スペースシップ☆ユートピア

永遠の時を旅する2人の少女の愛の物語
千葉生まれのTさん
千葉生まれのTさん

170話・57億年目・洞穴の星

公開日時: 2023年2月10日(金) 17:48
文字数:3,058




「ん?…お、おおうッ!?」


地面が揺れた。

ゴゴンゴンゴンと鈍い音を轟かせながら。

地震にしては不規則で不自然な音だ。

そもそも私達の町は浮いてるから、地震なんて普通は起こる筈ないんだけども。


自分の部屋でパンイチのままゴロゴロしていた私は、取り敢えずゆっくりと起き上がり、朝食を軽く摂ってから着替えて外に出てみる。




「んー、どっかの星に不時着でもしたのか?」


どこかの星に不時着するというのは、ちょくちょくある。

たまに変わった星に着く事はあるけど、殆どの場合は何も無いただの小惑星だ。

異星人が住んでる星は、未だにリグリーのいた金星以外に発見出来ていない。




「白狐ちゃーん!おはよー!」


家の門の前で欠伸をしていたら、カイちゃんが歩いて来た。

そろそろ来る頃だと思ってたよ。


「うん、おはよ。」


「さっき、どっかの星に不時着したっぽいね!

確認しに行こうよ!」


「ああ、そうだな。

こっからじゃよく見えないしな。」


不変力の影響で、空は地球にいた時と同じ青空のまま。

自宅周辺だと町の外の様子は分かりにくいので、外との境界付近まで出向く必要があるのだ。


「そんじゃカイちゃん、車の運転お願い。」


「お願いされましたー!」











◆◆



という訳で、近所に住んでいるリグリーを連れて町の端っこまで移動して来ました。



「おおー、これはまた。」


不時着した星は、一言で言えば殺風景。

金星の荒野と大差ない感じで何とも味気ないが、一つだけ非常に目を惹くものがある。



「あの洞穴、とても気になりますね。」


リグリーの言葉に同意。

その星はただ荒野が広がっているだけではなく、目の前に巨大な岩山が聳え立ち、まるで大口を開けた怪物のように、超巨大な洞穴が開いているのだ。

その穴の規模は、私達の町がすっぽり入ってしまいそうな程のサイズ感だ。


「ゲームやってると洞窟の入り口って小さいイメージあったけど、別にそうでもないんだな。」


「それでもこの大きさは異常だよ。」


「取り敢えず、計測器を使ってみますね。」


そう言って、リグリーは持参して来た握り拳サイズの球状の機械を取り出す。

機械は小さな駆動音を立てながら変形していき、細長い6本の脚が生えたテントウムシみたいな姿になる。


「おおー、いつ見てもカッコいい!」


「フフ、そうでしょう。」


コイツはリグリーが金星から持ち出して来た便利アイテムの一つで、現在地の温度や地質、空気中に含まれる気体の種類や細菌、ウイルスの類をパパッと計測してくれる、異星探索には非常に便利な万能優秀ロボットなのだ。

ちなみに開発者はリグリーらしい。

改めて、すんごい科学者だ。


「それじゃ、行ってきて下さい。」


リグリーが指示を出すと、その声に反応して計測器はシャカシャカと動き、町の端である崖を這い降りて謎の星に突撃して行った。



「さて、10分くらいしたら戻って来ると思うので、それまでゆっくり待ちましょう。」


「オーケイ。」





そして各々適当に時間を潰しながら、待つこと10分。


「お、戻って来た。」


計測器がこちらに向かって歩いてくるのが見える。

ひと仕事終えたからか、何だか健気に頑張っているように見える。


「早速、結果を見てみましょう。」


リグリーが計測器の頭頂部(?)のスイッチを押すと、リグリーが持参した小型コンピュータ(ノートパソコンみたいな物)のモニターに細々とした数値や文字列がズラッと並んで表示される。



「ふむふむ、見た目からは分かりにくいですけど、結構高温みたいですね。

金星の地表ほどではないですが、気温が200度近くあります。

大抵の生物は生存出来ない環境ですね。」


「うわー、迂闊に足を踏み入れないで良かった。」


不変力を使わずに突っ込んでたら、ど熱い思いをしてただろう。


「妙なウイルスとかは、取り敢えず無さそうですね。

というか、高温過ぎてそもそも生存すら出来ません。」


「でも、高温に適応したウイルスがいるかも?」


「それは………その時はその時です。」


「まあ、最悪感染しても死にはしないからな。」


不変力万歳!


