ドンドンドンッ……ドンドンドンッ !
真誠と熱い戦いをしている最中、ベランダ側の窓を何者かに激しくノックされた。おい、嘘だろ……ここは、二階だぞ ?
僕は恐る恐る、ベランダへ目を向ける。そこにはなんと、永戸と優の姿があった。なんて迷惑な人達なのだろう。家にも来てほしくないのに、まさかこんな場所から現れるなんて……。
「飛華流ー、遊びに来たぜーー !」
優は大声を上げ、こちらに大きく手を振った。
僕が仕方なく窓を開けると、二人は少しも遠慮せず、ズカズカと部屋に上がり込んでくる。しかも、土足で。それに、優はタバコを吸っているから、部屋がタバコ臭くなっていく。
「すっげー。めっちゃ贅沢してるなー」
優は、楽しそうに部屋を見渡す。
フィギュアやポスター等の、アニメグッズに囲まれた生活をしているが、贅沢をしているつもりはない。
「うっわ……こいつらは、インターフォンも鳴らせねーのか」
不快そうにそう吐き捨てると、真誠は足早にこの場を去って行った。そんな真誠を目にし、優は申し訳なさそうに僕に説明する。
「あー、なんかごめんな。最初は、玄関から入るつもりだったけど、この部屋から飛華流が見えたからさ」
「ちっ、あのガキは誰だ……」
「……えっと、すみません。あいつは、僕の弟です」
永戸が真誠の態度に腹を立ててしまったので、僕は慌てて謝った。
「それじゃあ、この可愛い女の子は誰 ? もしかして、飛華流の彼女かー ? ヒューヒュー」
ニヤニヤしながら口を鳴らす優に、「口よりインターフォンを鳴らせっ !」って、言ってやりたかった。
「いえいえ、そんなんじゃないですよ。……こいつは、僕の……僕の妹です」
僕は咄嗟に、またそんな嘘をつく。
「……そんなんどうでも良い。今から、お前を菊谷に会わせる。後、そのゲームも持って来い」
そう言って、永戸はベランダへ歩いて行く。どうして僕が、イナズマ組のボスに会わなければいけないんだよ。それに、ゲームなんて持って行ったら、彼らに盗まれそうで怖いな。
「そのゲーム、俺達も持ってるから、アジトに着いたら通信しようぜ。ほら、早く行くぞー」
優に背中を押され、僕は無理矢理足を動かす。
「ワンダ……僕、行って来るね」
「俺、ヒルと行く」
ワンダに手首を捕まれ、僕は断りきれなかった。なので、二人の許可を得て、彼女も連れて行く事にした。
僕は優に背負われ、彼らと共にベランダから外へ出る。
綺麗な青空を見上げ、僕は眩い太陽に顔をしかめた。二人に乗せてもらうのを拒否し、ワンダは自力で屋根を走って行く。
「姉ちゃん、ワンダ……だっけ ? 落ちて怪我すると危ないし、あんまり無理するなよ ? 疲れたら、俺か永戸が背負ってやるからな」
「お前、キモい……。俺、できる」
ワンダは一体、何を考えてるんだ ! 今の発言は失礼すぎるだろ。優は、ワンダを気にして声をかけてくれたのに。そう思い、僕はワンダに注意してから直ぐに優に謝罪する。
「こらっ、ワンダ ! ……優さん、こいつが失礼な事を言ってしまって、すみません」
「気にすんな。それは、別に良いぜ。……あのさ、変な質問するけど、ワンダって……人間か ?」
「な、何を言ってるんですか ? 当たり前じゃないですか」
「……いやー、角と尻尾が生えてるから、違うんじゃねーかと思ってさ」
「あ、ああ、これは……本物じゃないですよ。えっと……これは、両方ともアクセサリーです」
優にヒヤヒヤする質問をされたが、僕は何とか誤魔化した。馬鹿なくせに変な所で頭が切れるのは、よしてくれよ。
「俺、人間だ」
本人もこうして、「人間」であると主張しているが、実際は定かでない。だって、ワンダは全てにおいて、普通ではないから……。
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