「黙れ。二度と、笑えねーようにしてやる。…………ウッ、ウウウッ……」
俺はラーメン女に殴りかかろうとしたが、体に異変を感じ、足を止めた。
体の底から、猛烈な力がみなぎってくる。その力を上手く制御できず、俺は息苦しくてその場に蹲った。
我が身を滅ぼしかねない、果てしないエネルギーに耐えていると、脳内で誰かの声がした。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ……。
壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ壊せ……。
消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ消せ……。
その謎の男の声は、狂った様にそんな言葉を何度も繰り返す。それを聞いていると、視界が一気に暗くなり、俺は闇に包まれた。
ここは、どこだ ? 何も見えないし、聞こえない。人間は皆、俺の敵だ。殺しまくって、スッキリしたい。ここに居ると、そんな感情に襲われる。そして、意識が遠のいていった。
目を覚ますと、カーペットや家具に血が飛び散っていて、辺りは真っ赤に染まっていた。そこに、肉の塊が三つ転がっている。ラーメン女と筋肉男のものだ。
俺の手には、汚い血が染み付いていた。俺は我を失っている間に、こいつらを殺したんだ。……と言う事は、俺は立派な犯罪者なのか。
こいつらをこの手で消せた事は嬉しいが、人殺しになるのは抵抗がある。俺は、これからどうなるのだろう。
足元に転がるラーメン女の生首を、俺はぐちゃぐちゃになるまで踏み潰し、家を出た。
雪降る夜の町の中を、俺は凍えながら行くあてもなく彷徨った。中学一年生でホームレスになり、ただ一人で生きていく。
最初は、持ってきたお菓子やジュースで胃を満たしていたが、あっという間に全てなくなってしまった。
店で食料を盗むようになるが、泥棒として顔が知れてしまい、町に居づらくなる。結局、カラスとともにゴミ袋をあさったり、カエルやトカゲを捕まえて食べていた。それでは栄養が取れず、俺は日に日に痩せて行き、完全に衰弱した。
心無い人間に存在を馬鹿にされ、体の底から怒りが込み上げてくると、気づいた時には俺の前で人間が肉の塊になっている。
俺は殺人鬼だ。あいつらを殺した、あの日から……。
死ぬ寸前だった俺は、イナズマ組と言うヤンキー集団に助けられた。そいつらは、俺の事を仲間として受け入れてくれた。
森の奥深くに、ひっそりと建てられたツリーハウスは、とても居心地が良かった。イナズマ組は、俺を理解し、支えてくれる。世間から白い目で見られる、社会に適応できない者同士、協力して生きている。
母さん、見つけたよ。最高の居場所に、素敵な仲間を……。
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