スペースシップ☆ユートピア

永遠の時を旅する2人の少女の愛の物語
千葉生まれのTさん
千葉生まれのTさん

82話・99年目・おかしいだろ!

公開日時: 2021年12月14日(火) 17:46
文字数:2,995



「白狐ちゃ〜ん!ムフ、ウフフフフ!」


「……。」


今日も変わらず普段通りにゲームをしている私だが、そんな私にまるで、タコみたいに全身に纏わりついてくるカイちゃんがいる。


なんなんだこの女は。

いつにも増して変態性が上がってるじゃないか!


「…カイちゃん、あのさぁ?」


「ん?どうしたのぉ、白狐ちゃぁん?」


「いやぁ、キモいわその猫撫で声。」


「オぅッフ!?」


「最近、どんどんキモさが急増してるよね?

なんで?なんか大いなる災いが起こる前触れなの?」


ここのところ、カイちゃんが毎日のようにウザ絡みしてくる。

ずっと気にしないようにしてたけど、遂に我慢出来なくて聞いたのだった。


「災い?

そんな、むしろ真逆だよー!」


「ほほう?」


「だってー、いよいよ1週間後には白狐ちゃんと恋人になれるんだもん!

ソワソワしない方がおかしいよー!」


「ふ〜ん、そういうもんなのか……」


「ムッフフフ〜、人生最高の年末年始になりそうだなー!」


「あ〜、そっか。もう今年も終わるのか。

そろそろ年越し蕎麦でも作ろっかな。」


料理好きな私は、年越し蕎麦を毎年自宅で手打ちで作っている。

そして、手打ち蕎麦を作る話になると…




「白狐ちゃんの手打ち蕎麦ッ!

今年も絶対食べるー!楽しみー!」


このように、カイちゃんが必ず釣れるのです。


「まあまあ、落ち着きなって。

私の手打ち蕎麦がいかに絶品とはいえ、別に逃げたりしないんだから。

今年もたっぷり用意しとくよ。」


「イエーイ!やったー!ウエヒヒヒィィ!」


まるで滅びかけた世界が滅亡から救われたかのように、大はしゃぎで喜ぶカイちゃん。

しくじったな、余計にテンションを上げてしまう形になっちゃったぞ。


んで、年越し蕎麦を食べる当日は、コタツに入ってカイちゃんとふたりパーティーゲームで盛り上がりながら、蕎麦を含めたご馳走を食べる。

これが、毎年恒例の私達の年末の過ごし方だ。



ま、実際のところ私も結構楽しみにしてはいるんだけどな。








ん?





「あれ、カイちゃんさっき妙な事言ってなかった?」


「えー?そんな事ないよー!」


「そう?まあ、カイちゃんが変な事言ってるのはいつもの事だしな。

逆に変じゃないパターンなのか。」


「白狐ちゃんひどーい!」




うーん、なんか違うな。

もっとこう、重要な事を言ってたような気がするんだよなぁ。








あれ?





「カイちゃん、あとどのくらいで私と恋人になれるって言ったっけ?」


「んー?あとジャスト1週間だよ。

白狐ちゃんも楽しみでしょ?」





「………いっ……しゅうか……ん…?」


「イエス!1週間!」




…そっか、今日は12月25日でクリスマスの日。

この後は夜になったらカイちゃんとクリパ開いて、美味しいケーキやらチキンやらご馳走を平らげた後、プレゼント交換もして……



そっか、1週間後は1月1日で元日か。

それでえっと、去年が私とカイちゃんが出会って確か98年目。

今年が99年目。



……で、来年が100年目。




100年目……?





「ひ、ひゃくねんめェェェッッ!?」


「うえッ!?白狐ちゃんッ!?」


家中に響き渡る私の絶叫に、カイちゃんは尻餅をついて転んだ。




「え?え?え!?

あと1週間で100年目なのかよッ!

早過ぎない!?おかしいだろ!」


「な、何もおかしくなんてないよー。

逆にアタシはこの100年、早く白狐ちゃんと付き合いたいなーと期待しっぱなしで、物凄く長く感じてたくらいだもん!

