「フワッフワかき氷、おーいしー!」
フワフワ食感のかき氷も作ってやった。
皆、満足そうに食べている。
特にツジとレンちゃんは、初めての食感に感動して打ち震えているのが分かる。
「そっか、そんなに喜んでくれるんなら、作り手冥利に尽きるって感じだなぁ。」
さてと、全員がかき氷を食べ終わった頃合いを見計らって、私は次の話題を投げかけた。
「それじゃ、海水浴の次はどこ行こっか?」
「そうだね、まだ決めてなかったな。」
オイオイと、心の中でツジに突っ込む。
まだ決めてなかったんかい。
「折角だし、水着着たまま出掛けちゃわない?」
カイちゃんの突然の提案に、私達はハッと目を合わせる。
「…そっか、昔だったらそんな事したら、浮かれポンチの変態集団確定だけど、今なら誰もいないもんな。」
「ワタシは賛成!水着の方が動きやすい!」
レンちゃんはピンと手を挙げて賛成の意を示す。
そうだよな、誰もいないって事は実質、地球全体が私らの庭みたいなもんだ。
庭ならTPOなんて気にする必要は無いし、なんならすっぽんぽんで徘徊しててもお咎め無しだ。
「私も賛成だな。なんならパンイチでもいいぞ!」
「いや、パンイチは流石に見てる我々が何とも言えない気分になりそうだから、勘弁して欲しいかな。」
発動してしまった私の露出癖に、ツジからストップが掛かった。
まあ、仲間内のTPOは最低限守らなきゃだな。
「でも、水着で遊びに出るのには反対しないよ。
愛しいレンちゃんの水着姿がずっと見れるなんて、役得以外の何物でもないしね。」
「うわ、ツジ姉のスケベ。」
「ああ、いつでも己が欲望に正直なのが、私の良い所だからね。」
悪びれもせずにキッパリと言い切るツジ。
ただのスケベ発言なのに、その立ち振る舞いにちょっとだけカッコいいと思ってしまった。
「えへへ〜、実はアタシも白狐ちゃんの水着姿をもっと見てたくて提案したのでしたー!」
「だろうね、それは分かってた。」
「ウソっ!バレてたッ!?」
カイちゃんの見え見えの下心なんざ、推測するまでもないわ。
口には出さないけど本当のところ、私もカイちゃんの水着姿を見てたかった。
抜群のプロポーションの元グラドルで読モもやってたんだもんな。
見てたいって思わない方がおかしいってもんよ!
私の自慢の彼女だかんな!
……口には出せないけども!
◆◆
「で、まず最初に首里城か。」
私達4人は車で移動し、首里城前の広場までやって来た。
歴史上何度も火災に見舞われてきたが、その度に奇跡の復興を遂げた最強の城だ。
首里城公園とも言う。
「首里城……確か、古代琉球王国で、重要な拠点となった王城だね。
実に荘厳で立派なお城だ。
やはり実際に実物を見てしまうと、写真で見るのとは感動の度合いが全然違うものだね。」
うんうんと唸りながら感動しているツジ。
水着姿で。
「…やっぱ、こういう由緒正しい場所に水着で来ると、ただの浮かれポンチみたいで背徳感みたいなのを感じるな。」
「そうだろうと思って、トレンチコートを持って来たぞ。」
変なとこで気を利かせたレンちゃんが、どこからともなくトレンチコートを人数分取り出してきた。
「いやなんでトレンチコート!?
それ来たら、なんか露出魔感が増し増しになりそうでヤダ!」
レンちゃんのチョイスは謎だ。
水着の上にトレンチコートとか、何故だか変態的でヤバいイメージしか湧いてこない。
流石にこれは私もパスだ。
「じゃあアタシが裸の上にトレンチコート着て、白狐ちゃんの前でガバってやるー!」
「やってみろ。そのポーズのままお前を〝不変〟にして動けなくした後、足に鉄球を括り付けて太平洋のど真ん中に沈めてやる。」
「ひィィィッ!?そのご褒美は流石に許容範囲をオーバーしてるー!
