「フッハッハハハー。あれあれー ? 僕のおもちゃは一体、どこへ行ったのかなー」
謎の何かは、狂った様に不気味な笑い声を上げ、ゆっくりと少年の方へ近づいて行く。
少年の荒々しい呼吸や、激しい手ブレがリアルで、余計に恐怖を煽る。迫り来る何かに命を狙われ、彼は隠れているのだろう。これはかなり、命懸けの撮影だ。
動画はそこで終了し、女性キャスターが口を開いた。
「この動画を撮影した少年に、一体何があったのかを伺いました」
寝室のベッドに横たわる、身体中を包帯で巻かれた少年の姿がテレビに映る。その少年は、なんと勢太だった。
ついに、勢太に呪いが発動したのだろう。僕はその惨めな彼の姿に、ひっそりと笑みをこぼした。
よし、まずは一人目だ。
「酷い怪我ですが、動画に映っていた謎の何かにやられたのですか ?」
「はい、僕はレッドアイに殺されかけました。あいつは僕を襲う前に、人の目玉を投げて遊んでいました」
「レッドアイとは、動画で捉えた謎の何かの事ですか ?」
「そうです。とにかく目が赤々としていたので、僕は勝手にそう呼んでいます」
勢太は気力のない声で、インタビューに答えていく。彼のそんな様を見ていると、気づけば塾へ行く時間になっていた。
「被害者の少年が、あの謎の生物をレッドアイと呼んでいたので、これからその名前で呼ばれていくそうです。今までの多数の失踪事件も、レッドアイと何か関係がある可能性が高いとして、警察が慎重に調査を進めております」
最後にちらりとニュースを見て、僕はリビングから出た。そして、肌寒いので、僕は首にマフラーを巻く。
「行ってらっしゃーい。気をつけてね」
「行ってきまーす」
僕はママに軽く手を振り返し、塾のリュックを背負って、自転車にまたがった。
オレンジがかった綺麗な空の下を、十分くらい走行する。
すると、古びた紺色の小さな建物が見えてきた。
実は、塾へ入れられたのはかなり最近の事だ。来年から中学二年生になるというのに、冬休みをダラダラと過ごしすぎているから……という理由で、パパに無理矢理入れられたのだ。
もしかすると、僕をイナズマ組と関わらせない為でもあるかな。
あーあ、行きたくないな。
学校が休みでも、塾があったら同じじゃないか。そんな事を思いながら、自分の席に力無く腰を下ろす。
ここには、黒也や勢太の様に僕を虐める奴はいない。けれど、同じ学校の生徒がちらほら居る。
ガヤガヤと喧しい教室の中、僕は先生が来るまで、一人ポツンと座っていた。
はあ……早く帰りたい !
答えを丸写ししただけの宿題を先生に提出し、一時間半ボーッと問題集や黒板に目を向けていた。それで、やっと授業が終わった。
ほとんど、何も理解できなかったな。この時間は、無意味だと思う。
チャイムが鳴り止むなり、僕は直ぐに机の物を鞄にしまい込んだ。リュックを背負い、足早に教室から出て行く。
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