MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
退会したユーザー ?
退会したユーザー

12

公開日時: 2021年9月7日(火) 06:47
文字数:1,549


永戸は一瞬で、百メートル近く離れた少年に追いつき、彼に飛び蹴りをした。蹴りをくらった少年は空高く舞い上がり、勢いよく地面へ叩きつけられる。


「お前の心臓、この手で握り潰してやるよ」

 グラウンドに倒れ込む少年を見下ろし、永戸は右手をかかげ、心臓を握り潰すジェスチャーをした。その言葉や動作には、深い恨みが込められている様に思えた。

 片目を茶髪で隠す、あどけない顔をした少年。これが、誰もが恐れる、三島永戸と言う人物なのか。

 少年は怯えながら、永戸にこう言う。

「えっと、さっきは酷い事を言って、ごめんなさい。あれ、冗談ですからね ? いやー、イナズマ組って、カッコいいですよね。俺、憧れます」

「ごちゃごちゃうっせーな」

 狼の様な鋭い瞳で少年を睨みつけ、永戸は彼を踏みつけた。

 すると、少年はビクとも動かなくなる。


「後一人……あいつはどこだ」

 永戸は辺りを見渡し、誰かを探し始める。


「……なあ、永戸は誰を探してんだよ」

「イナズマ組を馬鹿にした奴だろうな」

「何人かの生徒が、集団になって永戸に暴言を吐いたんだって」

「そうそう。それで、ホームレスって言ったりして、永戸を嘲笑ったらしいよ」

「えっ ? あいつって、ホームレスなの ?」

「……まあ、そんなもんだろ。イナズマ組は一宝町にある、あの大きな森の奥で暮らしているからな」

 生徒達のひそひそ話に、僕は耳を傾けていた。へー、そうなのか。


「それにしても、命知らずよね。あんな恐ろしい奴を刺激したら、こうなるって分からなかったのかしら」

「まあ、イナズマ組のメンバーに手を出したのは、いつもヤンキーぶってる奴等だからな。集団になれば、永戸一人くらいは楽勝だと思ったんじゃねーの。あいつらも、本物のヤンキーには勝てなかったって訳だ」


「なあ、あれ見ろよ ! ついに、先生の出番だぜ」

 筋肉質で大柄な教師三人が現れ、永戸に近づいて行く。三人の教師は皆、体育会系だったり、柔道部の顧問だったりと、力はかなりあるぞ。

 どっちが勝つのだろうと、僕は少しだけ興味が湧いた。バトルやアクション要素のあるアニメが、大好きだからな。


「おい、いい加減にしなさい」

「こんな事をして、許されると思うなよ」

「大人しく謝罪しなさい」

 そしてついに、三人の教師が永戸の前に立ちはだかった。

「ちっ、邪魔くせーな」

 永戸は舌打ちをし、堂々たる足取りで教師達に接近する。そして、ハイジャンプして、自身の頭を相手の頭に叩き込んだ。

「すげー……あいつ、ヘッドバッドした」

 そんな神業に目を輝かせる男達も、ちらほらいた。

 頭突きを食らった教師は、呆気なく倒れた。


「おい、お前……自分が何をしたのか分かっているか」

「次はお前だ」

 永戸は一人の教師に、目にも留まらぬ速さで急接近し、彼の腹部に数発蹴りを入れた。膝から崩れ落ちる巨漢を両手で持ち上げ、永戸は最後に残った教師にこう言った。

「これで、終わりだ」

「や、やめなさい !」

 後退りする教師に、永戸は巨大な男を投げつけた。数メートル飛ばされ、教師は一瞬で気絶する。どれも、人間業じゃなかったな。


「弱いくせに、偉そうに威張ってんじゃねーし」

 永戸はそう言って、再びある生徒を探し始めた。まさか、こんな簡単に済ませてしまうとは思わなかったな。やはり、三島永戸は化け物だ。


「……そこか」

 永戸は一本の木の前で足を止め、地に転がっていた小さな石を手に取った。そして、ピストルの様な速度で、それを木の上の方へ投げる。

「うあーーーーーーっ !」

 叫び声を上げ、木から人が落下してきた。彼は頭から血を流し、痛そうにもがいている。その様子を見ると、永戸は満足気な顔をした。


数分後、救急車とパトカーのサイレンが聞こえ始め、こちらに近づいて来る。

 だが、永戸は慌てる様子もなく、平然と去って行った。きっと彼は、こんな事慣れっこなのだろう。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート