ザァ
ザザザ
ザァーーー
波の遠音が響いてくる。
大阪湾の港が、はるか遠方に見える。
この場所、この風景。
明石海峡大橋の背の高い鉄塔が、広大な空の下に聳えていた。
淡路島と明石市の間では、潮の流れが一段に速く、それでいてゆったりとした縞模様を伸ばしていた。
僕たちはいつも、海の近くにいた。
水平線を指差して、まだ見たこともない景色を探そうとして、白い砂浜の上を歩いていた。
僕は彼女の背中を見て、いつか彼女みたいになりたいと思った。
彼女みたいに、速く走りたいと思った。
突拍子もない理由だった。
それは、——たぶん、きっとそうだ。
何故かそう思えたんだ。
いつの日か、彼女の投げるストレートを打ちたい。
大した理由は、そこにはないのかもしれない。
だけど大切な何かが、そこにはあった。
追いかけたい何かが、日常のすぐそばにあった。
真夏のサイレンと白球。
その、——すぐそばに。
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