「そう言えば白狐ちゃん、さっきツジちゃんとレンちゃんから連絡あったよ。

今こっちに向かってるって。」


カイちゃんが、スマホ片手にそう告げる。


「よし、じゃあ2人と合流次第、探索開始と行きますか!」


「オーッ!」








◆◆



「いやはや、こうして近くで見てみると、もの凄い迫力があるなぁ。」


私、カイちゃん、ツジ、レンちゃん、リグリーのいつメンで、入り口がやたらデカい洞穴の前に立つ。

いやしかし本当にデカい。

端と端が離れ過ぎて見えないくらいだ。

そして中は真っ暗で、内部が殆ど見えない。


「これは、懐中電灯5人分は必須だね。」


「確かに、無駄に広いぶん、充分照らせるようにしないと。」


ツジとレンちゃんの言う通り、照明は欠かせない。

そこで役に立つのが、金星の地下探索でも活躍した、高出力でエネルギー不変の懐中電灯だ!

きちんと人数分持って来た。


「いいですか、洞窟内はどんな危険が待ち受けているか分かりません。

不変力があるからと言って、油断することのないようお願いします。」


「オッケー。」


今までにも何度か未知の惑星探索はしてきたので、既に私達はプロの領域だ。(多分)

周囲を満遍なく警戒しながら、巨大怪獣の大口めいた洞穴へと足を踏み入れた。











◆◆



「おぉ、何なんだこの洞穴は。」


洞穴の内部は、別段突筆するようなものはない。

ただただ無駄に幅が広いだけで、他には何もない。

あと、生き物が全く存在しない。

外と同様で高温な環境だから、当然っちゃ当然だけど。


「奥には何があるんだろうね?」


「んー、あんま期待しない方が良さそうな気がする。

って言うか、段々幅が狭まってない?」


周囲を見てみると、進むうちにどんどん洞窟内の幅が狭まっているのが分かる。

初めはとんでもない広さだったのに、5分ほど進んだだけでもう、東京ドーム1個分くらいの広さになっている。


「ふむ、奥に向かって収束しているような構造だね。」


ツジの意見は正しい。

懐中電灯で周囲を照らすと、明らかにそういう構造になっているのが分かる。


「まるで半分に割った漏斗みたいだ。」


「………まあ、そのイメージでおおよそ合ってるね。」


私の見事な例えが、微妙そうな反応で返された。

まあいい、先に進むぞ。





とまあ、そっから更に3分ほど進んだら、もう最奥まで辿り着いた。

最終的には洞穴の広さは私の部屋くらいに収束していて、そこには〝あるもの〟があった。







「……ねえ、これって。」


「どっからどう見ても、水だな。」


行き止まりの壁際の地面に、ポッカリと空いた直径2メートルほどの小さな穴があり、そこに水が溜まっていた。

小さな池のようなそれは、懐中電灯で照らしても当然生物の姿は見えない。

ただ、かなり透明度の高い水のようで、懐中電灯の光線が奥の奥まで照らしている。


「全然底が見えないね。

意外と深いんじゃないかな。」


ツジが顎に手を当てながらそう呟く。


「でも、ただただ深いだけで、何にもなさそうだなぁ。」


「確かにね。」


何だか肩透かしを食らった気分になり、ちょっと残念な気持ちになる。

まあでも、こんなのは探索に於いてよくある事だ。

慣れたもんさ。




「一応、この水溜まりの調査もしときますね。」


そう言って、リグリーがさっき使ってた計測器を取り出す。


「ん?それ水中でも使えるの?」


「ええ、水陸両用です。」


水に触れると今度は計測器からひれのようなものが生え、魚っぽい形状のまま水中を突き進んで行った。



「ちなみにあの子にはカメラも搭載されているので、水中の様子もこちらのモニターで確認出来ます。」


「そうか、結果を楽しみにしてるよ。」



⚪︎2人に質問のコーナー


カイちゃんが好きな観葉植物は?


「パキラかなー。子供の頃、家にあったんだ!」

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