スペースシップ☆ユートピア

永遠の時を旅する2人の少女の愛の物語
千葉生まれのTさん
千葉生まれのTさん

184話・?年目・宇宙のデスロード!

公開日時: 2023年5月10日(水) 16:40
文字数:3,027




「リグリーなりの見解、ねえ。」


「ええ、星が一斉に消滅したあの状況から考えて、宇宙自体が寿命を迎え、崩壊したものと考えるのが妥当なところでしょう。」




「………え?崩壊!?」


いきなり、とんでもないワードが飛び出してきたな。



「ってか、宇宙の寿命?

なんだってそんな……!」


宇宙に寿命がある事自体は、前にテレビ番組とかで観て知った情報だ。

確か、数百億年から一千億年以上とかなんとか。



「まあ、単純に考えて、宇宙が寿命を迎えるくらい長生きしてるってことだよね、アタシ達。」


カイちゃんの冷静なひと言。


「そっか……まあそりゃそうだよな。

不変力で永遠に生きてる訳だし、いつかはそうなるわな。」


いくら広大で膨大に広がる宇宙といったって、無限にその存在を維持出来る訳ではない。

いつか必ず、終わる時がくるものだ。




「ふーん、宇宙がもう無いのか…」


レンちゃんは俯いて、どこか寂しそうな顔をしている。


「ということは、今我々がいるここは宇宙の果て……ということになるのかな?」


「ああ、そう言えばそうかも?

宇宙が無くなったんなら、この町が今ある場所は宇宙の外ってことになるもんなぁ。」


窓越しに空を眺めてみても真っ暗なだけで、星の有無を除けば宇宙の景色と変わった点はない。

でもこの空はやはり、かつての人類が見たことのない宇宙の果ての空なのだろう。




「いや、皆さん、宇宙はまだ完全に無くなったとは限りませんよ。」


「え?どういう事?」


リグリーの一言に、私は問い掛けた。


「確かに宇宙は寿命を迎えました。

しかし、それはまた新しい宇宙の誕生を意味している……そうは思いませんか?」


「新たな宇宙の誕生……ねぇ。

成る程、ロマンがあって良い話じゃないか。」


「ええ、一度崩壊した宇宙は、また再び長い年月をかけて大きく成長していくのです。

……まあ、まだ確証はありませんが、恐らくそんな感じでしょう。」


そんな感じって……


「でもさ、ロマンってのはいつだって、確証を伴わないものなのさ。

不確かなものだからこそ、人は魅力を感じるんだ。」


「はい、その通りです。」


ん?なんか話が脱線してきてないか?




