思い付きで始める事になった、沖縄での水上コテージ作り。
初めはどうなる事かと思ったけど、案外どうにかなるもんだ。
フェリーに乗って、不変力の影響を受けていない沖縄の離島へと赴き、そこで木を切り倒し、木材を調達。
どういう訳か、以前に建築知識を学んだご都合主義ハイスペックなカイちゃんが指揮を執り、着実にコテージの建設が進んでいく。
「よーし!まずは一軒目が出来たー!」
数日間に及ぶ作業の末に、なんとか最初のコテージが出来上がった。
そう、〝最初〟と言っているだけに、人数分作るつもりだ。
素人仕事ではあったけども、カイちゃんが指示したお陰か、なかなかに立派なコテージに仕上がったぞ。
テレビで見たものと、殆ど変わらないクオリティ!
作るのは大変だったけども、得も言われぬ達成感を感じるなぁ。
なんかこう、感動する。
「いやはや、大変な作業だった。
でも、今回ので要領は掴めたからね。
次からはもっと効率的に進められる自信があるよ。」
何やらコツを掴めたようで、上機嫌な様子のツジ。
まあ、それは私も同じだ。
どこをどうすれば上手く出来るのか、何となく理解は出来たと思う。
「よし!一旦休んでから、次のコテージ作りの計画に取り掛かろう!」
結局、コテージ4軒を作るのに、1か月ほどかかった。
その間、ずっと沖縄に滞在していたので、これ程の期間自宅を留守にしていたのは、実に久し振りだ。
でも、素人4人だけで、1ヶ月という期間で完成させられたのは、上出来なんじゃないかと思う。
それもこれも、カイちゃんの指揮力、ツジの知力、レンちゃんの膂力、プラス私の内から迸る何かの力!
それらが結集した結果がこれよ!
海岸沿いから伸びる長めの桟橋と、そこから木の枝のように4つのコテージが生えている。
海岸側から順に、レンちゃん、ツジ、私、カイちゃんのコテージとなっている。
「いやぁ、大変だったなぁ!
こんなに肉体労働しまくったの、私の人生で初めてかもしれん。」
皆で作業するのは意外と結構楽しかったけど、流石に我が家が恋しくもなってきた。
具体的に言うと、我が部屋のゲームや漫画達が!
「フッフフ、不変力のお陰で肉体的な疲労は皆無だったけどね。」
ツジの言う通り、不変力で皆の疲労度を不変にしといた。
それによって、非常に効率的な作業が実現可能になったのだ。
そもそも、疲れるのと労働が嫌いな私が参加出来たのは、9割方そのお陰と言えるだろうな。
疲れさえしなければ、ポジティブにゲーム感覚で作業が出来るのだ。
「まさか、ワタシのちょっとした発言で、本当にここまで出来上がってしまうとは。」
レンちゃんも感動している。
感動と同時に、驚きもしている。
私達の底力に!
「アタシ達4人が本気になれば、これくらい訳ないよ!」
カイちゃんの言う事ももっともだ。
私達の力は非常にバランスが取れていて、何かを成すのにちょうど良いのかもしれない。
「んじゃ、折角苦労して作ったんだから、その分思いっ切りくつろぐとしよう!」
◆◆
くつろぎ過ぎた。
丸一日パンツ一丁で、コテージ内でゴロゴロ。
ナメクジみたいに、ぐでーっとし続けながら、自宅から持って来た漫画やゲームに興じていた。
こういう綺麗な海の上のコテージでひたすら怠惰な時間を過ごすのって、実は少し憧れてたりするんだよね。
さて、どれだけくつろいでいた頃だったか。
コンコンと、ドアをノックする音が聞こえた。
「んー?」
のっそりと立ち上がり、玄関のドアを開ける。
「やあ尾藤ちゃん、おはよう。
くつろいでるところにお邪魔して悪いね。」
来客は、ツジ1人だった。
お洒落な女性用のアロハシャツを着ていて、片手にハンドバッグを抱えている。
「ああ、おはよう。
どうかしたの?」
不自然なくらいニコニコしているツジに、どこか怪しさを感じる。
何か用があって私のコテージを訪れたのは、間違いないだろうな。
「…沖縄に来て、早い事1ヶ月以上経ったね。
でも、我々はコテージ作りに夢中になるあまり、最も重要な事を忘れていたのではないかな?」
「重要な事だって?」
頭の上に疑問符を浮かべる。
「フフ、これだよこれ。」
ツジが、ハンドバッグの中から何かを取り出した。
黒い布状の……これは……!
