「永戸……でも、このままだとやばい事になるぜ。今までは運良く、お前が人を殺す姿を誰も見ていなかったはずだ。……でも、これからバレる可能性だって十分にある。この、おばさんの遺体をどうにかしねーと、人殺しで捕まるかも知れねーぞ」
俺は優のそんな言葉に、深く頷いた。確かに、このままでは永戸が危ない。
無意識の犯行だとしても、殺人は決して許される行為ではない。
だが、永戸は俺達の大切な仲間だ。大人しく、警察に永戸を突き出す事なんてできない。永戸を何とかして、守ってやろう。
「……分かった。俺に考えがある」
俺は永戸達にそう言って、死体を森まで運んだ。そして、死体を土に埋め、隠す事に成功する。それで、満足していた。
しかし、数日が経過したある日、アジトの付近から、何かが腐った様な、猛烈な異臭が漂っていた。その匂いの正体は、土に埋めて腐敗した死体だった。
こんな、森の奥深くまで警察がやって来るとは思わないが、最悪の場合を考えたとして……。このままでは、匂いで犯行がバレてしまうだろう。
土から死体を掘り出し、ゾンビの様に腐敗したそれをじっと眺め、俺は頭を悩ませる。死体には、ウジ虫が大量に湧いていた。この存在を、完全に無かった事にするには、どうしたら良いんだ ? この人には悪いが、これも大切なメンバーの為なんだ。俺は、ボスとしての務めを果たさなければ……。
「……腹減ったし、これ食うか」
こちらへとやって来た永戸が、いきなりゾンビ化した死体に噛り付いた。
「え、永戸……そんなものを食べたら駄目だぞ。お腹を壊すといけない」
「ゴホッ……いちいち、気にすんなよ。俺が悪かったし……責任を持って食う……ゲホッ」
永戸はむせながらも、手を止める事なく、死体を口へ運ぶ。彼なりに、罪悪感を感じているのだろう。
「……よし、それなら俺も食べるぞ」
俺も、永戸の罪を共に背負おうと、死体に口をつけた。味は、吐き出してしまいそうなほどまずい。腐っている。
だご、亡くなった奴への償いの気持ちとして、残さず食べなくてはーーーー。
「菊谷さーん、俺にも食わせて下さーい」
「何だー永戸……てめー、俺様を差し置いて、飯食ってんじゃーねーぞー。俺様も貰うからなー」
「菊谷……俺も、頂こうかな……」
優の後に続き、陽翔……そして、蓮と他のメンバー達も寄って来て、皆でおばさんの人肉に食らいついていた。
そして、ゴホゴホと皆でむせながら、何とか完食した。メンバーの中には、吐いてしまう奴もいたよ。
こうして、俺達は永戸が人を殺す度、証拠隠滅として人肉を食べる様になった。永戸が気狂った姿を目撃した人間を殺し、食料にした。
世間から永戸を守る為、我らイナズマ組は人食い族と化したのだ。
生の人肉は食べづらいので、最近では、全て粉々に砕き、スープ料理にしてから食べている。それが、意外と美味しかった。
秘密を知った者は誰であっても殺せと、俺はメンバー全員に指示を出したんだ。
イナズマ組はとても大きな秘密を抱え、毎日を生きている。
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