まさに、一日千秋の想いでッ!」


「うわぁ、マジかぁ。

もしかして私、まともに社会貢献もせずに、毎日毎日部屋にこもってゲームばっかしてたから、時間の感覚がおかしくなってたのか?」


「その可能性はあるね。」


カイちゃんにもあっさりそう言われて、私は愕然とする。


「いや、別の視点から考えよう。

この100年、ゲームしてる以外にも、カイちゃんと色んな所へ行ったり、色んな遊びをしたり、とにかく充実しまくった100年でもあった。

だから楽し過ぎて、時間が早く過ぎたように感じた。

うん、そっちの説を信じる事にしよう。」


学生時代の楽しかった思い出。

大人になってからは、カイちゃんと東京やら色んな場所に旅行に行って、山のように沢山の思い出も作った。

野茂咲さんや新藤君、師匠など、個性的で愉快な人達との出会いもあった。

私が家にこもってたい時には、カイちゃんと夜通しでゲームをして盛り上がったりもしたもんだ。




「ホンット、色んな事があったよなぁ。」


「うん、本当に色々あったねー。」


2人して、しみじみと感傷に浸る。

学校に通ってカイちゃんと出会ったあの日の事が、昨日の事のようにも感じられるし、遠い昔の事のようにも感じる。

不思議な感覚だ。


「でも白狐ちゃん、これからこんな日常がずっと続くんだよね?」


「ああ、そうだな。」


「エヘヘ、楽しみだねー。」


「うん、私も楽しみだよ。

でも油断するなよ?

私達が変わらなくても、それ以外の世界や人々はどんどん目まぐるしく変わっていくんだ。

その流れに多少合わせるくらいなら問題無いだろうけど、完全に呑み込まれるのはマズいからな。」


世の中というのは、いつ何が起こるか分からないものだ。

安全に見えるこの国も、数百年後、数千年後には、どんな国になってるのかなんて分かりゃしない。

暴君みたいな支配者に抑圧されてるかもしれないし、逆に凄く良い国になってる可能性もある。

今と大して変わらないパターンもあるかもしれないけど。


「もう、そんなに心配しなくたって大丈夫だよ。

アタシには白狐ちゃんがいるから、それだけで大丈夫なんだよ。」


「何その変な根拠。

まあ、カイちゃんは絶対にぶれないだろうから、確かに大丈夫そうだな。」


「うんうん、ぶれないぶれない!」


この子の愛は、いつだって一直線だ。

そして私も、そんな真っ直ぐな愛情に向き合わなければならない時なのだ。

今までは「まだ時間があるから大丈夫」と悠長に構え、のらりくらりとカイちゃんの愛を躱してきたけど、今度ばかりはそうはいかない。


「ま、逆に私も大丈夫そうかな。

カイちゃんが常に側にいてくれるから、いざって時は守ってくれるもんな。」


「もちのロンだよッ!

白狐ちゃんが困ってる時は、どんなに離れててもマッハで駆け付けてあげるからね!」


「ハハ、カイちゃんの事だから本当にマッハで来そうだな。」


冗談のつもりで言った一言なのに……


「うん、マジでマッハだよ!

こないだ、最新式音速飛行型のVTOL機買ったからね!

移動用兼白狐ちゃんの元へ駆け付ける用で!」





「……え?マジですか?」


「うん、マジだよ。

そっかごめん、言うの忘れてたね。

ちょっと高い買い物だったけど、これで海外に出張してても、なる早で白狐ちゃんの元に来れるようになったからね。安いもんだよ!

あ!今度白狐ちゃんに不変にして貰わなきゃ。」


「それは構わないけど、マジかぁ。

カイちゃんも遂に、そこまで来たかぁ。」


まさか、そこまでの財力を有していたとは。底の知れない女だ。

このままだといつか、国ですら買えちゃうんじゃないか?


「まあでもカイちゃん、お金は大切な物だから、よーく考えて使いなよ?」


「もう、白狐ちゃんったら!

アタシにとって白狐ちゃん以上に大切なものなんて無いんだから、白狐ちゃんの為にお金を使うのは全然惜しくないんだよ。

そうだ!今度白狐ちゃんの分も買っとくね、アタシとお揃いのVTOL機。」


「いや、流石に遠慮しときます。」


なんなんだよそのノリは。

「お揃いのカチューシャ買お!」みたいなノリでVTOL機を買おうとすんな!



⚪︎2人に質問のコーナー


カイちゃんの誕生日は?


「7月18日だよ!」

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