電脳闘争録

気に喰わないヤツらは全員潰す
ジブリ神
ジブリ神

四十七話

公開日時: 2022年3月3日(木) 20:05
文字数:2,045

 勅使河原さんが家を後にしてから数日後。ついにゲノムのペナルティが解除され、正常にログインできるようになった。

「待ちわびたぜぇこの瞬間ときをよぉ~!」

 ログインして最優先で確認する項目が残りの寿命だ。こればっかりは無いとレベルアップや買い物すらできない上に、松谷さんの延命や僕自身が生きていくのにも必要なものだ。寿命の調達が当面の最優先事項である。

「うっ、もう半年も残って無い…すぐにでも寿命を稼ぎたいが…」

 人間相手にちまちまヤッても時間がかかるだけなので、ここはなるべくまとまった量の寿命が手に入る電脳怨霊討伐を視野に入れたいが、ソロで倒しきれるかと言うとキツイものがある。猿の時のようなチキン戦法もやってもいいが、邪魔が入らないとも限らない。

 他のフレンドや大規模攻略の生き残りに声をかけて、協力して除霊するのが一番安全で効率的にもいいだろう。早速声をかけてみる……が!

「あぁん? 今の環境知らねーのか? もう、裏は殆ど蛮族の領地だぞ?」

「蛮族?」

 聞いた事が無いチームだ。どうやら、最近新しく設立されて裏世界はほぼそのチームの支配下になっているらしい。

「大規模攻略の時に滅茶苦茶に暴れてお前らボコボコにした奴ら居ただろ? アイツらが電脳怨霊を片っ端から討伐してぶっちぎりのレベル差を付けたんだ。もう電脳怨霊は殆ど残ってないらしい。それで、近々ついにジャックポット塔に手を出すみたいだぞ?」

 奴らか…納得。元々果てしない実力差があるのにさらにレベル差まで付けられてしまっては、迂闊に手を出すことは出来ない。お礼参りやリベンジなど当分はもってのほかだ。

 寿命を稼いで対抗できるような戦力を充実させる。それも、奴らがジャックポット塔の攻略を始める前に…

 手始めに、キャラの装備やカスタムを一新する。松谷さんが言っていたように、全部やろうとして全てが中途半端になってしまったキャラの供養も兼ねている。

「自分ができる中で…その中でやりくりして勝ちに行く」

 一旦装備を全て前の寸命劇薬渇望に戻し、これを基本ベースにしてここから装備構成欄を弄る事となる。

 OP・ε-リンソディを組み込み、更なる機動力を確保。腕部をゴリラカスタムからさらに過激な改造を施す。今までの松谷さんがカスタムしていた比率は、運動性能と攻撃力が6:4に割り振られていた。運動性能は、攻撃のモーションやFCSと連動して相手に武器を向ける速度なんかに影響する値だ。だが、この値では倉沼ソラオやreinの異次元機動戦に運動性能が明らかに追い付いていなかった。前回奴らと戦った時は、普通の銃器使用を想定した汎用腕部にスロット二つ。それにサブコンを搭載して辛うじて戦えたというレベルだった。だが、ゴリラカスタムには一つしかスロットが開いていない。なので、その一つにサブコンを入れ込んで、残りは運動性能に全て比率を振り分ける。攻撃無振りで火力が少々不安なのだが、元々ゴリラのようなバ怪力で相手を粉砕する腕部パーツなので、寧ろ今までが余剰火力だったのだ。当たらない火力では意味が無い。頭胴腰脚は全て移動速度と運動性能、攻撃モーションに優れたものを選択して特化させる。寸命劇薬渇望に耐久値も防御力も必要無いからだ。そこに、大楯と大口径ロケットプラズマランチャーを背負わせる。


 ・大口径ロケットプラズマランチャー

 高火力、かなり速い弾速にリロードも速く回転率に優れるプラズマガンの上位武器。着弾すると広範囲に爆風と電磁衝撃で相手を硬直させる事ができる理論上最強武器。スナイパーライフルの弾速にショットガン並みの硬直能力、挙句の果てにプラズマガンのDPSと至れり尽くせりなのだが、そんなものがノーリスクで撃ててしまえば誰でもこの武器を担いでクソバランスクソ環境待った無しだ。勿論、デメリットはある。撃つたびに耐久値が減るという仕様だ。一発撃つ毎に、プラズマ汚染という状態異常になって耐久値がガンガン減る。耐久値に特化させたキャラでも10発撃てば瀕死になる諸刃の剣。


 これで、今までなら劇薬を使用してゲノム化して接近して殴るというテンポロスをOPで超高速機動戦を仕掛けて、至近距離戦を押し付けながら劇薬を飲まずに即ゲノム化という流れを行える。そして、劇薬で埋まっていた装備欄を覚醒の腕輪で埋める。


 ・覚醒の腕輪

 使用すると、一定時間キャラの移動速度上昇。武装の弾数の回復、キャラの基本ステータスの上昇、攻撃モーション上昇の恩恵が受けられるアイテム。


 もはやピーキーとか玄人向けなどという生易しい装備ではなくなった。全力で接近して全開の殺意で殴り殺す事しか考えていない究極の押し付けと地獄への片道切符。

 通せれば勝ち。ミスれば死。なんと分かりやすいキャラだ…こんなイカれ構成で裏世界で戦うなんて狂気の沙汰。だが……

「生死を賭けた死合ほど、狂気の沙汰になればなるほど面白い…」

 もう、迷わない…メンタルもヘラらない。負けない…全速で最凶で全開で一直線に殺しに行く。

 待っていろ…最後に勝つのは、この僕だ!

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