「んんッ!?」
ある日の朝、私はとんでもない物を発見した。
場所は、私とカイちゃんの住んでる自宅アパート。
その、宅配ボックスの中だ。
何やら本みたいなのが届いてると思って開封してみたら、中身は雑誌くらいのサイズの本で、驚くべき事に表紙にはカイちゃんが写っていた。
……水着姿で。
「……うっわ。」
玄関先でそれを発見してしまい、ついつい見入ってしまった。
めっちゃ笑顔のカイちゃんが、爽やかな水色のビキニを着て、向日葵畑の中ホース片手に水を撒いている。
その水飛沫とのコントラストが絶妙にカイちゃんの可愛さを引き立てていて、このカメラマンさんは相当な腕の持ち主なんだなと感じさせてくれた。
しかも、本の表紙には『山岸海良、真夏の1ページ〜山岸海良グラビア写真集〜』と書かれている。
つまり、そういう事だ。
「…か、カイちゃんのグラビア…。」
ゴクリと唾を飲む音が、静かな玄関に響いた。
キョロキョロと辺りを見回す。
カイちゃんは今日は仕事はお休みで、まだ寝ている筈。
しかし、グラビア進出だなんて話、聞いてないぞ。
家の中なら何の抵抗も無いけど、不特定多数の大衆に向けて自分の(ほぼ)裸体を晒すなんて感覚、私にはまるで分からんぞ!けしからん!
けしからんから、私がチェックしておくしかないなぁ!うん!
「ぬふふふ…おっとはしたない。」
私の心の中に眠る正義感が勢いつき過ぎて、ついついスケべな悪代官みたいな笑い声を出してしまった。
しかし、カイちゃんはまだ寝てて他には誰も居ないというのに、こういう本を読むのは妙に緊張するな。
これが、道端でエロ本を見つけた男子中学生の気持ちというやつか。
「よし、まずは1ページ目。」
ペラリと表紙を捲ると、今度は表紙と同じ水着を着たカイちゃんが、前屈みになって胸を強調する格好をしていた。
俗に言う、だっちゅーのポーズってやつだ。
「うわぁ、マジか。うわうわうっわ、スゴいエロいポーズ。
堪らんなぁ、オイ。良い身体してんじゃないのぉ。」
ページを開く度に、あんな姿やこんな姿のカイちゃんが次々に飛び出してくる。
カイちゃんの裸や下着姿、水着姿は今までリアルで何度も見てるけど、こういう〝本〟という媒体で改まって見てみると、なんかこう、新しい劣情のようなものを感じてしまう。
私は、変態なのか?
「いや違う!私は正常だ!
セクシーなものをそういう目線で見るのは至って健全!何の問題も無し!」
そう自分に言い聞かせて、どんどんページを捲るのに夢中になっていた、その時だった。
「白狐ちゃん、おはよう!」
「んぐおぎィッ!?」
ご本人登場。
夢中になって読み耽ってた私の背後から、急に声を掛けてきた。
しまった、読むのに集中し過ぎて、カイちゃんが起きたのに気付けなかった。
「あれ、白狐ちゃんどうしたのこんな所で?」
「……ぁ、ぃゃ……」
「……?ん?その手に持ってるのって………あッ!」
しまったその2!
カイちゃんの写真集を隠し損ねて、本人に見られてしまった!
死ぬほど微妙な空気!
「…えっとですね、これは…」
「アタシの写真集!出来たんだー!」
カイちゃんは心底嬉しそうに、私の手からひったくった写真集を眺めている。
「白狐ちゃん、見た?」
「……見ました。」
「どうだった?」
「めっちゃエロ……ゲフンゲフン、可愛かった。」
「でしょー!でも白狐ちゃんの方が断然可愛いから、安心してね。」
うるせーボケ。その本見たら皮肉にしか聞こえないんじゃコラ。
「にしても、カイちゃん。一体いつの間にグラビア始めたの?」
「ん〜、前にテレビ番組の関係者で打ち上げに行った時、プロデューサーさんの知り合いにグラビア撮影を生業にしてるカメラマンさんがいるって話を聞いてね。
そのツテで紹介して貰って、すぐに撮影会して貰ったの。」
紹介されてから即撮影会って、そのカメラマンとやらに相当気に入られたのかな?
