スペースシップ☆ユートピア

永遠の時を旅する2人の少女の愛の物語
千葉生まれのTさん
千葉生まれのTさん

61話・22年目・お土産って結局買うの面倒臭くなりがち

公開日時: 2021年10月4日(月) 18:11
文字数:3,099




「っはぁ〜〜!!楽しかったー!あんなにはしゃいだの初めてかも。」


「アタシもー!いやー、水遊びって最高だねー!」


ナイトプールから屋内の普通のプール、それから温泉を巡り、十二分にスパという施設の楽しさを堪能し尽くした。

普通の人ならのぼせてしまうだろうけど、ここは私の不変力を使ってそんな概念を無効化してやった。

お陰で、時間ギリギリまで遊び倒して、今は休憩室で休憩中。

私はいちご牛乳、カイちゃんはコーヒー牛乳を飲み、リクライニングチェアに並んで座り、まったりとした時間を過ごしていた。


「はぁ〜、最高。癒されるわぁ〜。」


「そうだね!白狐ちゃんが喜んでくれて嬉しいよ。」


「もうね、充実感が凄い。さっきの夕日の時とはまた違った種類の尊い時間だな、これは。」


「だねぇ、温泉から出た直後って、なんか良いよねぇ。」


そんな取り留めのない話をしつつ、私はふと気になっていた事をカイちゃんに聞いてみた。


「カイちゃん、この後の予定は?」


「んふー、これです。」


カイちゃんが懐から取り出してきたのは、一冊のパンフレット。

それを、私に見せつけてから渡してきた。


「なになに……ほう、ホテルのパンフレットとな?」


「このまま泊まっちゃうけど、オーケー?」


「イエス、オーケー!じゃあ、今夜は楽しもうぜい!」


私はバッグの中から、ゲームをチラつかせる。


「対戦ゲームだね!負けないよー!」


「フッフッフ、軽く蹴散らしてくれるわ!」


ま、結局蹴散らされるのは私の方なんだけどね!










「あ、もちろん白狐ちゃんの分の着替えも用意してあります。」


「だからそれは怖い。」














◆◆



そして、次の日の朝。



チュンチュン。

ホテルの部屋の窓の外で、小鳥達が朝を知らせに鳴いている。

うん、雲が少なくてよく晴れた良い天気だ。



「……うあー。」


「結局、徹夜でゲームやってたね。」


「不変力で一日だけ眠くならないようにしたものの、流石に精神的にキツくなってくるな。

しかも、相変わらずカイちゃんには負けまくったし。」


「でも、最近は白狐ちゃんも少しずつ勝てるようになってきてるよね?

