世界一周豪華客船の旅は順調に進み、私とカイちゃんは多くの国を巡った。
◆◆
〜インド〜
「おおー!インドだ!」
「インドと言えばカレーだよねー!」
インドの首都、ニューデリーの大通り。
とにかく人が多く、歩道も車道も大勢の人と車でひしめき合っている。
「インドー!マハーラージャー!」
「…えと、白狐ちゃん意味分かって言ってる?」
「ノリで言ってみた!まずはカレー食べに行こうぜ!」
「オッケー!24時間耐久カレー店巡りだよー!」
「イエーイ!
………え?本気で言ってる?」
本気で言ってた。
この後ガチで24時間付き合わされて、私の胃袋はインドの神秘があーだこーだして色々と多幸感に満ちていた。
でも、もうしばらくカレーは食べなくていいや。
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〜トルコ〜
「おおー!トルコに着いたー!」
「トルコ!トルコと言えばトルコ料理だよね!」
トルコ料理、か。
真っ先に思い浮かぶのはやっぱりケバブ。
それに次いで、伸びーる事で有名なトルコアイス!
この辺が鉄板だろう。
「しっかし、私達は本当に食べる事ばっかりだなぁ。」
「いーのいーの!
それじゃ、いざ24時間耐久トルコ料理巡りの旅へレッツゴー!」
「それはもう勘弁して下さい!」
結局、24時間付き合わされた。
この日だけ、体力を不変にせざるを得なかった。
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〜フランス〜
「おおー!パリすげー!凱旋門、実際に目の前にすると凄い迫力!」
「エッフェル塔も凄いねー。
初めて見たけど、流石は芸術の都だね。」
フランスはパリのエトワール広場。
そこから見上げるエトワール凱旋門とエッフェル塔の光景は、まさに圧巻の一言!
「おや、ここに看板が立ってるけど、どうやら1週間後からエッフェル塔の大規模な改修工事が始まるみたいだな。」
「そうなんだ!?
良かったねー、その前に来れて。」
「そうだな、工事の足場に囲まれたエッフェル塔を見たら、感動も半減してたかもしれないしな。」
「うんうん、それでこの後はどうするの?」
「よし!まずは本場のフレンチを思う存分堪能して、それからルーブル美術館にGOだ!」
「イエーイ!最高だねー!」
食と芸術が楽しめるパリの街は、私達の胃袋と脳を充分に満たしてくれた。
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〜アメリカ合衆国〜
「うあー!なんて人の量なんだー!
ここがかの有名なニューヨークのタイムズスクエアなのかー!」
「アタシは仕事の関係で何度か来た事あるけど、この人混みはなかなか慣れないよね。」
とにかくどこを向いても人!人!人ッ!
人口増加の一途を辿るアメリカ合衆国は、今や世界有数の人の多さを誇っている。
誇っているとは言っても、それが国にとって問題にもなってはいるんだけども。
「いやはや、ニューヨークは何度もシミュレーションで来た事はあるけど、やっぱ実際に訪れてみると全然違うなー!
人の活気というか熱気というか、そういうの直に感じるわ。」
「え?シミュレーションって?」
「あぁ、ちょいとゲームでね。
海外のオープンワールド系のやつで。」
「なるほどー、確かにニューヨークって、海外のゲームの舞台じゃ定番だもんね。」
「それじゃカイちゃん、早速行ってみますか?」
「へ?行くって何処に?」
キョトンとした顔で惚けるカイちゃん。
ムゥ、カイちゃんにしては勘が悪いな。
「おいおい、カイちゃんの癖に分かんないのかい?
ニューヨークと言えばやっぱアレでしょ!」
そう言いながら私は、すぐ近くの飲食店の看板を指差す。
そこに描かれているのは、溢れんばかりの大量の具材が挟まれている巨大なサンドイッチのパワフルなイラスト!