「ともかく、星が無くなった原因ってのは概ね判明したな。

宇宙が無くなっても私達の生活には特に支障は無いし、これまで通りに平和に過ごそうか。」


「うーん、お星様の観察が出来なくなっちゃったのは残念だよねー。」


カイちゃんが残念そうにそう言う。

確かに言われてみればそうだな。


「新たな星を探索するのも、しばらくおあずけだね。」


「うっ……それもそうだ。」


新たな宇宙が拡大して、新たな星々が生まれる。

それまでに、どれだけの時間が必要になる事やら。


「まあまあ、ワタシ達はどうせずっとここにいるんだから。

気長に待とう。」


意外にも、レンちゃんがそう言った。

基本、気長に待つようなタイプじゃないからな、この子は。


「そうだな。

楽しみは多少減ったかもだけど、私達は私達だ。

ここでのんびりやっていこう。」


皆がうんうんと頷いている。

うんうん、いつもの変わらぬ日常が一番なのよ。


「フッフッフ、ちなみに私らの住んでいる自宅(保全シェルター)には、大きなドームのプラネタリウムもあるよ。

星が恋しくなったら遊びに来たまえ。」


「プラネタリウムいいね!」




ま、そんなこんなで後は軽く話し合ってから、解散という運びになった。











◆◆




その日の夜。

ツジとレンちゃんはとっくに群馬の保全シェルター(自宅)へと帰り、リグリーも夕方頃には棲家であるアパートへと帰って行った。

そして、カイちゃんは私と2人で、夕飯代わりのハンバーガーセットを食べながら、私の部屋で一緒にゲームを嗜んでいる。

まあ、いつも通りの安定の流れだ。

ちなみに今日は、2人で協力プレイ出来るファミコン時代のレトロゲームに挑戦している。

レトロゲーらしい鬼畜な難易度を限界まで極めたようなとんでもないゲームで、ゲーム上手なカイちゃんでさえ苦戦している有様だ。

ゲームの腕前が上達している私も、さっきから何度もやられまくっている。


「ぐぐぅ…流石は平成初期を代表するゲーマー泣かせの最終鬼畜ゲーだなぁ。

2人で協力プレイしてもこの超高難易度とは、正直甘く見てたわ。」


はっきり言って、もう心が折れそうだ。

昼過ぎくらいから初めて、まだ序盤のステージを彷徨っているという体たらく。

正直なところ、カイちゃんさえいれば、私が下手打っても簡単にクリア出来るだろうと見積もっていた。

それが甘かった!



「あーもう、難しすぎるよこのゲーム。

アタシちょっと休憩するねー。」


あのプロゲーマー顔負けの実力を持つカイちゃんが、ここまで難儀するとは思わなかった。

休憩宣言を発したカイちゃんは、体を思い切り伸ばして、残り半分程だったペットボトルのお茶を一気に飲み干す。


「……これ、初めてプレイするゲームだけどさ、冗談抜きにヤバい難易度だな。

しかも裏技とか無いから、正規のやり方でクリアするしかないし。」


「何言ってるの白狐ちゃん。

たとえ裏技があったとしても、まずは正々堂々と真っ正面からクリアしなきゃだよ!」


「まあ、そりゃそうなんだけどさ。」


でも、ここまでゲームにボコボコにされてちゃ、裏技の一つや二つ、ちょっち使いたくもなるさ。

人間だもの。


でも、ファイティングポーズで再挑戦しようとするカイちゃんを見ちゃったら、私も弱音を振り切って頑張らなきゃと、そう思う次第でございます。


「んじゃ、もうひと踏ん張りいきますか!」


「イエーイ!」










結局、序盤ステージをクリアしたのは、夜明け頃になってしまった。









◆◆





「白狐ちゃん、お疲れ様…」


「あぁ、うん。お疲れ様はお互い様。」


夜が明けて、死体めいたグロッキー状態で床に転がっている私とカイちゃん。


テレビの画面は、鬼畜ゲームの序盤ステージをクリア直後のまま、ポーズ画面で固まっている。


「ようやく、ここまで来たな。」


「でも、まだ全体の5分の1だよ。

真の地獄はまだまだこれからだよ、白狐ちゃん!」


「うへぇ……超絶しんどいけど、ここまで来たらクリアまで完走してやりたいという厄介な心理が働いてしまう〜!」


「もうちょっと休憩したら、再開しよっか?」


「うへーい。」


私は寝転がりながら、用意していたエナジードリンクの缶を開けて、喉と気力を潤す。

さあ、本番はここからだ!








◆◆





「宇宙……かぁ。」


「宇宙だね〜。」


「あのさ?」


「うん?」


「カイちゃんはさ、宇宙って何なんだと思う?」


「うーん、それはまた難しい質問だねー。」


「ま、そんなん誰にも分からないよなぁ。」


「だねー。」


何故、こんな不毛な問答をしているのか。

それは、例の鬼畜難易度ゲームの3ステージ目に突入したからである!

第3ステージは、巨大な宇宙ステーションが舞台となっていて、背景には広大な宇宙が広がっている。

ちなみに現在は、序盤の第1ステージをクリアした更に翌朝。

ほぼ徹夜で第2ステージを何とか強引にクリアしてようやく辿り着いたのだ。


で、満身創痍の中辿り着いた宇宙(第3ステージ)を見て、宇宙とは何なのかという哲学的とも言えるような質問を、無意識のうちに投げ掛けていたのだ。







「分からないけどさ、私はこう……なんて言うか……宇宙ってのは、一つのシステムみたいなもんだと思ってる。」


「へぇ?システム?」


「特定の動作を繰り返してる、装置…みたいなさ。」


「それは、面白い見方かもしれないね。」


「具体的な根拠とかはゼロだけどな。」


以上、過剰な疲労でハイになってしまった女の戯言でした。







…そう、ただの戯言の筈だった。



⚪︎2人に質問のコーナー


カイちゃんが好きなスープは?


「アタシはシンプルなわかめスープ好きだなー。」

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