ていうか、不変力ってそんな事も出来るの!?」
「やった事無いけど、多分私の怒りを加算すれば出来そうな気がする。」
「つまり何の根拠も無いのッ!?」
「まあまあ、そんな事よりも早く首里城見学しようぜ。」
「イエーイ!」
そして1時間後。
「いやー、面白かったねー首里城。」
「そうだね、色々と勉強になる事が多くて、知的好奇心が刺激されたよ。」
「ワタシも、今まで見た事無いような建物を見れて満足だ。」
カイちゃんもツジもレンちゃんも、予想以上に満喫してくれたみたいだ。
ホント、沖縄を不変にして良かったと、今になって実感する。
事故ではあったけれど。
「おっと、ここはお土産屋さんかな。
興味深い物が沢山陳列されているねぇ。」
先頭を歩くツジが発見したのは、首里城内にあるお土産コーナーだった。
有名な観光地だけあってスペースも広く、幅広い商品が所狭しと陳列されている。
「ふーん、オーソドックスな沖縄土産から、首里城限定のお土産まで色々あるな。」
「こ、これ欲しい!可愛い!」
レンちゃんが手に取って鼻息荒くしているのは、『首里嬢ちゃん』とかいう首里城を美少女擬人化&デフォルメした、2頭身のちびキャラフィギュアのキーホルダーだった。
金髪で、首里城カラーの琉装(沖縄の民族衣装)を着ている。
うん、確かにこれは可愛いな。
「フフ、レンちゃんは良い趣味してるね。
流石は私の彼女だ。
じゃあ私は、こっちの別バージョンの首里嬢ちゃんを頂こうかな。」
ツジが手にしたのは、レンちゃんのとはちょっと違う首里嬢ちゃんだった。
衣装の色とポージングが明らかに違う!
「び、白狐ちゃん!アタシ達も何か買おう!」
対抗意識が芽生えたのか、私に食い気味にせがんでくるカイちゃん。
「一応言っとくと、この場合は買うと言うより貰うだからな。
えっと、何が欲しいの?」
「うーんと、取り敢えずペアになるやつ!」
「曖昧だなぁ。
ま、適当に可愛い感じのやつでも探してみますか。」
「イエース!可愛いやーつ!」
ペアで可愛いやつ、というワードを頼りに、お土産コーナーを物色する。
「白狐ちゃん!これはどう!?」
そう言ってカイちゃんが指差したのは、首里城をモチーフにした変形ロボットのフィギュアだった。
何だこれ、当時の関係者はどうしてコイツを作ろうと思ったんだ。
「却下。
これはカッコいいの部類であって、可愛い訳じゃないからな。
そもそもペアになってないし。」
でもよく見たら、なかなか斬新なデザインでちょっとカッコいいので、後で持って帰ろうかな。
「お、これとか良いんじゃないか?」
私がピックアップしたのは、『首里犬』とかいうワンコのキャラのストラップ。
琉球犬という沖縄県原産の犬がモデルで、額部分に手裏剣の飾り物を付けている。
一瞬「何故?」と思ったけど、少し考えたら〝首里の犬〟と〝手裏剣〟を掛けたしょうもない駄洒落によって誕生したキャラクターだという事に気付いた。
しょーもな。
「しょうもないけど、案外可愛いぞ。」
「だねー!ちゃんと色違いでペアになってるし、アタシもこれが良いと思う!
めっちゃ可愛い!流石は白狐ちゃんのセンス!」
カイちゃんも一発で気に入ってくれたみたいだ。
「よし、じゃあ首里犬で決まり!
あ!あとアレも持ってこう!」
私の目に留まったのは、お土産コーナーの隅に置かれている巨大な物体……
『玉座クッション』と書かれたプレートと、そこに書かれた通りの、首里城正殿にある立派な玉座を模した、やたらでっかいクッションだった。
「凄いクッションだねッ!?」
「これを、家で留守番してるジャイアント(略)コオロギへのお土産にしよう。」
「いいね!きっと気に入ってくれるよ!」
ヤツは、クッションみたいなフカフカした物体が好きなのだ。
しかもこの玉座の豪華絢爛さ!
間違いなく気に入るに決まってる!
⚪︎2人に質問のコーナー
白狐ちゃんが得意なトランプゲームは?
「ブラックジャック!スリルが堪らんよなー!」
読み終わったら、ポイントを付けましょう!