「おおー!スタミナ丼うまうま♪」
「クックック、不変力さえあれば、こんなにガッツリこってりした物だって、いくらでも食い放題なのさ!」
「ホント、白狐ちゃんさまさまだねー!」
「アッハッハ、もっと敬うといい。」
コラアドのイベント会場を後にした私達は、荷物を一旦コインロッカーに預けてから、昼食を食べに行った。
私とカイちゃんとで昼食会議を開催し、5分間に渡る議論の末に出した結論は、スタミナ丼食べに行こうというカイちゃんの意見が採用された。
ちなみに私の意見は油そば。
女子2人が選択したランチとは思えないほどカロリーデカ盛りな食事だけど、私達には不変力の恩恵がある。
つまりは、本来はどんなにデブりそうな食べ物でも、気にする事なく好きなだけ食べれるのだ。
だから、健康面なんて最初から度外視したチョイスになった。
だから、私とカイちゃんはこの時だけ清楚さを捨てて、巨大な肉と米に貪りついた。
え?清楚さなんて元から無いだって?…ほっとけ!
「…ふぅ、うまうま♪」
「うん、確かに美味い!」
2人で巨大スタ丼を堪能していると…
「…なあ、あれってもしかして、山岸海良じゃね?」
「あ、ホントだ。やっば。」
「一緒にいる幼女ってまさか、前にテレビの生放送に割り込んだっていう幼女…?」
「マジか!こんな男臭い店に来るんだ!なんか親近感感じる。」
店内の熱気でカイちゃんが変装用の眼鏡を取ってしまった所為で、正体がバレてしまったようだ。
「…ちょうど食べ終わるし、変に絡まれる前にそろそろ出ようか。」
「だねー。」
◆◆
「で、これからどうする?もう帰る?」
スタ丼屋から出て、満足そうにお腹をさすりながら歩くカイちゃんに聞いてみた。
私的には、既にコラアドイベントという主目的を達したので、もう帰っちゃっても構わないんだが。
「えぇ〜、折角アキバに来たんだし、もう少し遊んで行きたいなー。」
「でも、イベントでお金使い過ぎたから、もう財布は素寒貧だぞ。」
「大丈夫、アタシにはこの魔法のカードがあるから!」
「まあ、クレカやな。」
カイちゃんが自信満々に取り出したのは、最近手に入れたばかりのクレジットカード。
つまり、お金はいくらでもあるという事だ。間違いない。
「アタシは、結構稼いでいるッ!」
「分かった分かった、付き合うよ。んじゃ、どこ行く?」
「えっとねぇ、まずは…」
「おやおやッ!?まさか、尾藤殿に山岸殿ではッ!?」
「えッ!?」
突然、背後から声を掛けられた。
振り返ってみると、そこには見覚えのある、少し懐かしい顔があった。
「…あれ、まさか師匠!?なんでこんな所に?」
声の主は、私の実家近くに住んでいる師匠こと、花輪善次その人だった。
私と同じコラアドマニアであり、元ストーカーでもある。
「なんでと言われましても、拙者は今日から開催されているコラアドのイベントに参戦しに参った次第にござる。
かく言う尾藤殿も、拙者と同様の用件なのではござらぬのか?」
「そうそう、そうだよ!
いやー、やっぱ師匠も来てたかー!
そりゃそうだよね!コラアドのイベントだもんね!」
「うむ!コラアドを愛する民としては、たとえ天地がひっくり返ろうとも見逃す事は出来ないイベントですからな!」
いやはや、やっぱ師匠は分かってる。
この人ほどコラアドへの愛が強く、理解も深い人物なんて、そうそういないだろう。
「戦利品は全部コインロッカーに預けて来たんだけど、師匠も?」
「うむ、大型のロッカーを1つでは不足していたので、3つほど利用したのですがな。」
「さっすが師匠、気合の入れ方が違うわー。」
「拙者、この日の為にたんまりとお金を貯め込んでいましたので。」
ムッフフフーと、自慢げに胸を張る師匠。
「そう言えば、カイちゃんも最近、コラアドやり始めててさ。
結構やり込んでるみたいなんだよね。」
「ほほう!山岸殿も!それは大変良き事でござりまするなぁ!」
「アハハハ、二人に比べたらまだまだ初心者だけどね。」
「ところでお二人は、昼食はまだなのですかな?
