スペースシップ☆ユートピア

永遠の時を旅する2人の少女の愛の物語
千葉生まれのTさん
千葉生まれのTさん

24話・3年目・カレーうまうま♪

公開日時: 2021年6月5日(土) 20:41
文字数:3,020




「嬉しい!嬉しいなぁ!白狐ちゃん、ありがとうねぇ。」


カイちゃんは、感激のあまり涙を流して喜んでいる。

なんて喜びようだ。まるで死に別れたと思っていた家族が、生きていたのを知った時みたいなリアクションだ。

まだ玄関に上がった時点でここまで喜ぶだなんて、想像以上。

カレーの事を知ったら、下手すれば気絶するんじゃないか?


「まあまあ、この程度で喜んでたら、身が保たないぞ。

取り敢えず上がりなさい。パーティの準備は済ませてあるから。」


「パーティですとッ!?」


驚きに目を剥くカイちゃんを連れて、私は来客室へとカイちゃんを連れて行った。











◆◆



「おお〜!!凄い凄い凄いよぉ〜!!」


家族から許可を貰って、来客室は今日一日パーティの為に貸し切り状態だ。

数日前から仕込んでおいた飾り付けが部屋を彩り、天井からは『カイちゃん誕生日おめでとう!』と書かれた横断幕が吊り下げられている。


「どうだ!私の渾身のサプライズパーティは!

そしてあれこそが、私からの誕生日プレゼント!」


私が指差す先には、部屋の中央に位置するテーブルの上に置かれた、カレーの入った大鍋!


「…す、凄く良い匂い!」


目を見開きながら、一歩、また一歩と、カイちゃんはゆっくりカレー鍋の元へと歩いていく。




「…も、もしかしてこのカレー、白狐ちゃんの手作り、とか?」


「うん、よく分かったね?」


「だって、白狐ちゃんのニホヒがするもん!」


「キッモいなぁオイ!」


「あひんッ!」


気分が良かったので、笑顔のまま頭を引っ叩いておいた。




「さあ、取り敢えずお食べ。早くしないと冷めちゃうから。」


「うんッ!」


待ちきれないとばかりに、カイちゃんはカレー鍋へと突撃する。

その勢いたるや、まるで血の匂いを嗅いで獲物に飛び付く、人食い鮫の如し!

お皿にご飯とカレーを盛って、がっつくように食べている。



「うッ!うまうま〜♪」


今まで見てきたカイちゃんの食事顔で、一番幸せそうな顔が見れた。


「よしよし、頑張って作った甲斐があったってもんだ。」


「うまうま♪白狐ちゃんの味うまうま♪白狐ちゃんうまうま♪」


「うんうん、なんかキモいけどまあ許そう。」


「幸せ〜♪」


天にも昇りそうなほど、極上の笑顔を見せながら、物凄い勢いでカイちゃんはカレーを食べていく。

作り過ぎたかと思ったけど、全然そんな事はなかったみたいだ。

むしろ、足りないくらいか?




「白狐ちゃん白狐ちゃん!」


「ん?なあに?」


「あーんして、あーん!」


「はあ?」


カイちゃんがスプーンを私に手渡して、あーんを要求してくる。

いやいや、なんじゃそれ。


「お願い白狐ちゃん、そんな嫌な顔しないで。今日はアタシの誕生日だから!」


「ぐぬぬぬ…!」


あーんとか!


いや、あーんとか!

そんなん勿論やった事ないし、死ぬほど恥ずかし過ぎる!


