特異点のガーディアン

~魔女と霊能者と超能力者が俺を守ってくれるらしいのだが~
雪ヶ咲
雪ヶ咲

夢と霊能者

公開日時: 2021年2月11日(木) 17:25
更新日時: 2021年2月11日(木) 17:26
文字数:1,847

前半は世界観の説明でシリアスっぽく?思えるかもしれませんが、コメディな内容にして笑えるように書いていくつもりです。

だって霊能者と魔女と超能力者がいてつまらない学園生活になるわけ無いですからね(笑)

幸くんのドタバタラブコメを是非ご覧あれ

『神代幸かみしろゆき。あなたは今宵、運命に遭遇することになる』

 薄っすらと浅い意識の中、夢の中の人物は確実にそう言った。

 浅い夢の中でもはっきりと伝わる強い口調で、話を続けたからだ。

『セカイは、あなたという器を壊せばセカイはリンクする。それは、私のセカイとあなたのセカイ、この2つのセカイがつながるということ』

 目の前の真っ白いセカイの中、白いワンピースを着た少女は最後にこう言い放った。


『だからあなたは、死になさい!!!』


 咆哮のような叫びを上げ、どこから取り出したのか大鎌を俺の心臓に向かって突き刺してきた。

 そのあまりの衝撃で、ガバッと体を起こす。

 わかってはいたことだが、夢の出来事だったようだ。


――20☓☓年4月1日 午前0時3分 天気は晴れ。

 春らしい少し肌寒いが澄んでいる清々しい空気を感じたくて、深夜にも関わらずベランダに出る。

 サラリと吹く夜風は、わけのわからない悪夢をまるで消化していくかのように心地よかった。

 この時間になるとすでに両親は寝床に入っており、家内は静かだ。

 二階のベランダからは、真正面に少しの街明かりと市営マンション。その上に輝く煌々と輝く星達が見えた。

 少し目線を落とし、目線の左側を見渡すと自身が来週から登校すること三年目になる『私立大禍原(おおまがはら)高等学校』の野球用の高いフェンスと少しばかりの校舎も視界に入った。

 一つため息をつき、今までの高校生活を振り返り今年度の抱負を考えた。

「最後の高校生活、このまま普通に過ごせればいいなって。」

 俺は指定校推薦とはいえ、大学受験も控えているため慌ただしくならないよう平穏に生きていきたい。そう思った。


――だがセカイには、いや宿命、運命とも呼べるものには非情にも逆らえなかった。


 ふと足元を見ると、手すりの隙間を通して玄関の前が見えた。

 するとそこには、月夜に当てられキラキラ光るラミネートされたカードのようなものが見えた。

 誰かの落とし物だろうか。もしクレジットカードとかだったら、警察に届けなければならない。

 そう思った俺は、玄関から外に出るのが面倒だったためベランダ用のスリッパを履き持ち前の運動神経の良さで手すりを使いうまく地面に降りる。

「これは……うちの学校の学生証か?」

『私立大禍原高等学校 2年4組 四之宮朱莉(しのみやあかり)』

 学生証にはそう書いてある。あれ、四之宮ってこれ確かうちの近くにある神社のアイツのやつじゃないか……

「幸君、久しぶり。こうやって面と向かって話すのは中学生の時以来だね」

 後ろを振り向くと、そこには夜空の星々と月明かりに煌々と反射する光沢を持った、日本刀の中腹が俺の顔の耳元と平行に指していた。

 その闇に紛れた日本刀の持ち主を確認すると……銀髪のポニーテールで巫女装束に身を包んだ四之宮朱莉、先ほど拾った学生証の持ち主だった

「や、やあ、朱莉久しぶりだな。どうしたんだよ、こんな夜中に。女の子がこんな時間に独り歩きだなんて良くないぞ? それに本物かそれ? は、早くしまえよそんなもん」

 まさか高校ではクラスが違ったためあまり話さなくなったが、中学生の時まではよく遊んでいた幼馴染がこんなところにいるとは思わなかった。

 しかも大振りな日本伝統の刃物を俺に向けている。夜に女の子に会うということ自体は、どきどき青春イベントの一つだと思っていたのだが、こんなシュチュエーションは夜這いだとしてもたちが悪いだろう。

「やっとこの時が来たんだから、そんなこといいっこなしだよ幸君。それに、後ろにいる<魔女>さん」

 朱莉は日本刀の高さはそのままで、俺の耳元に来ていた日本刀を俺の背後に向けた。

 つまり最初から、日本刀は俺に向けられていたのではなかったのだ。紛らわしくも俺の背後にいた、何者かを指していた。それを俺は誤解していただけだったのだ。

「あら、気づいていたんですネ。私気配を消すのは得意だったと思うんですケド……なんでわかったのかナ?」

 そこに立っていたのは電柱の影に隠れていた、小柄で金髪緑眼の美少女だった。

 彼女はどこの学校か判別できないが制服を着ており、その上に黒いローブをはおって、茶色のベレー帽をかぶり闇に身を溶かしていた。

「そんなの、当たり前じゃないですか。私の使役している虚ろなモノたち、特に妖怪なんて数え切れませんから。そのモノたちの力をかりただけ」

「ふふっ、妖怪デスか……今どきはやりませんヨ」

「魔女がよくいうわよ。錬金術も魔法も日本じゃとっくに誰も信じていないわ。幸君、私の後ろに下がってて……幸君は私が守るから」

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