スペースシップ☆ユートピア

永遠の時を旅する2人の少女の愛の物語
千葉生まれのTさん
千葉生まれのTさん

80話・93年目・フード勉強会!?

公開日時: 2021年12月6日(月) 15:16
文字数:3,045



母校の見学は、想像以上に楽しかったし、とても良い刺激になった。

私はどちらかと言うと新しい物好きで、あまり昔の事には拘らないタイプなんだけど、たまにはああして過ぎ去った過去をゆっくりと回顧する時間も大事なんだなぁ、としみじみ思ったものだ。


ただその翌日、〝例の事〟を本当にやるハメになるとは思わなかった。



「おはよー白狐ちゃん!勉強会始めよっか!」


私が自室でいつも通りパンツ一丁のままゲームに興じていたら、突入して来たカイちゃんが開口一番そう言ってきた。


「…なんなのよいきなり?」


「昨日、約束したじゃん!今度勉強会しようって。」


「いや、早すぎない?

あの雰囲気だと、早くても一週間後くらいな空気だったじゃん。

それに私、やるとは言ってないぞ。

〝考えとく〟とは言ったけどさ。」


今、ゲームが面白いところだったし、正直この流れで勉強会はダルい。


「んもう、白狐ちゃんのいけずぅ。」


「うっさい、今は気分が乗らないの。

ゲームが良いところだから、終わったら相手してあげるよ。」


「はーい、それじゃあアタシは見てるー!」


「…そうか、私がゲームしてるところ見るの、好きなんだもんな。」


「ゲームに限らず、白狐ちゃんの事ならどんなシチュでも見てて飽きないよ。」


「そーですかい。

漫画とお菓子もあるから、自由にしてくつろいでてよ。」


「イエーイ!」


背後でニコニコ笑いながら、私のゲーム実況プレイを見物しているカイちゃんに構わず、取り敢えずキリの良いところまでゲームを進めた。







「んー、まあこんなもんか。」


30分ほど進めてから、私はちょうど良い場面でゲームをセーブしてから電源を切った。


「んで、カイちゃん。何を勉強すんの?」


ずっと私のゲーム見物に熱中して、後ろから応援してくれてたカイちゃん。

折角来てくれたのに待たせちゃって悪い気もするし、あまり気は進まないけど今度は彼女が主役の番だ。


「ムフフー、待ってましたよー!

実は、ジャジャンッ!テスト用紙を作って来ちゃいました!」


「おー!パチパチパチパチ。

ってか、いきなりテスト?」


ノリで拍手した私だけど、いきなりのテストの登場に疑問符を浮かべる。

勉強会なんだし、テキストを読んだり、問題集やドリルをやるんじゃないのか?


「そうです!いきなりテストなのです!」


「ふーん、まあいいや。

取り敢えず、どんなテストなのかめっちゃ気になる。」


カイちゃんの作ったテストって時点で、色々と気になるわな。


「それは実際に解いてみてからのお楽しみで!

はい、どうぞ!」


カイちゃんから、A4コピー用紙10枚で作られたテストを手渡された。

ちゃんとパソコンを使って一から作ったみたいで、問題数も結構多く、思ったよりしっかりした作りだ。

これを1日で作ったとは、こやつなかなかやりおる。


では、やってみるとしよう。






◯第一回山岸海良プレゼンツ白狐ちゃんへの愛のテスト




『問1、焼き鳥のハツとは、鶏のどの部位を指す言葉でしょう?』


「ん?なんだこの問題。」


いきなり焼き鳥って。

あ、テストのタイトルはスルーの方向で。


「いいから解いて解いて。」


「はいはい、えっと確か……」


ハツ、ハツ、ハツ……

確か、内臓系の部位だったよな?

あ、そうだ思い出した。


「心臓だよな心臓。」


解答欄に、心臓と記入する。

ついこないだカイちゃんと焼き肉食べに行ったばかりだし、これくらいは楽勝だ!


「ピンポン大正解〜!

あ、ちょっと待ってて。」


「なんだなんだ騒々しいなぁ。」


落ち着きの無いカイちゃんがドタバタと廊下へ出て、すぐに何かを持って帰って来る。


「はい、正解のご褒美!」


「え?どゆこと?」


カイちゃんが差し出してきたのは、串に刺さった焼き鳥。

それも、今正解したばかりのハツ。


「これぞ、山岸海良プレゼンツ!フード勉強会!