それって、上達してるって事じゃないかな?」


「まあそりゃあ、プロ並みに上手いカイちゃんと毎日のように対戦してりゃ、私なんかでも少しは上達するわな。」


「でもまさか、旅先でこんなにゲームに熱中するなんて、思ってなかったなー。」


そう言いながら、カイちゃんは体を伸ばした。


「それはあれだよ、キャンプの時に外で食べるご飯が美味しく感じるのと同じように、旅先でするゲームはいつもよりまた、一味違うもんなんだよ。」


「そういうものなのかなー?」


「そういうものだよ。世の中の大体は、雰囲気で成り立ってるからな。

ほら、朝ご飯食べに行こ。」


適当な事を言いつつ、パンツ一丁だった私は私服に着替えて、朝食に向かう準備をする。


「ごはーん!あっさごはーん!」


「はいはい、ホント食べ物の事となると子供になるなぁ。」


「ここのレストラン、美味しそうだしね!」


「まあね。」












◆◆



ホテルのレストランは、期待を裏切らない美味しさだった。

絶品料理に舌鼓を打った後、帰る支度も終えてホテルをチェックアウト。

私とカイちゃんは江ノ島の玄関口でもある弁財天仲見世通りにて、お土産を買いに来ていた。


「えっと、野茂咲さんにはこのキーホルダー、新藤君はタコ煎餅で良いかな。

あとは、仕事でお世話になってる人達にも、色々買って帰らなきゃ。」


「うわー、随分買うねぇ。そんなに荷物増やして、持って帰れんの?」


カイちゃんは買い物カゴに躊躇なくどんどん商品をぶち込んでいる。

私は交友関係少ないから良いけど、顔の広いカイちゃんはこういう時大変そうだ。


「持てるギリギリまで計算して買ってるから、多分大丈夫。」


「あ、でもこのお店、自宅まで配送してくれるサービスあるみたいだぞ。」


「そっか、それじゃそうしようかな。」


カイちゃんがショッピングしている横で、私も自分とカイちゃん用のお土産を物色する。


「お、江ノ電モナカだって。可愛くて美味しそうじゃん。」


「しらすも買っておきたいよね。家帰ったら食べよう!」


「ふむ、しらすと言えば、こんなのもあったぞ。」


私が注目したのは、一本の酒瓶。

そのラベルには、〝しらすビール〟と書かれていた。

私はお酒飲まないけど、思った通り酒好きカイちゃんが目を輝かせた。


「しらすビール!?珍しいねー!飲んでみたいッ!」


「んじゃ、これも買いだね。」


「やっほーい!」


カイちゃんが嬉しそうで何より。

ただ、この子は酒癖が悪いので、それだけは最大限気を付けなくてはならない。
















◆◆



お土産を全て自宅配送して貰い、私達は帰る前に湘南の海岸に寄っていた。

とは言っても水着ではしゃぐ訳でもなく、私服のまま人混みを避けて、海岸沿いの道路を歩いていた。


「たまにはこうやって、何の目的もなく歩くっていうのも悪くないな。」


「そうだねー、適当にぶらつきながら良さそうなお店に入ったり、お昼食べたり。

こういう時間も大切だよね。」


「お、分かってるじゃん。

世の中、基本的に適当で良いんだよ、適当で。」


「白狐ちゃん、今日はやけに世の中について語るねー。」


「私の人生、今のところベリーイージーモードだから、そんなに語るような事もないけどな。」


「そんな事ないよ!白狐ちゃんの人生はそれはそれで、ちゃんと立派な人生だよ!」


「…うぅ、良い事言ってくれるじゃないか、オヨヨのヨ。」


ちょびっとだけ、ウルっときちゃったぞオイ。




「それにしても、江ノ島良かったなぁ。」


「そだね!東京からも近いからすぐ来れるし、また来よっか?」


「いいね!あ、どうせなら今度来る時は、横浜の方も行ってみたいな。中華街とかさ。」


「おおー!本場の麻婆豆腐!北京ダック!肉まん!食べたいねー!」


「よし、楽しみがまた一つ増えたな。」


「うんッ!」


カイちゃんと一緒にいると、次から次へと人生の楽しみってやつが増えていくのを感じる。

こういうのって言葉では言い表しづらいけど、なんか良いなぁ。











◆◆



「うひゃはぁ〜!白狐ちゃんかーわいー!チューしていい?チュー!」


「やめろ酒臭い近づくなお馬鹿!あーもう、ウザったい!」


アパートに帰ってからカイちゃんに例のしらすビールを飲ませたら、案の定クソ酔っ払いモードに突入した。

これ以上飲ませたら危険なので、なんとか私がセーブさせている。

幸い私の言う事なら酔っ払っていてもある程度聞いてくれるので、制御するのはそこまで難しくない。


「もー!白狐ちゃんケチだなー!じゃあ代わりにハグしちゃうハグ!ギューっとね!」


カイちゃんが私の体を抱き枕みたいに抱きしめてくる。

華奢な私は当然ながらカイちゃんの力に抗う事は出来ない。

つーか力強過ぎなんだよ。普通の人間なら呼吸困難になりかねんぞ。


「なんかもう、逆らうのも馬鹿らしくなってきたわ。

ハグくらいなら別にいいよ。だけど、その酒臭い息を顔に吹きかけるなよ。」


もしかけてきたらコロスと言わんばかりの鋭いジト目眼光を浴びせたお陰で、流石の酔っ払いカイちゃんも怯み、少しは酔いが覚めた様子だ。


「…ご、ごめんねぇ、白狐ちゃん。あんまり白狐ちゃんが嫌がる事しちゃ駄目だよねー。」


珍しく、私へのセクハラを遠慮してくるカイちゃん。


「んー、なんかこれはこれでカイちゃんとの距離感感じちゃうな。

別に、そっと包み込む程度のパワーなら、ハグしても全然構わないから。

酔っ払ってて力加減が出来てないから嫌なんだよ、全く。」


「…はい、猛省しますです。」


本音を言うと、包容力のあるカイちゃんのハグは、むしろ好きな方だ。

だから、ちゃんと力を制御してやってくれれば大歓迎なんだけどなぁ。

とは、まだ恥ずかしくて本人には言えないけどさ。



⚪︎2人に質問のコーナー


白狐ちゃんの好きな果物は?


「グレープフルーツ!グレープフルーツッ!」

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