。
「それとて、そなたは、封建制度を知っておるか?」
「小学生か中学生くらいの時にそんな言葉覚えた気がするなあ、確か主従関係を持って統治するとかだっけ?」
「有り体に言えば、そんなもんじゃな。」
"有り体"と言われても、それ以上の理解はしていないし、それ以上覚えても歴史の勉強では必要ないと思う。
「封建制度は、欧米とアジアでは多少異なる部分もあるのじゃ。この世界はヨーロッパを中心とした世界じゃ。」
封建社会・封建時代は確か中世にあたる。俺には正直、そんな認識しかない。
「大体の理解をしているのじゃが、先に補足させてもらうのじゃ」
「封建制度とは、君主が諸侯・貴族・騎士などに、自身の領土を封土し、臣従・忠誠を誓い、領地を治める制度じゃ」
「それは知っている」
「つまりじゃ、君主は自身の領地を分け与える為、富や資源の税収入なども減る。なぜ、損する行為をすると思う?」
「分からないな、そう言われてみれば、間抜けだな」
「田分けじゃなあ。現代社会と違い、命令の伝達や移動の早さを考えると、中央集権的な統治より分権して統治するほうが、きっと適切だったんじゃろうな、さりとて、別に理由もあるが、一人で広大な領土を治めるのは難しいからの」
「だから信頼におけるものに代理で治めさせるってか?」
「代理・・・と言うものではないのじゃな、封建制度というものは。封土された土地の統治は、その領主に任せるから、代理統治とはちょっと違うのじゃ」
難しい・・・。
「そうかの?簡単に言えば、君主に臣従してても、一国一城の主ということじゃ。」
「例えば、ウー伯領を治めることになった、そなた。そなたの君主は誰だと思う?」
「ん・・・確かフランスの国を指名したから、フランス王か」
フォラスは、少し不敵な笑みをした気がした。しかし、ただの光だから顔がない為、気のせいかもしれない。
「フフフ・・・違うぞ、そなたが仕える君主はノルマンディー公爵じゃ。」
フォラスはCK3の領土について、説明を始めた。
まとめるとこうだ
例えば、東京23区を1区1区が男爵領、23区をまとめた都内を伯爵領、都内と都下(23区以外の地域)で公爵領という感じだ。
また、ゲームだから、貴族階級の扱いは、男爵<伯爵<公爵<国王といった簡略したものだ。
子爵や侯爵、騎士侯爵などない。
ウー伯爵領を治める俺はウー伯爵だが、ウー伯爵領はノルマンディー公爵から封土されている為、君主はノルマンディー公爵となる。
「日本人はよく勘違いするがの、ヨーロッパにおいて『臣下の臣下は臣下ではない』のじゃ。逆に『君主の君主は君主ではない』のじゃ」
覚えることがいっぱいで、正直頭がついていかない。
「フランス王が、ウー伯爵たるそなたに直接命令したり、忠誠を求めたりすることはないのじゃ。フランス王は名目上、ノルマンディー公爵にノルマンディー公爵領を封土しているわけじゃが、その領地内の一部を誰かに封土することまで口出しは出来んのじゃよ」
「なんか、それって王様弱くね?」
「封土からの税や懲役をちゃんと治めていれば、主従関係として何も問題なく成立しているわけじゃからな」
なんか自分が想像していたものと違った。
「これは宗教観の差もあるじゃ。神様とも約束・・・契約する思想が根本的にあったんじゃな。契約してない関係は原則的に対等という認識なんじゃろうな」
「目上や上役、権力者には忖度する。どの国・どの時代もそういうものだと思ってたよ」
「歴史とは水面の波紋みたいなものじゃ。社会や国家の変遷によって、様々な波紋が相互に影響しあう。元を辿っていけば、いろいろと繋がっていることに気付くじゃろうて。しかしのう、所詮、学校で学ぶ歴史とは偉人と国家のフライヤーじゃからな」
世界史なんて、単語をツリーのように並べて、記憶するだけの科目だったが、自分が思っている以上に興味が湧いてきたのだった。
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