やっと帰れる !
外へ出ると、辺りはだいぶ暗くなっていた。
僕はペダルを素早く回し、家へ急ぐ。あんな恐ろしいニュースを見たら、夜が怖くなるのも当然だろう。
「ギャーーーーーー ! だ、誰か……助けてくれーー。化物が出たーーーー !」
若い男性が悲鳴を上げ、こちらへ必死に走って来る。何事かと足を止めると、男性の背後に目を赤々とさせた人影を発見した。
う、嘘だろ ? レッドアイだっ ! まさか、ニュースを見たその日に遭遇するなんて……。どうしよう。このままでは、殺されるかも。
僕は電柱に隠れ、ガタガタ震えていた。自転車のライトが光っているので、僕はレッドアイに気づかれているはずだ。
もしかして、これは僕への呪いなのか ?
いつも、死ぬことばかり望んでいるのに、いざ命の危機に遭うと逃げたくなる。
「嫌だーー。死にたくねーーーー」
「フッハハハハ……安心しなよー。楽しく殺してあげるからさー」
泣き叫び、レッドアイから必死に逃げていた男性の声が、突然ピタリと止まった。
ドサッ……。
僕の足元に、ボールくらいの大きさの塊が転がってきた。自転車のライトに照らされたそれは、人間の生首だと分かる。
このニキビだらけの男性の顔を、僕はよく知っていた。
よし、やったぞ。呪いが成功したんだ。ハハッ……ざまあみろっ ! これは、僕を苦しめた罰だ。
今の僕は、恐怖よりも加藤先生を殺せた喜びの方が強かった。加藤先生の生首に嘲笑い、僕はその汚い面を踏みつける。
グチャグチャグチャ……。
レッドアイが加藤先生を解体している間に、逃げなくては……っ !
僕は自転車に乗って、全力で走り出す。幸いな事に、加藤先生の体内から臓器を抉り出す事に夢中になっていたレッドアイは追って来なかった。
よし、これで二人目だ。残るは佐鳥だけだ。アッハッハハハハハーー。覚悟しろよ。
僕の呪いからは、逃げられない !
冬休みも後、数日で終わってしまう。なんだか、悲しく寂しい気分だ。
はあ……またもう直ぐ、地獄の日々が始まるのか。それまでに、佐鳥が呪いによって死んでくれれば、最高なんだけどな。あのまま、勢太も助からなければ良かったのに。
僕は今、永戸と優とワンダの三人で隣町にあるファミレスに来ている。
僕のこの貴重な休みは、彼らと共に同じ時を過ごす事で、どんどん消えていくのだ。
「皆、何を食べるか決まったかー ?」
「俺、いらない。まずい、嫌だ」
優の問いに、ワンダはそう答える。永戸も、小さく頷いた。
「飛華流はまだか ?」
「ああ、すみません……。食べに行くとは知らなかったので、財布を持って来ていないんです」
「なーんだ。そんなの気にせず、遠慮なく好きなのを頼んで良いぞー」
優は笑顔で、メニュー表を僕に渡してくる。それってつまり、奢ってくれると言う事だろうか。
だけど、この人達ってちゃんとお金を持っているのかな ? まあ、食べる気満々だから、心配しなくても大丈夫だろう。
それじゃあ、何を食べようかな。ハンバーグステーキも食べたいけど、昼食にしては量が多すぎる。だから、ミニドリアにしよう。
メニュー表に記されたミニドリアを指差し、僕は言った。
「あ、ありがとうございます。……えっと、僕……これにします」
「よーし、分かった。……ワンダは本当に、何もいらないのか ? 好きなものを頼んで良いんだからな ?」
「変な味、嫌い……。いらない」
「……おう。後で食べたくなったら言えよ ?」
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