「この人殺しーっ ! 地獄に落ちろーー」
地面で眠る男の体を少年はナイフで何度も突き刺し、返り血を浴びていた。縄で拘束せず、彼はそのまま攻撃しているんだな。
この調子なら、スマイル団が勝つのではないか ?
作戦は順調に進んでいるかと思えたが、そうでもなかった。
「えっ ? ノ、ノコギリ ? ……わあっ、死ねっ !」
「もう、こんなに可愛い愛羅ちゃんを傷つけようとするなんて、信じられないよ。愛羅ちゃんアターック !」
粉をふりかけようとした少年が、愛羅にノコギリで頭を突き刺されてしまう。地面へ転がり生き絶えた少年に、愛羅はどこか悲しそうな眼差しを向けていた。
粉をかけるタイミングが遅かったり、怯んで動きが鈍くなってしまうと、彼らにあっさり殺されてしまう。
彼らを眠らせ、無事に殺す事が出来ない人の方が多く、かなりのスマイル団が犠牲になっていく。彼らは皆、イナズマ組の胃袋の中へ入るのだろうな。
僕には、彼らの血祭りをひっそりと眺める事しか出来ない。手元にある研ぎ澄まされたナイフも、七色に輝く魔法の粉も、僕が所持していては意味がない。
「おい、この悪党 ! 悪は正義であるこの俺が、美しく成敗してくれるわ」
厨二病みたいな発言をして、麗崇は陽翔の前に立ち、彼の道を塞いだ。
「兄ちゃんよー。一体、何のつもりだー ? どうやら、ぶっ殺されてーみたいだなー。あーん ?」
「ふんっ……正義は勝つっ !」
麗崇は細長い足を振り上げ、陽翔の腹に蹴りを入れた。突き飛ばされる陽翔を見て、麗崇は悪い笑みを浮かべる。
「ハハッ、何だ ? イナズマ組も大した事はないなー」
「ガッ、このクソガキ ! 俺様を、汚い足で蹴りやがったなー ? 死んで償えやー」
陽翔はよろよろと立ち上がり、麗崇の元へ走って行く。そして、ポケットから黒い何かを取り出し、それを麗崇へ投げつけた。
「ぐっ、ああっ……頭が割れそうだ」
「ハーッハハハハハハー。さっきの勢いは、どうしたんだよー。ほらほら、立てや ! もう一回、威勢よくかかって来いやー」
麗崇は頭を抱え込み、地面へ蹲る。彼の足元に、血の染みたハンマーが転がっていた。これを、麗崇は頭部へぶつけられたのだろう。
楽しそうに、麗崇を嘲笑う陽翔の表情は、狂気に満ちていた。再びハンマーを手にし、彼は麗崇へ襲いかかる。
力は、麗崇の方があるだろう。だけど、陽翔はそれを卑怯な手を使い、補っているんだ。
「痛いだろ ? 苦しいだろ ? 俺様が、とっとと楽にしてやるよー。感謝しろやー」
陽翔は麗崇の体に、何度もハンマーを叩きつける。
「ぐあっ、お、お前は……こんな勝ち方をして、う、嬉しいのか ?」
麗崇の言葉に、陽翔は手を止める。
「あーん ? ……それはよー、俺達の台詞だなー。人様の縄張りを、好き勝手に荒らしやがってー。圧倒的な力の差を感じたんだろうが、これは卑怯でしかねーぜー」
「お前……そんな事がよく言えたな。俺の友人が、レッドアイに殺された。幼い頃から、苦難を共に乗り越えてきた、俺の大切な存在だったんだぞ。一体、あいつがお前達に何をしたっていうんだ ? お前の仲間の犯罪者が、二人の中学生の幸せを一瞬で奪った。それが、どう言う事か分かるか ?」
麗崇は声を荒げ、陽翔の胸ぐらを掴む。こんな、怒りを全開にしている彼は見た事がない。相当、イナズマ組を恨んでいる様だ。
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