もし良ければ拙者が奢りまするので、共にコラアドトークに華を咲かせつつ、楽しいランチでもいかがでござろうか?」
「…え、ランチ?」
知っての通り、ほんの今さっきデカ盛りのスタミナ丼を二人して平らげたばっかりだ。
普通なら、これ以上食べられる筈もないし、なんなら食べ過ぎで食べ物を見るのも嫌になるくらいだろう。
ただ、私達は当然普通ではない。
カイちゃんなんて、もう既に目がギラついてる。
「カイちゃん、お言葉に甘えよっか?」
「うん、甘えるー!お腹空いたー!」
私達の胃袋は、不変力によって無限大のブラックホール状態。
いくら食べても上限無しなので、胃袋に相談する事なく師匠の言葉に乗った。
「時にお二人は、よく食べる方の人類ですかな?」
師匠が、ベストのタイミングで聞いてきた。
「うん、私達二人とも、こう見えてめっちゃ食べるよー!」
「地元で噂の大食い姉妹とは、アタシと白狐ちゃんの事ッ!」
「いやその噂、私初耳だわ。」
ハッハッハと、師匠が愉快そうに笑う。
「それではここは一つ、アキバのグルメ巡りとでも洒落込みましょうぞ!
なに、過去のやらかしの贖罪の意味も込めて、お代は全て拙者が持ちますゆえ、お二人は是非とも至高のアキバフルコースをご堪能くだされ!」
「おおッ!?流石は師匠、痩せてるけど太っ腹!」
「花輪さん、ただの陰険なストーカーかと思ってたけど、見直しました。」
「…山岸殿は、まだちょっと棘がありますな。」
私もカイちゃんも実に単純なもので、簡単に食べ物に釣られてしまった。
ま、タダより美味いもんは無いって言うし、しょうがないね!
◆◆
まず最初に入ったのは、秋葉原でも有名なカレー店。
師匠はよく来るらしいけど、私とカイちゃんは初入店だ。
「ほえ〜、前々から気にはなってたお店だけど、色んな種類のカレーがあって美味しそうだなー。」
私達3人はテーブル席について、メニューに描かれた多種多様なカレーの写真を眺めながら、注文をどれにするか考えていた。
「なんか、白狐ちゃんと一緒になってから、つくづくカレーとは縁があるよね。」
「うん、やたらカレーばっか食べてる気がする。美味しいからいいけど。」
「ほほう、そうなのですか。ならば、カレー好きなお二人でもきっと満足出来ると思いますぞ。
なにせ、ここのカレーはカレーマイスターの資格を持つ拙者の舌を唸らせる程の絶品ですからな!」
「えッ!?カレーマイスター!?」
「師匠、そんな資格持ってたの!?」
「ええ、以前、カレー好きが高じて取得した次第に候。」
「すげー!」
鼻高々に笑っている師匠。
意外な人が意外な資格を持ってるもんだ。
「ここのカレーはチェーン店ながら、その味を損なう事なく、どの店舗でも常にハイクオリティなカレーを提供してくれるのでござる。
惜しむらくは、出店範囲が東京メインでござるので、地元には無い点であろうか。」
「なるほどなるほど。確かに東京以外じゃ見当たらないなぁ。」
その後は、注文したカレーが来るまで、3人でカレーとコラアドのトークに華を咲かせ、なかなかに盛り上がった。
師匠が頼んだのは、カツカレーの大盛り。
そして、私とカイちゃんが頼んだのは…
「尾藤殿に、山岸殿。注文前に改めて確認致しまするが、このカレー、本当に食べ切れるのですかな?」
師匠が、ちょっと引き気味の苦笑いを浮かべながら、私とカイちゃんに聞いてきた。
それもその筈、私とカイちゃんが頼んだのは、このお店で最強のメガ盛りメニュー、大量のカツやフライ、ソーセージが乗ったカレー。
米やルーの量も通常とは別格で、注文せずともメニュー表の写真だけで、その異様な存在感をアピールしている。
「大丈夫だって、楽勝楽勝!」
「うんうん、まだこれでも前菜だから。」
「えぇ…」
師匠は、早くも財布の中身を確認していた。
⚪︎2人に質問のコーナー
カイちゃんが好きな飲み物は?
「コーヒー好きかな。特にブラック。」
読み終わったら、ポイントを付けましょう!