今回のテストは全部食べ物に関係する問題で構成されてて、問題に正解する度にその食べ物が食べれるという、非常に画期的なシステムになっております!」


「何その夢のようなテストっ!?」


私は焼き鳥を頬張りながら、最高のテストに心を躍らせた。



ん?

ってかこの焼き鳥、どっから持って来た?


「あのさぁ、カイちゃん。」


「ちなみに、食べ物はどっから出してるの?的な野暮な質問にはお答え出来ません!」


「…あ、はい。」


まあいいや、美味しいもの食べれるなら、細かい事は気にしないでおこう。


「それじゃあ、次の問題っと!」






『問2、次のうち、実在するフルーツはどれでしょう?』


A、ランマレーシア

B、ランブータン

C、ランネパール

D、ランミャンマー



「んんッ!?」


なんだこれ、普通に難しくない?

聞き慣れない名前のフルーツ出てきたぞ。


「これちょっと難しいな。」


「そこでお困りの白狐ちゃん!

今ならなんと、アタシの事を罵ってそのおみ足で踏み付けるか、もしくは『カイちゃん大好きー!』と叫ぶ事で、ヒントを出しちゃいます!」


「はあ?調子に乗るなよ。

私が困ってるんだから、ヒントくらいタダで出すのは当然だろ!この救いようの無い低脳メス豚が!」


そう言いながら、仰向けになったカイちゃんのお腹をグリグリと踏み付ける。


「あはァァァァァッッ!!

ひ、ヒントは〝幸せの国〟でしゅうゥゥゥ!

そして今アタシの脳内も幸せの国ぃぃ!」




……私は今、勉強会をしてるんだよな?


「まあいい、ヒントは手に入れた。

幸せの国ってのは、やっぱあの国だよな。」


私は解答欄に、Bのランブータンを記入する。

幸せの国と言えば、ブータン。

だからランブータン。



「…ぜぇ、はぁ、連続正解おめでとー!」


「やったぜ!」


っていうかこれ、テストというよりもはや、クイズ大会だな。


「はい、じゃあこれおめでとうの意味を込めた、インドネシア産のランブータン!」


「うおッ!?」


私はカイちゃんから、謎の物体Aを手渡された。

ゴルフボールくらいの大きさで、赤い球体に奇妙なウネウネした毛みたいなものが生えている。


「何これ、新種のアダルトグッズ?」


「そんな訳ないでしょッ!

ほら、皮剥いてあげるね。」


カイちゃんが果物ナイフを手に取り、サクサクと器用に皮を剥いてくれた。

中から、半透明で白い果実が出てくる。


「はいどうぞ。」


「おお、なんかライチみたい。」


取り敢えず一口食べてみる。


「うん!美味い!甘くて美味い!」


見た目はあんなモンスターみたいだったのに。

食べ物の味っていうのは、食べてみるまで分からないもんだな、うん。








『問3、去年、日本で最も寿司ネタに消費された魚介類はなんでしょう?』


「これは、農林水産省が去年1年間で調べたデータに基づく問題だよ。」


「うーん、ちょっとむずいな。」


寿司ネタ、かぁ。

鉄板人気といえば、やっぱりマグロかサーモンあたりかな?


「んじゃ、サーモンで!」


「ブブー、不正解!

正解は赤貝でした。」


「えッ!赤貝ッ!?

……あ、そうか!」


思い出した。

去年の初め頃、空前の大ヒットを記録したアニメがあって、その主人公の大好物が赤貝のお寿司なんだった。

その影響で、去年1年間は前代未聞の一大赤貝ブームが巻き起こった。

確かにあのコリコリした食感と味は私も好きだけど、それでもあのブームは凄かった。

今はだいぶ落ち着いたけど、ピーク時には全国の寿司屋で赤貝の供給が追いつかず、後に〝赤貝ショック〟と呼ばれる深刻な品薄状態が続いてしまった程だった。


「そうだったなー、去年は海産物業界において、かなり特殊な1年間だったらしいもんなぁ。」


いかんいかん。

長生き引きこもり生活をしていると、ついつい世の中の情勢に疎くなってしまいがちだな。

さてさて、気を取り直して残りの問題をガンガン解いていくぞ!



⚪︎2人に質問のコーナー


カイちゃんの血液型は?


「アタシはAB型だよ!」

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

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