「おおー!沖縄ー!」
「ビバ沖縄ー♪」
「沖縄ばんざーい!」
「……ここが、沖縄ッ!」
沖縄の地に到着した私達は、少しばかり浮かれていた。
綺麗な海、シーサー、ハイビスカス。
そのどれもが、修学旅行当時の沖縄の光景そのままだ。
悠久の時を経た今でも、全く変わっていない。
「これ程までに綺麗な海!自然!文化!
まさしく感動的だ!
しかし、ここは普通の港だね。」
「まあ、フェリーを停めるのにちょうど良さそうな、普通の漁港だしなぁ。」
普通の漁港だというのに、ツジとレンちゃんは興味深そうに周囲を観察している。
まあ、普段は保全シェルターの周辺からは滅多に離れることのない2人だからな。
こうして遠出するのは、貴重な体験なのだろう。
「さ、まずはその辺の車を拝借して、国際通りまで行こっか。」
「昔だったら普通に泥棒だね!」
「今は合法なんだよ合法!
ほら、車もずっと放置されっぱなしじゃ可哀想だろ?
ガンガン使ってやらなきゃ!」
うんうん、これは車さん達の為にやってるのだよ。
◆◆
港から車に乗って、沖縄本島の那覇市は国際通りへとやって来た。
沖縄県随一の目抜き通りでもあるここは、当然ながら修学旅行当時の光景を丸々そのまんま残しており、ズラッと並んだお土産屋の列に、沖縄料理屋、その他様々なショップが乱立している。
やはり過去の記憶と違う点は、人が全く居ないというところか。
「人どころか、野生の生き物が棲んでたりもしないなぁ。」
「あぁ、そう。そこだよ尾藤ちゃん。
私は以前から、ずっと気になってる事があったんだ。」
ツジが、腕を組みながら聞いてきた。
「気になってるって、何が?」
「ほら、例えば君達が住んでいる町だ。
この沖縄の街並みを見ても思ったんだけど、野生の生き物が全くと言っていいほど生息していないよね?」
「……確かに。」
その件に関しては、私もずっと前から疑問に思っていた。
「こんなに大きな市街地に、人が1人も住んでいないんだ。
そんな場所に、外部の野生動物が押し寄せて来ないのは、どう考えても不自然だと思うんだけどね。」
そりゃあ、ごもっともなこって。
不変になった土地では、食糧も豊富だ。
いくら時間が経過しても腐らないし、いくら食べても次の日にはその分だけ元に戻っている。
つまり食べ物食べ放題なのに、外部の野生動物が一切住み着こうとしないのだ。
不自然に思うのも無理はない。
「う〜ん、あくまでも私の仮説なんだけどさ。
多分、不変力の影響で、その土地の生態系とかも不変になっちゃってるんじゃないかな。
だから、他の生物が寄り付かないんだと思ってる。
ほら、不変になる前から生息してる生き物は、普通にいるし。」
「ふむ、確かにそうだ。
その説は、かなり有力なのかもしれないね。」
今度は顎に手を当てて熟考している。
ツジは一度深く考え出すと、なかなか現実に戻って来なくなる癖があるからなぁ。
「まあまあ、考えるのは一旦後にして、折角沖縄に来たんだから満喫してった方が良いと思うぞ。
カイちゃんとレンちゃんは、もうはしゃいで先行っちゃってるし。」
特に来る前からずっとウズウズしていたレンちゃんは、普段のクールっぽい表情をしているにも関わらず、大型のお土産屋さんの前でウロチョロしているのが確認出来る。
初の沖縄に、完全にはしゃいじゃってるな。
ま、仕方ないっちゃ仕方ないけど。
「アッハハハ、それもそうだね。
難しい事を考えるのは後回しにして、楽しみにしていたシーサーの置き物でも探しに行こうかな。
魔除けの効果が有るらしいし、我が家の入り口に置いときたいんだ。」
「ん〜、誰もいない場所を守らせておくより、ツジちゃんとレンちゃんが住んでるシェルターを守って貰った方が、確かに良いかもな。」
ほぼ無職と化してるシーサーに、仕事を与えるって意味でも。
「さて、私はどうしようかなっと…」
キョロキョロと周囲を見渡して、ちょうど目に付いたのが、年季の入った沖縄料理屋だった。
◆◆
「よーし出来た!