「いやさ、そもそも友達同士でやる事じゃないだろ!」


「いいじゃん、女の子同士なんだから!これも誕プレの一環という事で、一つ!お願いします!」


なんか、両手を合わせて本気の頼み方をされた。

あーもう、ここまでされたら断れないじゃんかよぉ。


「…ったく、仕方ない奴だなぁ。」


私が渋々了承してやると、カイちゃんがまた嬉しそうにしている。

ま、今日はこの子が主役なんだし、少しくらいは我が儘を聞いてやるとするかい。

カイちゃんは、早く早くとウキウキ気分でスタンバッている。





「……ほら、あーん。」


お皿に盛られたカレーをスプーンで一掬いし、カイちゃんの口元に近付ける。


「ウフフ、あーん。」


パクッと、私が差し出したカレーを一口で頬張り、満足そうに食している。

存分に味わう為だろうか、クッチャクチャと通常よりも丁寧に咀嚼しているのが、なんか不快で気持ち悪い。


「キモい食い方するな!」


「あひィ!キモくてごめんなさぁい!」


「よーく味わってるのは分かる。けどキモい。」


「う、ウヒヒヒ、そうです、アタシがキモいJKです!」


「気持ち良くなるな!」


「だってぇ、白狐ちゃんにあーんして貰えるなんて、夢みたいだからぁ!」


「はいはい、分かった分かった。分かったから、一旦冷静になれ。深呼吸深呼吸。」


「スーハー、スーハー。」


キモさが暴走気味なカイちゃんを落ち着かせる為、3回ほど深呼吸をさせる。





「落ち着いた?」


「でへへェ!」


「ダメだこりゃ。」


もういいや、とことんキモくなれ。


「嬉しいなぁ、嬉しいなぁ!」


「アハハ…」


ま、幸せそうだからいっか。

カイちゃんの笑顔が見れれば、私も嬉しいしな。










◆◆



「ごちそうさまぁ!」


あれだけあった大鍋の中身が、欠片も残さず綺麗にすっからかんだ。

カイちゃんが私の手作りカレーを完食するのに掛かった時間、たった20分。

そう、20人分のカレーを完食するのに掛かった時間が、20分!


どんどん化け物っぷりを露わにしていってるな、コイツ。


「美味しかったぁ!アタシの今までの人生で食べてきた全ての食べ物の中で、一番美味しかったよぉ!」


「いやいや、それは言い過ぎでしょうが!今日初めて料理作った人間だぞ、私は!」


「ううん!本当に美味しかったよ!お世辞とかじゃなくって!

白狐ちゃんの込めた愛情と、手間と、その他色んなものが煮詰まったエキスが染み渡ってて、最高の味わいが楽しめました!」


「何そのキモいエキス、私知らない。」


度重なるカイちゃんのキモい言動に、流石に身震いしてくる。



「それにしても、カイちゃんの食べる速度があまりにも早かった所為で、だいぶ時間が余っちゃったんだよなぁ。どうしよっか?」


「じゃあ、ゲームでもする?」


「よしきた!」












◆◆



「カイちゃんカイちゃん。」


「ん?どうしたの?」


私の部屋でのんびりとゲームしながら、カイちゃんに聞く。


「なんか、折角の誕生日なのに、いつもと変わらずにゲームしちゃってるけど、これでいいの?」


「いいのいいの。こうやって白狐ちゃんと一緒にいられるのが、アタシにとって一番の幸せなんだから。」



「……えッ!?…………うん。」




…んん?なんだ、この気持ちは?

いつも同じような事言われてるのに、なんかこう、胸が熱を帯びているかのような、不思議な感覚を覚えてしまう。

こんなの、初めての感覚だぞ。

私は、どうかしてしまったのか?



「白狐ちゃん、どうしたの?体調悪いの?」


「あ、いや!そんなんじゃないから!なんの問題も無いから、ゲームやろゲーム!」


「え?うん、それなら良いんだけど。」


体の火照りはなかなか収まってくれない。

ゲームにもロクに集中出来ず、いつもよりも更に酷い状態で、カイちゃんに惨敗した。











◆◆



「今日はありがとうね、白狐ちゃん。本当に嬉しかった。」


「なあに、いいってことよ。私もそれなりに楽しかったし。」


それなりというか、滅茶苦茶楽しかった。

改めて、サプライズパーティを企画して良かったとマジで思えた。


「フフ、白狐ちゃんの誕生日ももうすぐだし、今度はアタシがサプライズするね!」


「あー、うん、楽しみにしてるよ。

…って、なんで私の誕生日知ってるの?多分今まで教えてないよね?」


「さっき、白狐ちゃんの部屋でちょこっと調べたから♪」


「えッ!?調べたって……?怖ッ!そういうストーカーみたいなのやめろ!」


「2月29日だもんね?白狐ちゃんの誕生日。」


「うう…、知られてしまったのならば仕方がない。せいぜい、盛大に祝ってくれよな。」


「オッケー、楽しみにしててね!」


「ん、期待してる。」


とは言ったものの、若干不安な気持ちもある。

あれだけ私に夢中なカイちゃんが私の誕生日パーティを企画したら、一体どんなものになってしまうのやら。



⚪︎2人に質問のコーナー


カイちゃんの好きな天体は?


「うーん、月かな。白狐ちゃんにね、『月が綺麗ですね。』って言いたいんだよねぇ。」

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