スペースシップ☆ユートピア

永遠の時を旅する2人の少女の愛の物語
千葉生まれのTさん
千葉生まれのTさん

185話・?年目・降り立つ5人

公開日時: 2023年5月15日(月) 20:18
文字数:3,048




宇宙の崩壊事件から、更に長い年月が経った。

リグリーの言った通り、新たに生まれた宇宙はビッグバン現象によって無限の拡大を始め、私達の町もいつの間にかその領域に入っていた。

何も無かった空には再び星々の明かりが灯り、懐かしの宇宙にいる感が感じられた。

最近は、ツジがオリジナルの星座を見つけたりもしている。






「ん?」


そんなある日、珍しくカイちゃんがいない朝の10時頃だったか。

私は自宅の屋上にあるテラスでビーチチェアとビーチパラソルを広げて、水色に白い水玉模様のビキニ姿になって寝そべっていた。


うん?何で水着になってんのかって?

まあ、今日は何となくそんな気分だっただけだよ。

天気も良いし、海に出没するセレブ女気分を味わいたかったのだ。

家のすぐそばが海だから、波の音も聞こえてくるしな。



「はぁ……たまにはこういうのも良いなぁ。」



一人きりで頭をカラにして、サングラスを付けながらひたすら日光を浴び続ける。

普段から家に篭ってばかりに、長年部屋の中で使い古された布団が、数ヶ月振りに日干しされる時の気持ちが分かる。

不変力で肌の状態を保っているから、日焼け対策もバッチリよ!

すぐ横の丸いミニテーブルに手を伸ばし、自作のトロピカルジュースをストローに口を付けて飲む。

うーん、贅沢な気分。


「ふぅ………最高だなこれ。

もうしばらくゆっくりして………ん?」


違和感に気付いたのは、トロピカルジュースを飲み干してから再度空を見上げた時だった。




「あれ?………何だありゃ?」


空に浮かぶ星々の中に、一つだけ異質な星が見える。

他の星はどれも目視でBB弾くらいのサイズで輝いているのに対して、おはじきサイズで水色と茶色っぽい色合いの星が見えるのだ。


「随分と大きいな……大きく見えるって事は、だいぶ近いって事だ!

よっしゃ!折角だし、着陸して久々に冒険と洒落込みますか!」











◆◆




探索しようと決めてからは、行動は早かった。

私はすぐさまカイちゃん、リグリーに新発見の星について話し、ツジとレンちゃんにも了解を取り、私達の町を着陸させることが正式に決まった。

新たな星に着陸する時は、こうして毎回全員の許諾を得ているのだ。

まあ、今まで否決された事は無いから、ほぼ形だけのものだけどな。

みんな刺激に飢えてるから、相当危険な星でもない限りは否定する理由が無いのだ。


兎も角、昔リグリーから譲り受けた重力制御装置を操作して、新発見の星に接近を試みた。






それからしばらくの日数が経ち。






「おおー!いよいよあの星が目の前に!」


「凄いねー!でっかい大陸があるねー!」


おはじきサイズだった例の星は、もう既に空の面積の大半を占めるほどに大きくなっている。

つまり、目と鼻の先まで近付いているのだ。

この距離ならば、星の様相がよく分かる。


地球のように青い海が広がっていて、その真ん中に巨大な大陸らしき陸地が存在している。

その大陸の大きさはハンパじゃないのが、一目見ただけですぐ分かる。

日本列島何個分……とかじゃない!

かつて地球に存在したどの大陸よりも、遥かに大きい!


「なんて大きさなんだよ。

でも、流石に海の方が面積は上か。」


「と言うか、これは本当に凄い事だよ。」


ツジが、まじまじと星を見つめながら言う。


「そりゃまあ、凄い星だけど?」


「あれだけ豊富に水と自然がある星なんて、滅多にお目に掛かれるものじゃない。

…いや、それこそ、今まで途方も無い年月を過ごしてきた私達でさえ、地球以外に目にしたことはなかったんじゃないかな?」


ツジの言葉を受けて、私は過去を振り返りながら考えてみる。





「……確かに、そうかもしれないな。」


そもそも、生物が生息している星に出会える事自体が非常に稀なのだ。

ましてや、ここまで緑と青に溢れる星が、この新たな宇宙に生まれ落ちていたとは、驚愕の一言だろう。


「そう、つまりこれは、大いなる宇宙が導いた、奇跡のような運命なのだ!