「って事はもしかして、カイちゃんから撮ってくれって頼んだの?」
「うん、そうだよ。アタシ、前からこういう写真集的なの、作ってみたかったんだよねぇ。」
「あー、そうだったの。」
カイちゃんには悪いけど、私にはよく分からない夢だ。
まあ、コイツは自分が美人だって自覚してるしな。
「それに、カメラマンさんから言われちゃったもん。
『一番若さに溢れてる今この瞬間を写真に収めとかないと、後で後悔するかもしれないよ。』って。」
「お前、永遠に若いだろ。」
「……あ、そうだった。」
つまり、カメラマンの口車に上手く乗せられたってのもある訳だ。
「で、この写真集、売るの?」
「イエス、売ります!とは言っても、まずは一部の店舗で販売してみて、売れ行きを見てから規模を拡大したり、増刷したり、続編を作ってくかもだって。」
「…まあ、カイちゃんは元からそこそこの有名人だし、こんだけ可愛けりゃ売れるんじゃないの?」
「ウヘヘへぇ、白狐ちゃんにそう言って貰えるなんて、嬉しいなぁ。」
「あーもう、ちょっと褒めただけで抱きつくな!鬱陶しい!」
ドカンと一発、顎にカウンターのアッパーをお見舞いしてやった。
「手厳しい!でもそこが良いッ!」
床に倒れ伏しながらも、ヘラヘラと笑い続けているカイちゃん。
そんなに私に褒められたのが嬉しかったか。
「そうだ!白狐ちゃんがお望みとあらば、白狐ちゃんの為だけに撮影会してあげてもいいよ。」
「えッ!マジでッ!?」
あ、やべ、つい本音が。
「フッフッフ、予想以上に食いついてくれたね、白狐ちゃん。
どうせなら、撮影スタジオでもレンタルして、ちょっぴり本格的な撮影会しちゃおっか。」
「…おおう、なんか面白そう。
撮影スタジオって、そんな簡単にレンタル出来るの?」
「出来るよー。主にコスプレ用に、色んなシチュエーションのスタジオがあるんだ。」
「へぇ〜、ちょっと気になるな。カイちゃんに色んな衣装着せてみたい感。」
「いいね!もうそれだとグラビアってより、コスプレ撮影会だね。
いっその事、衣装も沢山レンタルしちゃおっか!」
「しちゃおうしちゃおう!今日は一日、カイちゃん撮影会だ!」
「イエーイ!」
こうして私達は、意気揚々と家を出て、コスプレ撮影会をしに行った。
しかし、この時の私はまだ想像もしてなかった!
このカイちゃんを着せ替え人形にして楽しもうと思ってたコスプレ撮影会が、あんな恐ろしいイベントになってしまうとは…!
なんかこの感じ、前にもあったような…。
◆◆
「おおー!」
私は、非常に感心していた。
古びた廃工場のど真ん中で、美人秘書っぽいスーツ姿のカイちゃんが、クールな立ち姿で眼鏡をクイっと上げている。
で、私はそれを撮影してる。
正確には、廃工場を再現したスタジオで、秘書のコスプレをしたカイちゃんなんだけど。
「コンセプトとしては、『悪徳企業の美人秘書、社長の闇取引の最中に社長を裏切り暗殺!その後本性を現して社長の座を乗っ取り、会社を掌握する悪女秘書』ってとこで!」
「めっちゃ悪い人だねアタシっ!?」
「妙に本格派なのが私の自慢さ。」
などと戯れながらも、私はひたすらシャッターを切る。
カイちゃんも、見事な演技力でポーズを決めてくれる。
充分に撮れ高を上げてから、次の現場へ向かう事にした。
◆◆
「ここは…」
今度は廃工場とは打って変わって、白とピンクが目立つフワフワファンシーな女の子の部屋のスタジオだ。
やたらと可愛らしい感じのドレッサー、椅子、ベッドなどが置かれていて、私みたいな人種には絶妙に居心地が悪い。
ちなみにこのスタジオは、カイちゃんのリクエスト。
「カイちゃん、今度はどんな…」
「アタシじゃないよ、白狐ちゃん。」
「へ?」
カイちゃんが、満面の笑みでフリッフリのドレスを手に持ちながら、私を見ている。
「……え?ちょ、嫌な予感がするんですけど?」
⚪︎2人に質問のコーナー
白狐ちゃんの好きなピザは?
「シーフード!シーフードピッツァ最高!」
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