ほうら、たんとお食べ。」
「おおー!流石は白狐ちゃん!
こんなに本格的な沖縄そばをすぐ作っちゃうなんて!」
私は、立ち入った沖縄料理屋の厨房をお借りして、沖縄そばを作った。
厨房内の冷蔵庫には食材一式が揃っていたし、このお店のレシピも戸棚に入っていた。
沖縄そばを作るのは初めてじゃないけど、どうせならお店の味を再現したい気持ちがあったのだ。
という訳で、出来る限りレシピに則って作り、立派な沖縄そばを仕上げてみせた。
「おお!美味しそうだね!」
「…沖縄そばは、何度か白狐が作ったのを食べさせて貰ったけど、こうやって現地でちゃんと食べるのは初めてだ。感謝する。」
レンちゃんは鼻息荒く、興奮している。
そんなに沖縄そばが大好きだったのか。
あのクールなレンちゃんが、素直に感謝の言葉を述べるくらいだしな。
「レシピには、沖縄そば以外にも色んなメニューの作り方が載ってたからな。
タコライスにゴーヤチャンプルー、ヒラヤチー、何でも作ってやるぞ!」
「イエーイ!サイコー!」
沖縄そばを作った勢いで、他の料理を作ってみたい欲が出てしまった。
皆も喜んでるみたいだし、ここはひとつ、沖縄料理フルコースを振る舞ってみるとしよう!
◆◆
たらふく沖縄料理を満喫した後は、市場を見て、お土産屋を見て、増えた荷物を一旦車の中に置いてから、再び沖縄料理を食べる!
それから車移動をして、海岸までやって来た。
「おおー!綺麗な海ッ!凄いッ!」
子供みたいに(見た目だけは子供だけど)無邪気にはしゃぐレンちゃん。
ふむ、娘を持つ親の気分が、少しだけ分かった気がする。
「レンちゃんの気持ちも充分に分かるよ。
こんなに綺麗なエメラルドブルーの海、そして白亜の砂。
まるで芸術作品のようだ。」
その言葉には大いに同意する。
今の時代、他の海は一体どうなっているのかも気になる。
昔は人類の戦争によって世界中の土地と海が汚染され尽くしたけども、今やその汚染物質も時間と共に跡形も無く消失した。
「さて尾藤ちゃん、かつての地球には、この海に匹敵するほどの綺麗な海があったと、本で読んだのだけどね?」
「沖縄並みに綺麗な海ねぇ………パッと思いつくのは、モルディブの水上コテージとか、かな?」
「そっか、モルディブねぇ…古代の地球にはそのような国があったというのは、知識としては知ってはいるけど。
水上コテージというのも、言葉の響きからしてなかなか気になるね。」
水上コテージ、か。
テレビで南国特集みたいなのをやってたのを昔見た事があるけど、実際にそういう宿泊施設に泊まった経験は無い。
「んーっと、簡単に説明すると、海の上に作られた木製のホテル的なのかな。
こう、小さな家が幾つも建ってて、中はすっごく綺麗な感じで、床に穴があってそこで釣りとかも出来る。」
「ふむふむ、何となくイメージが湧いてきたね。」
良かった、私の拙い説明でもちゃんと伝わったみたいだ。
ツジの想像力の豊かさに脱帽!
「水上コテージ、良いな!
作ってみたい!」
すぐ近くで聞いていたのか、レンちゃんが瞳を輝かせながらそう言った。
そうか、無ければ作ってみるのもまた一興か。
私もそういう空間でくつろいでみたいし。
「そっかそっか、それは面白そうだな!
私は作ってみるに1票!」
面倒臭がりな私が珍しくやる気が出たので、ノリ良く賛成してみた。
「他ならないレンちゃんの望みだ。
私も喜んで手伝わせて貰おうかな。」
ツジもノリノリ。
「アタシもー!
楽しそう!」
カイちゃんもノリノリ!
全員ノリノリのノリ!
これはもうやるしかないな!
いざ、水上コテージ作り!
⚪︎2人に質問のコーナー
カイちゃんが好きな沖縄料理は?
「もちろんサーターアンダギー!無限に食べれるよー!」
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