「おお!デカ盛りグルメッ!」
「その通り!今回は今まで訪れた国の中で一番食いまくるぞー!」
「ヤッター!」
一気にテンション急上昇なカイちゃん。
食べ物の力ってのはホント偉大だな。
◆◆
「うまうま♪」
私とカイちゃんは、見た事ないようなクソデカモンスター級サンドイッチを難無く完食し、
「うまうーま♪」
次のお店で巨塔の如し20段ハンバーガーを更地にし、
「デリシャース♪」
総重量脅威の40ポンドを誇る化け物ステーキを飲み物のように胃袋へ流し込み、
「あまうまー♪」
バケツサイズのスーパージャイアントパフェを、まるで雲霞でも食むかのように貪り尽くした。
勿論、行く先々のお店で周りのお客さんや店員さんの熱烈な視線を必然的に浴びまくる事になる。
でも、羞恥よりも食欲が勝り、旅の恥はかき捨てろと言わんばかりに、私とカイちゃんは暴食の限りを尽くした。
その結果…
「あッ!こちらのお店にいました!
今朝、突如としてニューヨークの街に現れ、人間離れした食欲で既に多くの飲食店を荒らしているという噂の、日本人の美少女2人組でーす!」
SNSであっという間に私達の噂は広まってしまい、現地のテレビ局が緊急で取材に来たのだ。
いきなり現れた陽気な女性リポーターを前に私はアタフタしてたけど、機嫌の良いカイちゃんは、今食べているデカ盛りフライドポテト50人前の代金をテレビ局側が支払ってくれると言われて、取材を受ける事を快諾した。
「うええええー!?カイちゃんは慣れてるから良いかもしれないけど、私はムリムリムリぃぃ!
テレビ出演なんて私には無理過ぎる!」
テレビ局のスタッフと勝手に話を進めているカイちゃんの腕を引っ張って、抗議の言葉を耳打ちする。
心の準備も出来ていないのにテレビ出演なんて、私には無理ゲー過ぎる!
しかも、こんなアホみたいに爆食いしてる時に!
「…そ、そうなの!?
白狐ちゃん、昔一度テレビ出た事あるから、大丈夫なのかと思ってた。」
ああ、かなり前に磧環の悪事を暴く為に、テレビ局に乗り込んだ時の事を言ってるのか。
「いやいや、あれはもう100年以上前の話だし、そもそもあの時は顔を隠してたからギリギリ出演出来ただけであって…!」
「そっか、白狐ちゃんが無理なら無理強いは出来ないよね。
ごめんね、勝手に話進めちゃって。」
私に気を遣ってるのか、笑顔でそう言うカイちゃん。
でも、長い付き合いの私には分かる。
この時のカイちゃんの笑顔は、何かを我慢して無理に作った笑顔だ!
「……いや!でも!………まあ、よくよく考えたら無理でもないような……。」
「ほえ?」
「あーもう!取材受けようって事!
カイちゃんの可愛さと食べっぷりを、全米に知らしめてやる!」
「白狐ちゃん優しいー!」
そんなこんなで、私とカイちゃんは取材を受けた。
聞くところによると、取材に来たテレビ局はアメリカ国内でも最大手のテレビ局らしく、後日見事に私達の人間離れした食べっぷりが全米に垂れ流されたそうな。
メチャクチャ恥ずかしかったけど、それ以上にカイちゃんの悲しむ顔が見たくなったのだ。
ただ、取材を終えて気付いた事が一つ。
別にカイちゃんだけ出演すれば良かったんじゃね?っていう。
◆◆
「ふいー、満足満足!」
「そうだねー、アタシ達みたいに沢山食べる人類には、アメリカは最高だよ!」
心行くまでアメリカングルメを満喫した私達は、お腹を摩りながら街中を歩いている。
今日は特に食った。
今までの人生の中でもベスト3に入るんじゃないかってくらい、爆食いした。
「まだ時間あるし、カイちゃんどっか行きたい所ある?」
「そだねー、アメリカといえばメトロポリタン美術館も良いし、ブロードウェイでミュージカルも観たいなー!
あ!自由の女神にも行ってみたいかも!」
「よっしゃ!全部総取りだ!」
と勢い込んで言ってみたものの、流石に全部回るには今日一日じゃ無理がある。
2人で話し合った結果、今日は取り敢えずメトロポリタン美術館にだけ行き、明日ブロードウェイと自由の女神へ行く流れになった。
よーし、楽しみ楽しみ!
⚪︎2人に質問のコーナー
カイちゃんの好きな数字は?
「100!ひゃく→びゃく→びゃっこ→白狐ちゃんを連想させるから!」
読み終わったら、ポイントを付けましょう!