麗崇は地面へ激しく叩きつけられ、気絶してしまった様だ。陽翔に散々、ハンマーで攻撃されていたからかなり弱っていただろう。こうなるのも、無理はないな。
しかし、ロッキーは口から血を吐くと、よろよろと立ち上がった。そして、菊谷にこんな質問をする。
「おい、てめー、俺の事を覚えてやがるかー ?」
「お前は誰だ ? お前みたいな、野蛮な人間は知らない ! とても、不愉快だ」
「ちぇっ……大昔すぎて、覚えちゃいねーかよ。俺が野蛮ならなー、てめーはもっと酷い存在だ」
ロッキーは再び、菊谷へ殴りかかる。その拳は菊谷に届かず、彼は突き飛ばされた。
何度も崩れそうになりながら、ロッキーは立ち上がる。そして、再び菊谷へ襲いかかった。
「て、てめーを殺すのは……秀でも麗崇でもねー。絶対に、俺だーー」
「……それは違うな。お前が俺を殺すんじゃない。俺は死んでいった仲間の為に、お前らに拳を振るう。この組みのボスとして、俺がお前を殺すーーっ !」
菊谷は、ロッキーの頬に強烈なパンチを喰らわせる。
すると、ロッキーのサングラスが外れ、水たまりの中へ落ちた。
菊谷はロッキーの顔をじっくりと覗き込み、目を丸くさせる。
「そ、その目……。お前……もしかして、呂井煌斗か ?」
「違う……それは、昔の名前だ。今は、ロッキーだ」
ロッキーはサングラスについた汚れを、手で拭い取った。その直後、目を隠すかの様に素早くサングラスをはめる。
こちらからでは、ロッキーがサングラスを外した姿は見えなかったが……ロッキーは、目にコンプレックスでもあるのだろうか。
菊谷がロッキーの目を見て、彼の存在を思い出していた。……と言う事は、ロッキーの目にはかなりのインパクトがあるのだろう。
呂井煌斗とは、ロッキーの本名なのだろうか。
「煌斗……見た目が変わりすぎて、誰だか分からなかったぞ。あの頃は、すまなかったな。確かに、俺が悪かった。俺もまだ幼かったが、お前は俺の子供と同じくらいの年だったからな。……そうか、まだ俺を恨んでいたんだな」
「……てめー、何度も言わせんじゃねー。俺は、ロッキーだっつってんだろうが。……てめーはあの日、俺の幸せを完全に奪った。泣いて謝ったって、許すつもりは微塵もねーからなー」
ロッキーは、菊谷に拳を振り上げる。それを、菊谷は簡単に受け止め、口を開いた。
「分かる……それは、分かるぞ。だが、どうしてイナズマ組を狙うんだ ? 俺の仲間は、関係ないじゃないか」
「ふざけんなっ ! てめーなんかに、俺の気持ちが分かってたまるかってんだ。……イナズマ組を殺すのに、深い理由はねー。俺の所属するグループが、レッドアイを恨んでるからなー。奴のグルもまとめてぶっ殺すっつーから、俺も協力してやってるだけの話だ」
「俺も悪い事をしたからな……お前に命を狙われるのは、仕方がないと思ってる。だが、関係のない奴を殺すのは許せない。それが、俺の大切な仲間だから、余計になー」
菊谷はそう言って、ロッキーの腹に膝蹴りをした。
「ぐはっ、勘違いすんなよ ? 俺は、イナズマ組の事は嫌いだ。どうせ、てめーみたいなイカれた人間の集まりだろうからなー。こいつらをまとめてぶっ殺せば、てめーの大事なものも奪える。一石二鳥だ」
ロッキーはよろめきながら、菊谷に殴りかかる。
すると、菊谷はロッキーの腕を掴み、彼を勢いよく地面へ叩きつけた。
ロッキーは血まみれの状態で、水たまりに沈んでいる。このままでは、ロッキーは菊谷に殺されてしまうかもしれない。
それにしても、菊谷はロッキーからどんな幸せを奪い、酷く恨まれているのだろう。それを知る事が出来ると思ったのに、話が逸れてしまって謎のままだ。
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