MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり 【訂正前】

闇で歪んだ世界
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99

公開日時: 2021年10月19日(火) 18:02
文字数:1,603


  黒いスーツを着たラーメン女と学生服を着た筋肉男の後を追い、俺は芝生の庭へ出た。

「おい、待てよ。俺も行くからな」

「はいー ? 永戸は駄目よ。きっと、父さんだってあんたはお呼びじゃないわ。大人しく、家の掃除をしていなさい」

「はっ ? ふざけてんじゃねーし。俺は父さんの実の子だ。行くに決まってるだろ」

「ああ、煩いわねえ。あんた達、永戸が着いて来られないようにしといてちょうだい」

ラーメン女の言葉で、二人の筋肉男がこちらへ近づいてくる。こいつら、完全に狂ってやがる。俺を葬式にも出さないつもりか ?


「永戸君、そんなに父さんに会いたいなら、会わせてやるよー」

一人の筋肉男が、拳を振り上げて走ってくる。俺は奴の攻撃をかわし、素早くハイジャンプする。そして、筋肉男の頭に自分の頭を力強く叩き込んだ。

練習していたヘッドバットが上手くいった。頭の痛みより、快感が勝る。

頭から流れる血を抑え、筋肉男は怯えた表情をした。

「ぐあっ、お前……いつの間にそんな力を……」

「黙って死ね。お前の心臓、この手で握り潰してやるよ」

俺は筋肉男を睨みつけ、奴に殴りかかる。

すると、背後から何者かに背中を蹴られ、俺はその場に倒れた。しまった。もう一人の筋肉男を忘れていた。


「永戸君は、本当に駄目な子だなー。必要ない奴は、処分しないとなー。……俺達は父さんの実の子じゃないけど、お前よりも大切にされてたぜー」

「そうだぜ。だって、父さんは何しても許してくれたからな。……さて、お前は処分だ。こんな奴、捨てちまえ。よくも、俺を傷つけてくれたなー」

二人の筋肉男に引きづられ、俺は白いレンガの我が家から離されていく。こいつらは、俺をどこへ連れて行くつもりだろうか。


「や、やめろ離せ ! 俺は、父さんに最後の別れをするんだ」

「ヒェッハハハハハ。その必要はないぞー。直ぐに会わせてやるからなー」

俺は必死に暴れるが、筋肉男の手は力強く俺の足首を掴んでいる。砂利道でも段差があってもお構いなく、俺はズルズルと引きづられる。

体のあちこちから出血し、俺は道路を赤く染めていく。このまま、体がすり減って無くなりそうだ。


曇り空が俺と共に、ポツリポツリと涙を流す。小さな悲しみの粒は地面に叩きつけられ、次々に消えていく。


「よし、着いた。さあ、楽しく三途の川を渡りな」

「永戸、じゃあな。お前とは、これでお別れだ」

筋肉男達は大きな赤い橋の上で足を止め、俺を持ち上げた。俺は抵抗する間も無く、奴らに投げ飛ばされ、真っ逆さまに落ちていく。


ジャポーーーーンッ !


俺は激しく水しぶきを上げ、冷たい川に浸かった。底は深く、足はつきそうにない。波が何度も顔にかかり、息がしづらかった。

「た、助けてくれ。誰か……誰か」

溺れる俺を見て、筋肉男は楽しそうに笑っていた。そして、奴らはそのまま去ってしまう。

もがけばもがくほど、水中の奥深くへと沈んでいく。体はボロボロで、泳ぐ体力は残っていない。

このまま、俺は溺れ死んで水死体で発見されるのだろうか。なんだか、それでも良い気がしてきた。

死ねば、母さんと父さんに会える。その方が、ずっと幸せだろう。無理に生きても、苦しいだけだ。

俺は体の力を抜いて、そっと目を閉じた。水の流れに身を任せ、あらがうことをやめる。この息苦しさも、もう直ぐ終わる。やっと、楽になれるんだ。


俺が死んだら、菜月は悲しむだろうか。寂しくなるだろうか。俺の為に、あいつは真珠の様に綺麗な涙を流してくれるのかな。

菜月が俺を愛してくれていたのなら、それで十分幸せだ。今まで、誰にも必要とされてこなかったんだから。

本当は、ずっと側に居たかった。全ての事から、守ってやりたかった。でも、俺には菜月を幸せにする事は出来ない。人の愛し方も分からねーし、してやれる事も限られている。それに、菜月は俺なんかにはもったいないくらいに、素敵な人だ。

きっと、菜月には俺よりも良い奴が見つかるはずだ。菜月は、そいつに託そう。

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