さあ早速、彼の星へと降り立ち、楽しい楽しい実地調査を開始するとしよう!」


張り切っているツジだけじゃなく、他の皆も見るからにワクワクしている。



え?私はどうかって?



そんなもんは言わずもがな。

こんなにもロマン溢れる星を見て、興奮しない方がおかしいってなもんよ!












◆◆




リグリーの操作する重力制御装置は、彼女の正確な操作によって、無事に巨大大陸の海岸から少し離れた海上へと、ゆっくり着水した。


「よしよし、流石はリグリー!

良い仕事するねぇ。」


着地または着水する際は、操作をうっかりミスってしまうと、変な風に傾いてしまったりして、調整するのに手間が掛かってしまうのだ。

実際、何億年も前に私が試しにやらせて貰った時には、変な丘陵に町の端っこを引っ掛けてしまい、町全体が斜めになってしまった事がある。


だからこそリグリーは、新しい星に降りる前に必ず、出来る限り着地しやすい土地を発見するのだ。

そして今回のように水場のある星なら、平らな場所を探す必要がないので比較的楽に降りられるものだ。

まあそれでも、私みたいな素人がやると、傾けて浸水でもさせてしまいそうだけど。


さて、着水成功から数分後、地元の漁港でカイちゃん、ツジ、レンちゃんと待っていたところ、操作していて遅れて来たリグリーと合流した。

制御装置を操作する場所はリグリーの住んでいるアパートの一室にあるのだ。


「さて、全員揃ったな!

それじゃあ、お待ちかねの冒険に行くとしますかッ!」


「おーッ!」


ここから漁船に乗り、大陸へと渡る。

一体どんなロマンが待ち受けているのか、楽しみでしょうがない。









「……しかしこの大陸、どこか見覚えがあるような……」



誰にも聞こえないくらいの声量で、ツジがそう呟いていた。













◆◆




乗り込んだ漁船を海外沿いの岩場まで移動させ、不変力を使って動きを完全に止める事で停泊させる。




「よっと!」


その漁船からまず私が飛び降り、他の皆も続けて降りて行く。

岩場にはいくつも水溜まりのような水場があり、生き物の影がちらほら見られる。

でも、確認しようと少し近づいただけで素早く逃げられてしまうので、どんな生物なのかよく分からない。


「くっそー、めっちゃ逃げ足早いなコイツら!」


「アタシは1匹捕まえたよー。」


カイちゃんが満面の笑みで手に持っているのは、ボウリングのボールくらいのサイズの謎の生き物。

大量の脚と硬そうな甲殻に覆われた、ダンゴムシめいた見た目の見慣れない輩だ。




「…え?何だそいつ?

ダイオウグソクムシ……とは違うよな?」


ダイオウグソクムシならその昔、水族館で見たことがある。

ぬいぐるみやフィギュアにもされてる、世界一人気のあったダンゴムシの仲間だ。

でも、目の前でカイちゃんに掴まれたまま大量の脚をわしゃわしゃさせてるコイツは、それとは明らかに違う。


もっとこう…原始的な雰囲気で、以前読んだ古代生物の図鑑に載ってた割と有名なやつだ。




「それもしかして、三葉虫じゃね!?」


「あ、やっぱりそう思う?」




あっけらかんとそう言ってのけるカイちゃん。

いや、何でそんなノリ軽いんだよ。


三葉虫なんて、とっくの昔に絶滅した地球の生き物だろ!




「……ふむ、これは実に興味深い。」


「ええ、同感です。」


真っ先に興味を示したのは、科学者気質のツジとリグリー。


あ、リグリーはガチの科学者だったわ。




「確かに、この生物はあの三葉虫に非常に酷似しているね。すると、古代の地球に似た収斂進化が展開されているのか?いや、そう決め付けるのは流石に早計か。まだデータ不足がうんぬんかんぬん……」




ブツブツと独り言に夢中になっているツジは………放っておくとしよう。




⚪︎2人に質問のコーナー


白狐が好きな虫は?


「んー、生き物全般幅広く好きだけど、虫だと蜘蛛辺りが特に好きかなー。

タランチュラとかかっけー!」

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