中学生になると、だいぶ力がついてきた。
殴りかかってきたラーメン女の腹に拳を入れると、こいつはその場に蹲った。ラーメン女の吐いた汚い血で、純白のカーペットが紅に染まっていく。それを見ていると、とても気分が良くなった。これが、暴力による快感なのか。
「永戸、母さんに何するんだ」
「ガキの分際で生意気だ。お兄ちゃんが、体罰を与えてやらないとなー」
二人の筋肉男が、いつもの様に俺を取り囲む。そして、俺は奴らにボコボコにされ、床に転がった。やはり、まだ筋肉男には敵わないか。
「許せない……許せないっ ! あんた達、永戸を動けない様に押さえなさい」
ラーメン女の言葉で、筋肉男が再びこちらに近づいてくる。この女、何を考えているんだ ?
俺は全身の痛みに耐えながら、床を這ってリビングルームを出ようとする。
しかし、こいつらからは逃げられなかった。二人の筋肉男に引っ張られ、俺は無理矢理に立たされる。体を押さえつけられ、身動きが取れない。
ラーメン女は鬼の様な形相で、こちらに近づいてきた。
「あんた、何が不満なの ? 私はちゃんと、あんたの様な存在価値のない子供でも、家に置いてあげているじゃない」
「黙れ。お前らは、俺の家族なんかじゃねー。目障りだから出てけ」
「口を慎みなさい。あんたなんて、その気になればいつでも殺せるのよ。あんたはね、私に大人しく従っていればいいの。そんな所で手を合わせてる暇があるなら、早く皿洗いをしてちょうだい。本当に使えない子ねー」
ラーメン女はそう言いながら、俺の腹を蹴り続ける。内臓が潰れてしまいそうな痛みを感じ、俺の口から大量の血が出てくる。足元には、小さな血の池ができた。
「ぐはっ……う、うるせー。母さんに気持ちを伝えてから、するつもりだった。……ぐ、邪魔するな」
「あんな女に使う時間があるなら、もっと働きなさいよ。この役立たず。全く可愛げがないわ。私に暴力を振った事、深く後悔させてやるからねー」
俺への攻撃をやめ、ラーメン女は足早にキッチンへと歩いていく。その数秒後、大きなフライパンを手に、狂った笑みを浮かべてこちらに戻ってきた。
まさか、あれで俺を殴るつもりか ? それは、さすがにまずい。正気とは思えない。下手をすれば、俺はラーメン女に殺される。何とかして、この場から逃げねーと。
俺は必死に筋肉男から離れようとするが、こいつらの力が強すぎて体が全く動かない。そうしている間に、ラーメン女は俺の目の前まで来てしまった。
「永戸、覚悟なさいっ !」
俺の体に、ラーメン女は力強くフライパンを叩きつける。体が破壊されてしまいそうな凄まじい痛みに、俺は涙を流した。
ラーメン女は絶え間なく、血の滲んだフライパンで俺を痛め続ける。そんな様子を見て、筋肉男は楽しそうに笑っていた。
悔しさと苦しさで、頭がどうにかなりそうだ。血の混じった涙が、俺の頬を静かに撫でた。
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