MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
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51

公開日時: 2021年9月22日(水) 06:54
文字数:1,449




 

「永戸はすげーな。一年間も、一人で生きてきたんだもんなー。俺だったら絶対、餓死してるなー」

「……それがどうした。お前だったらどうなっていただとかなんて、俺は興味がねー」

 木の上に一人で座っていた永戸を気にかけ、優が声をかけが、彼は足早に去ってしまった。まだ、俺達の事を警戒しているのだろう。

 こうして、永戸は最初のうち、俺達に心を開こうとはしなかった。いつも一人で孤立し、常に俺達と距離を取っていた。

 だが、俺達と同じ日々を過ごしていく中で、永戸は少しずつ、この空間に馴染んでいく。



 メンバーの多くと川へ入り、魚を捕まえて遊んでいた時も……。


「永戸ー、どっちが多く捕まえられるか、勝負しようぜー」

「……その勝負、受けてやるよ。俺がこの川の魚を全部、取ってやるし」

 永戸は優に、可愛らしい八重歯を見せて楽しそうに笑った。そして、水しぶきを浴びながら、二人で無邪気にはしゃいでいた。



 陽翔に絡まれていた時も……。


「おい、チビ……。そんなんじゃ、女にモテねーぞー。やっぱり、身長は百七十センチねーとなー」

「……は ? お前と俺は、二センチしか変わらねーし」

 くだらない発言をする陽翔に、永戸はそう言い返す。

「ちっちっち ! 永戸は、二センチの差がどれほど大きいのか、分かってねーなー。俺様は百七十センチ。てめーは、百六十八センチ……。パッと聞いたイメージだと、明らかに俺様の方が、かっけーだろうがー」

「……お前、馬鹿だな。見た目には、差なんてほとんど分からねーのに」

 永戸は陽翔に殴りかかる事もせず、呆れながらも彼の話に付き合っていた。

 

 そんな感じで、永戸は完全にイナズマ組に溶け込んでいった。

 ガリガリだった体も徐々に健康的になり、永戸は普通にスレンダーな体型になった。痩けていた頬も、少しふっくらと丸みを帯びてきたので、今では童顔な可愛らしい少年だ。



しかし、そんなある日、事件は起きてしまう。



 夕暮れの寒空の下、いつもの様に盗みを終え、蓮と何気ない会話をしながら帰っていた時だ。息を切らしながら、優がすごい勢いでやって来た。

「ハア、ハア……。二人とも、近くに居て良かったです……。あの、どうしましょう……永戸の奴が突然狂いだし、人を殺しちまいました」

「え、何だって ? 今直ぐ、永戸の元へ行かないとな」


 優に連れられ、俺達は細い田んぼ道で足を止めた。

 すると、そこには、目を赤々と光らせ、不気味な笑みを浮かべる悪魔の様な少年が居た。彼は楽しそうに、地に転がる死体から内臓を抉り出している。

 あれは、本当に永戸なのか ? この世の者とは思えない、恐ろしい姿をしている。俺の知っている永戸は、もっと幼稚で可愛らしい子供だぞ。


「え、永戸……一体、どうしてしまったんだ ?」

「ふっはは……君達も、僕のおもちゃになってよー」

 こちらに襲いかかってきた永戸を、俺はなんとか抑える。少しでも気を抜いたら、俺は血を流す事になるだろう。この時の永戸は、力がかなり上がっていたのだ。


「おい、菊谷……大丈夫か ? 俺も手伝うよ」

 俺が疲れてきた事に気づき、蓮も永戸を抑えるのに協力してくれた。


 かなりの時間、俺達の腕の中で暴れていた永戸は、ようやく大人しくなる。

「……は ? お前ら何してんだよ……離せって」

 そして、いつものあどけない表情をこちらに向け、永戸はそんな事を言う。

「……なあ、永戸。どうして、その人を殺してしまったんだ ?」

「……俺、何も覚えてねー。いつも気づけば、人が死んでる」

 俺の問いに、永戸は衝撃的な発言をした。この世の中で、そんな不可思議な事が起こるものだろうか。

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