「これ、私の水着じゃん。」
上下黒のフリル付きフレアビキニ。
その昔、学生時代に修学旅行で着たやつだ!
カイちゃんが選んでくれたやつ。
「そう、尾藤ちゃんの水着だ。
呼びに来たついでに持って来たんだ。」
ツジに持って来られたマイ水着。
そして、ここは沖縄の海。
それ即ち…!
「分かった。
海水浴、行くか!」
◆◆
本日は晴天。
空を仰げば、パンの切れ端みたいな雲がまばらに散らばり、太陽の光が燦々と陸海空を照らしている。
「いやー、夢にまで見た沖縄での海水浴!
本で読んだ通りの完璧で最高のシチュエーションだ!」
砂浜で水着姿で興奮しているツジの言う通り、これ以上無いくらいに良い天気と景色だ。
インドア派の私も思わず感動していたほどだ。
ちなみに、ツジの水着は緑色のビキニにホットパンツというスタイル。
中性的な見た目と性格な彼女には結構似合ってるボーイッシュなチョイスだ。
どっかのお店から拝借して来たらしい。
「おおー!白狐!ツジ姉!
海!海だ!楽しんでるぞ!」
興奮気味のレンちゃんが、向こうから駆け寄って来た。
白地にレモンみたいな柑橘類のイラストが描かれた、ワンピースタイプの子供っぽい水着だ。
ふむふむ、大変似合っておりますなぁ。
頭には麦わら帽子を被っていて、いかにも〝夏〟って感じが滲み出ている。
レンちゃんは意外と結構レジャー好きなのだ。
「レンちゃん、おはよ。
随分と楽しんでるみたいだな。」
そう言うと、ちょっと照れたみたいに視線を逸らす。
自分で楽しんでるって言ったクセに、なんじゃこの可愛い生き物は!
「ハハ、レンちゃんがはしゃぐのも無理はないよ。
私達の住んでいる保全シェルターは山の中だし、海なんて滅多に来れないからね。」
「だから、こうして沖縄の海に来れてる間に、目一杯満喫しておくんだ!」
「なるほど、私とカイちゃんは海沿いの町に住んでるから、海と無縁の生活ってのはなかなか想像出来ないな。」
「ぬぅ、自慢か!」
「自慢じゃないって。」
などと戯れていたら、背後から急に何者かに抱き締められた!
いや、何者かと言う以前に、その肌の感触で誰か分かってしまう。
「カイちゃん、いきなり何すんの。」
「えへへ〜、おはようのハグー!」
頭の上にずっしりと重量を感じる。
ああ、こいつの巨乳が乗っかってるんだな。
「全く、朝っぱらからしょうもない脂肪の塊を人の頭に乗せやがって。
『海豚』って漢字の読みを、今から〝イルカ〟から〝やまぎしかいら〟に変更してやろうか?」
「あふぃぃん!朝の挨拶代わりの罵声、ご馳走様でーす!」
朝っぱらからゾクゾクして身悶えしているカイちゃんの水着は、シンプルな白いビキニだ。
これも確か、修学旅行の時に着てたやつだった記憶がある。
ツジとレンちゃんは、そんな私達のやり取りを、またいつものアレだ的な目で優しく見守ってくれている。
「はい、白狐ちゃん用の浮き輪も用意しといたよ。」
カイちゃんが、泳げない私に気を利かせて、浮き輪を持って来てくれていた。
「お、これよこれ。分かってるじゃん。」
ニッと上機嫌に笑ってみせたら、カイちゃんの顔が真っ赤に火照った。
フフン、そんなに私の笑顔は魅力的だったか!
「白狐ちゃんの笑顔、すっごく可愛かったよ!」
「………………分かってるじゃん。」
おや、カイちゃんの顔色が私にも移ったか?
ま、そういう事もたまにはあるだろう。
⚪︎2人に質問のコーナー
白狐ちゃんが好きな焼き肉の部位は?
「牛カルビ!一番ご飯が進むな!」
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